未来の党に未来など無かったのは、結党時から国民がよーく知っていることだ。 分裂したところで、「やっぱりね」と思うだけで誰も驚きはしない。 何とかなると思っていたのは嘉田のオッカサンぐらいだろう。 「火中の栗を拾ったのか、拾わされたのか」、朝日12月28日の朝刊・天声人語がもとになった寓話を持ち出して今回のドタバタ茶番を上手く書いている。 さっそくクリップして紹介したい――
【天声人語】 「火中の栗を拾う」
「火中の栗を拾う」という例えには、身を捨てて難儀を背負うイメージがある。だが、元になる話はだいぶ違う。猫が猿におだてられて、炉で焼けている栗を四苦爪苦して拾わされる寓話だ。お人好しを戒めるお話にもなっている▼滋賀県知事にして日本未来の党を立ち上げた動即由紀子さんは、火中の栗を拾ったのか、拾わされたのか。掲げた「卒原発」の志に偽りはなかったのだろうが、見る側は興ざめを通り越して呆れる。小沢一郎氏らのグループが、もう袂を分かつのだという▼もともと不安視されていた。「小沢さんに口説かれた雇われ女将」。そんな陰口も聞こえ、党に合流した亀井静香氏など、選挙前に「ステキなおばさんのスカートの下にもぐり込む」と言っていた。その亀井氏も離党するそうだ▼嘉田さんは承知で清濁を併せ呑(の)んだのだろう。だが、あからさまな選挙互助会ぶりが透けて伸びを欠いた。とはいえ342万人が党名を書いたのだから、ひと月での仲間割れなど背信だ。小沢氏の責任も関われる▼阿部知子副代表が分裂を成田離婚に例えていた。恋愛を「美しい誤解」と言ったのは評論家の亀井勝一郎だった。結婚生活は「恋愛が美しき誤解であったということへの、惨憺(さんたん)たる理解」であると。やっぱりね、の声も聞こえてくる▼脱原発はとかく情緒的と蔑(さげす)まれがちだ。環境学者でもある嘉田さんに、情と理の整った主張を期待する人は少なくあるまい。倒れた党の切り株から、新しい芽は吹くだろうか。
(2012年12月28日 朝日新聞朝刊)
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【火中の栗を拾う】
☛ <意味> 火中の栗を拾うとは、自分の利益にはならないのに、そそのかされて他人のために危険をおかすことのたとえ。また、あえて困難なことに身を乗り出すことのたとえ。
☛ <語源> 十七世紀のフランスの詩人ラ・フォンテーヌが『イソップ物語』を基にした寓話で、ずるい猿におだてられた猫が、囲炉裏の中で焼けている栗を拾ったが、栗は猿に食べられてしまい、猫はやけどをしただけだったという話から生まれたフランスのことわざ。
☛ <英語では> Take the chestnuts out of the fire with the cat’s paw.(猫の足で火の中の栗を取り出せ)。Take the chestnuts out of the fire with the cat’s paw.(猫の足で火の中の栗を取り出せ)。
[出典] 故事ことわざ辞典 http://kotowaza-allguide.com/ka/katyuunokuriwohirou.html
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天声人語は「倒れた党の切り株から、新しい芽は吹くだろうか」で締めくくっているが、芽は吹かないだろう…みどりの党にも袖にされたし。 未来の党の分裂は各紙で報道されつくしたものだが、毎日jpのクローズアップ2012の記事がかなりいいと思う――
未来、党分裂 宙に浮いた卒原発 嘉田氏は「選挙用」|交付金「生活」独り占め (クローズアップ2012)
(毎日新聞 2012年12月29日 大阪朝刊)
16日の衆院選の際、小選挙区で約299万票、比例で約342万票を獲得した「日本未来の党」が、投開票日から10日あまりで分裂した。342万人が投票用紙に記入した「未来」の党名も「生活の党」に変更され、国政政党としては消滅。小沢一郎氏が嘉田由紀子滋賀県知事を選挙用の看板として担ぎ出したあげく、選挙が終わるやいなや追い出した。嘉田氏が掲げた「卒原発」に寄せられた民意は宙に浮き、国民の政党政治への不信感を一層深めそうだ。
「嘉田代表には身軽になっていただいて、ただ大切な名前をどうしてもということだったので、それはどうぞ」。生活の森ゆうこ代表は28日の記者会見で、党の名称だけを嘉田氏に譲ったと強調した。「未来」は有権者に書いてもらった大事な名称だが、生活側にとっては嘉田氏とともに、もう用済みだった。
衆院選での未来の公認候補121人の約6割が生活系で「未来は生活の隠れみの」との指摘は当初からつきまとった。世論の批判が強い小沢氏の代わりに女性で自治体首長という嘉田氏の「清新さ」を利用したのが実態だ。
だが、未来は衆院選で惨敗。小沢氏は参院選に向け、民主党との連携を探り始めた。生活系議員は首相指名選挙で森氏に投票したが、参院の決選投票では民主党の海江田万里代表に投票した。未来の独自性にこだわる嘉田氏はこの戦略の障害になる。このため、代表の人事提案を拒否する「クーデター」で嘉田氏を追い込み、排除した。
28日の共同声明は「総選挙を戦った未来がなくなることは決してない」と円満な「分党」だと主張。小沢氏も記者会見で「同じ方向を目指して今後も頑張っていくことに変わりはない」と語った。しかし、分裂の経緯を問われると「横の話はまたの機会にしてほしい」と不快感をあらわにした。分党の発案者についても嘉田氏は小沢氏側としていたが、森氏は28日の会見で嘉田氏側と主張。嘉田氏は「せんさくしないことにしたい」と述べ、亀裂は隠せなかった。
「小沢さんを使いこなす」と豪語しながら失敗した嘉田氏の責任も重い。嘉田氏は27日に「少し休んで戦略を練り直す」と語ったが、分裂の結果「卒原発」を掲げた嘉田氏の主張を代弁する国政政党は消えた。選挙戦では全面的に小沢氏側に依存しており、事務局体制もカネ(政党交付金)もない。政策実現は容易ではない。
「嘉田新党」なのに自身が出馬しなかったことも、無役の小沢氏に介入を許した遠因。未来から出馬し落選した初鹿明博前衆院議員は28日、ツイッターで「落選議員に連絡も報告もなく党が瓦解(がかい)。ひどすぎる」としつつ、「国政政党の代表が国会議員にならないのは無理があった」と指摘した。【田中成之、加藤明子】
◇交付金「生活」独り占め
日本未来の党の分裂で、未来が13年に受け取る予定だった政党交付金約8億6500万円のほぼ全額を、未来の名称を変更した「生活の党」が手にする。一方、嘉田由紀子滋賀県知事が設立する別の政治団体「日本未来の党」は政党要件を満たさず、交付金はゼロ。小沢氏は文字通り「名」より「実」を取った。
政党交付金は年間約320億円で、直近の国政選挙得票数や1月1日現在の所属議員数に応じ配分が決まる。
未来は得票分だけで約4億7000万円の交付が確定していた。嘉田氏と阿部知子副代表が未来に残り、小沢氏らが離党して新党を作れば、得票分の交付金を嘉田氏らが受け取り、議員分を小沢氏らが取る決着も可能だった。しかし結果は、離党した亀井静香、阿部両氏の議員分が減額されるだけで、小沢氏側がほぼ独り占めする。未来で落選した前衆院議員も「資金が欲しいんだろう」と冷ややかだ。
これまでも政党が分裂する際は、交付金の配分が問題になってきた。小沢氏主導で結党された旧自由党の解党の際は、党に残った資金の大半が小沢氏系の政治団体に移された。また、00年4月に旧自由党の離党者が旧保守党を結成した際は、旧保守側が「分党」による交付金分割を要求したが、小沢氏が拒否。交付金を受け取れない「分派」の扱いとなり、同年6月の衆院選後まで交付金が支給されなかった。【笈田直樹】
http://mainichi.jp/opinion/news/20121229ddn003010035000c.html
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私に言わせれば、「国民の生活が第二、議席が第一」が見え見えの旧「生活」と組んだ嘉田のオッカサンのお脳の構造がよく分からなかった。 さらに、「卒原発、それなに? 脱原発と何が違うネン?」と誰しも思うような言葉遊びで選挙に挑む現実認識の甘さ。 大方が当初から予想したように、「用済み、利用価値なし」と見るや小沢・旧生活は政党交付金を分捕って「卒原発」を卒業した。 馬脚をあらわしのがその新党の名前「生活の党」だ。 国民の生活は「第一」ではなくなった、それどころか「国民」さえなくなった。 党名が長かったから短くしたのではあるまい。 その新党の目的を露骨に表現したに過ぎない――だれの生活なのか?それは所属議員の生活である、つまり新党名の「生活の党」をフルネームで書くと「議席が第一、議員の『生活の党』」、というのが本当のところだろう。
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【続報】
2013-1-3|朝日新聞のこの報道によれば、嘉田・「日本未来の党」の代表を辞任する意向を固めたようだ。 県知事との二足のわらじは県議会から突き上げを受けている。 橋下大阪市長のように人気とパワーがあるわけでもないのだから、無理をしないのが賢明な選択だ――
嘉田氏、日本未来の党代表辞任へ 知事との兼務批判受け
(朝日 2013年1月3日12時1分)
滋賀県の嘉田由紀子知事は、兼務している政治団体「日本未来の党」の代表を辞任する意向を固めた。4日の定例会見で明らかにする。後任には阿部知子衆院議員を充てる予定で、自身は顧問などの形で団体に関わる見通し。6日に開く会合で正式決定する。▼ 知事と代表の兼務をめぐっては、県議会が昨年12月26日、県政運営に支障を及ぼしているとして、兼務の解消を求める決議案を賛成多数で可決。嘉田知事は知事職に専念することで、県議会の批判をかわし、新年度予算を審議する県議会2月定例会を円滑に進める狙いがあるとみられる。 http://www.asahi.com/politics/update/0103/TKY201301030170.html
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