<相次いで再燃した日本の領土問題> その背景を探る

わずか1か月余りの間に、日本が関わる長年の領土問題が3つ立て続けに再燃した。日本政府が近隣諸国との領有権問題に固執しているように見える点について専門家らは、21世紀の国際社会で存在感を示そうともがく日本のさまよえる外交政策を象徴していると分析する。

【領土問題地図】 日本が周辺国と領有権を争う島々

最初の衝撃は7月初め、ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)首相によってもたらされた。第2次世界大戦(World War II)終戦間際に旧ソビエト連邦が占領した北方領土を訪問したメドベージェフ首相は、「極めて遺憾」だとの日本の抗議に対し、記者団にこう言い放った。「かまうものか」

続いて韓国の李明博(イ・ミョンバク、Lee Myung-Bak)大統領が、竹島(Takeshima、韓国名:独島、Dokdo)を空路で訪れ、日韓関係が急速に冷え込む結果となった。

そして前週、日本政府は沖縄県の尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)に上陸した香港(Hong Kong)の活動家14人を逮捕・強制送還。19日には、今度は日本人10人が尖閣諸島に上陸した。

■ 日本にとって価値の高い島々

いずれの事件も、民主党政権がはっきりとした方向性を打ち出せないまま原発問題と消費増税をめぐって不安定化し、秋の解散総選挙が現実味を増しつつある東京・永田町に重くのしかかっている。

領土問題の渦中にある島々は全てエネルギー、鉱物、漁業など貴重な資源の宝庫だ。さらに、中国の影響力が増大する東アジア地域において戦略的な価値もある。

北東アジアの国際関係に詳しい韓国・延世大学(Yonsei University)国際学部の武貞秀士(Hideshi Takesada)教授は、次のように警告する。「尖閣は(日本と)大陸を直接結ぶ窓口。もし万が一、日本が尖閣を失うようなことになれば、前線の重要な部分を失うことになる」

「それ以上に、弱腰外交は別の分野に波及する恐れもある。たとえば、特許などの分野で中国が強気に出ることも予想される」

同志社大学(Doshisha University)の寺田貴(Takashi Terada)教授は、領土問題は20世紀初頭の日本の帝国主義と切り離せないと指摘する。日本が東アジアへと領土を拡大していった際、しばしば暴力的な手段が使われたことが、支配下に組み込まれた地域の人々の間に強い反発を生んでいるというのだ。「欧州はある程度、冷戦の負の遺産を解決してきたが、領土問題など、アジアでは今でもたくさんの問題が残っている」

事実、日本は第2次世界大戦を正式に終結させる平和条約をロシア(旧ソ連)と締結していない。

■ パイプ持たない民主党、変わる地域均衡、揺らぐ日米関係

日本は一連の領土問題をめぐる衝突を阻止することも、解決することもできずにいる。その原因は活力を失った政治だと寺田教授は言う。

寺田教授が問題視するのは、2009年に自民党から政権を奪取した民主党の経験不足だ。50年にわたって政権をほぼ独占してきた自民党の政治家たちが各国との間に築いた個人的なパイプを、民主党の中心人物のほとんどは持っていない。また、首相が次々と交代したことで政権は不安定化し、日本にはやり返す力がない、との印象を与えてしまっているという。

中国の経済成長と日本の不況も、地域の均衡を変えた。「かつて、アジアの国々は日本の経済・技術協力を必要としていた。その見返りとして、それらの国々は対日本外交において譲歩してきた」(寺田教授)

中途半端な民主党政権の態度によって日米関係が悪化したことも、周辺国に付け入る隙を与えた。「日本は日米同盟により守れられてきたため、領土問題はそれほど顕在化されてこなかった。しかし、昨今のギクシャクした日米関係は、中国や韓国が強気に出るきっかけになっている」と寺田教授は指摘している。

ただ、だからといって日本には慌ててまた米国に擦り寄るという単純な選択肢はないと、一橋大学(Hitotsubashi University)の加藤哲郎(Tetsuro Kato)名誉教授は忠告する。その理由は1つには米国が、自国の国益を損なう危険をはらんだ領土問題でその手を汚す気がないためだが、世界のパワーバランスが変わったことも一因だという。

「中国の存在感が大きくなってきて、日本が米国だけに頼っているのでは力が弱くなってきた」(加藤教授)

■ 過熱すれば軍事衝突の恐れも

野田首相は前月、尖閣諸島の防衛に自衛隊を派遣する可能性に言及したが、政府に対して何らかの行動を求める声が国内で高まる中、こうした発言に飛びつく政治家が増える可能性もある。

米ボストン大学(Boston University)のトーマス・バーガー(Thomas Berger)准教授(国際関係)は、短期的には軍事衝突は起きないだろうと分析した上で、「しかし、この地域で領土問題をめぐって市民の怒りが膨らんでいるのは、非常に気掛かりだ」と述べ、懸念も示した。

「衝突の可能性を除外することはできない。地域内での軍拡競争も既にかなり進行している」

(【8月22日 AFP】 http://www.afpbb.com/article/politics/2896401/9390551?ctm_campaign=txt_topics

福島県飯舘村の土からプルトニウム検出、原発事故で放出か

東京電力福島第一原子力発電所からおよそ32キロ離れた福島県飯舘村の土から、原発事故で放出されたとみられるプルトニウムが検出されました。

文部科学省は、「濃度は低く被ばく量は非常に小さい」としています。

文部科学省は、去年6月から7月にかけて、福島第一原発から100キロ圏内の合わせて124か所で採取した土について、プルトニウムが含まれているかどうか調べました。

その結果、原発から主に北西方向の飯舘村、浪江町、南相馬市、それに、大熊町の合わせて10か所で、原発の事故で放出されたとみられるプルトニウムが検出されました。

このうち、原発から最も離れた場所は、およそ32キロ離れた飯舘村の地点で、▽プルトニウム238の濃度は、1平方メートル当たり0.69ベクレル、▽プルトニウム239と240の濃度は、合計で1平方メートル当たり2ベクレルが検出されました。

原発事故のあとの国の調査では、去年9月にも、プルトニウムが原発からおよそ45キロ離れた飯舘村など6か所の土から検出されたことが分かっています。

今回の調査結果について、文部科学省は、「検出されたプルトニウムの濃度はいずれも低く、被ばく量は非常に小さい」としています。

NHKニュース 8月21日 19時17分 「原発事故で放出か プルトニウム検出」

(NHKニュース 8月21日 19時17分 「原発事故で放出か プルトニウム検出」 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120821/t10014435701000.html

<尖閣>民主・長島昭久首相補佐官vs自民・石破茂元防衛相 「新報道2001、狙われる日本の領土…激論!長嶋x石破」(8月19日)

今朝放送の「新報道2001」(フジTV、8月19日7:30~)で「狙われる日本の領土 緊迫…尖閣・竹島問題」を取り上げていたが、民主・長島昭久首相補佐官と自民・石破茂元防衛相の論戦があった。 結論からいえば長島氏がタジタジだった。 この程度の人物が首相補佐官をやっているのだから、日本はどうしようもない。 それにしても、さすが石破茂元防衛相、格が違う。

番組の抄録が産経新聞電子版に掲載されていたので紹介したい。 番組をみなかった人のためにYoutubeにアップロードされている番組動画を探しし出してブログにエンベッドしておいたので視聴してみてはどうだろうか。 民主・長島昭久首相補佐官なる人物がどの程度なのかよーく分かる。 「これが野田政権の実態だ!」ということだ。

【新報道2001】 狙われる日本の領土…激論!民主・長島昭久首相補佐官vs自民・石破茂元防衛相

【新報道2001抄録】 2012.8.19 17:21 (産経)

沖縄・尖閣諸島や島根県・竹島などをめぐり緊迫の度を増す隣国との外交・安全保障関係について、民主党の長島昭久首相補佐官や自民党の石破茂元防衛相らが論戦を繰り広げた。

--政府は香港の活動家らを意図的に意図的に上陸させたのか

長島氏「上陸させるべきではなかったが、風があり波も高く、最後の手段でやむを得ず上陸させた。シナリオがあったわけではない」

--不法上陸した14人は強制送還となったが

石破氏「(14人が)れんがを(巡視船などに)ぶつけても公務執行妨害にはならないのか、もっと法律の適用を厳格に考えないと、この国は法治国家ではなくなってしまう」

--海保が事件のいきさつを撮影したビデオは公開されていないが

長島氏「2年前の中国漁船衝突事件の教訓があり、前原誠司政調会長も公開すべきと言っている。政府としてきちっと公開すべきかは判断すべきだ」

--日本政府は穏便に済ませようとしたとの見方がある

石破氏「まず野田佳彦首相が、どういう理由でこのような対応をしたかを説明するのが当たり前だ」

--今後、大漁船団が来たらどう防ぐのか

長島氏「上陸を許したのは問題だった。今回の事件の背後に中国の意思があるのかをしっかりと分析し、真剣に考える」

石破氏「大きな船を出すなど、海保の対応能力を上げるべきだ。相手を刺激してはいけないと言って、国益を損ねてはいけない」

--東京都から尖閣諸島への上陸許可申請が出たら政府はどうする

長島氏「出された段階で検討する。国が尖閣諸島を購入する方向で東京都と調整中であり、推移を見守っていただきたい」

--韓国の李明博大統領が天皇陛下に謝罪を求めた発言については

石破氏「陛下を『日王』といった物言いは日本国民への侮辱だ」

長島氏「一国の指導者としては常軌を逸している。領土問題で韓国が譲らないというなら出るところに出て結論を出すしかない。国際司法裁判所に単独提訴するかも含め、総合的に判断したい」

--尖閣、竹島、北方領土と問題が同時発生している

石破氏「日米同盟が揺らぎ始めたのがそもそもの発端。ロシアも中国も韓国も今のうちに既成事実を積み重ねようとしている」

http://sankei.jp.msn.com/politics/news/120819/plc12081917210008-n1.htm


Youtube動画

新報道2001 狙われる日本の領土 緊迫…尖閣・竹島問題 2012年8月19日(1/4)

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新報道2001 尖閣上陸の裏側 独自撮! 中国政府の”異変” 2012年8月19日(2/4)

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新報道2001 なぜ今日本の領土を…3カ国”同時包囲網”の謎 2012年8月19日(3/4)

尖閣に上陸し、不法入国で飛行機で強制送還された香港の連中は”ビジネスクラス”に乗って帰った。 バックにスポンサーが付いているから、ビジネスクラスで帰れたわけだ。

機内での報道陣の取材に「10月に再上陸する」と予告している。 なぜ10月なのか? それは9月に中国共産党の首席や幹部の入れ替えがあるからで、それが終わるのを待ってということだ。 尖閣上陸の影には中国共産党がちらついている。

ところで、尖閣・魚釣島沖で戦没者の慰霊に参加した日本人のうち10人が上陸したが、香港の連中に頭にきて対抗してやったんだろうが、政府が無策だから事はセスカレートしがちになる。 民主党のアホ頭では何が起きても「想定外」の事態というのだろう。 新聞はあまり報道していないが、慰霊祭に参加した約150人の中に「田母神俊雄・元航空幕僚長」もお出ましになっていた。

慰霊祭に同行していた田母神俊雄・元航空幕僚長は「中国と日本両国の国民に、尖閣はわれわれの領土だというメッセージが伝われば」と語った。

今日(8/19)の夜9時20分配信のNHKニュース「上陸議員“不法入国許せない」――

沖縄県の尖閣諸島の魚釣島に上陸した東京都などの地方議会の議員ら10人のうち、議員の1人は記者会見で「香港の活動家による不法入国が国民の1人として許せなかった」と説明しました…..  http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120819/t10014384531000.html

ニュースに掲載されていた動画クリップを視聴して見たら、上陸した人たちの記者会見がふくまれていたが、真ん中に座っているのは「チャンネル桜」代表の水島総(みずしま・さとる)さんじゃないか~。

「チャンネル桜」 http://www.ch-sakura.jp/index.html「チャンネル桜―水島総のページ」 http://www.ch-sakura.jp/mizushima/index.html

水島総(みずしま・さとる)☛株式会社「日本文化チャンネル桜」代表者、日本映画監督協会会員・日本脚本家連盟会員

時価総額世界1位の米アップルは雇用にどれだけ貢献したのか?

時価総額で世界1位になった米アップル…ではアップルは雇用にどれだけ貢献したのか。 正社員は3年前の2倍の約6万人になり、関連するソフト・部品企業でも多くの人が働く。 全米で51万4000人の雇用を生み出し、育てたという。 しかし…その地元のカリフォルニア州サンタクララ郡の雇用は厳しい。 5月の失業率は8.2%で全米の7.9%を上回った。 アップル本社近くのレストランは昼時、中国やインド系社員が目立つ。 社内関係者によると「ここではアジア系の人が増えた」。 世界的企業で働くのは高学歴の外国人が多く、その城下町に住む地元の若者に十分な仕事がない。 では、日本はどうなのか….

新たな雇用 どう創る
働けない 若者の危機 第1部 鳴り響く警鐘(5)
(日経・コラム 2012/7/20)

時価総額で世界1位になった米アップルは雇用にどれだけ貢献したのか。正社員は3年前の2倍の約6万人。関連するソフト・部品企業でも多くの人が働く。全米で51万4000人の雇用を生み出し、育てたという。

採用増やすIT

だが、その地元の雇用は厳しい。アップルをはじめ有力IT(情報技術)企業が集まるカリフォルニア州サンタクララ郡。5月の失業率(原数値)は8.2%で全米の7.9%を上回った。アップル本社近くのレストランは昼時、中国やインド系社員が目立つ。社内関係者によると「ここではアジア系の人が増えた」。世界的企業で働くのは高学歴の外国人が多く、その城下町に住む地元の若者に十分な仕事がない。

日本はどうか。ソフトバンクは2013年度の新卒採用を10年度比4倍の1000人にする。インターネットゲーム大手のグリーは1カ月50人程度を中途採用している。

総務省によると、情報通信産業が10年に生み出した雇用は05年比5%増の764万人。輸送機械は2%減の227万人、鉄鋼は6%減の62万人。ITは日本の雇用確保に一定の役割を果たしたが、手放しでは喜べない。

グリー副社長の山岸広太郎(36)は多いときには1カ月に3、4回海外出張し提携相手を探す。中国や韓国で地元企業へ出資した。優秀でコスト競争力が高い海外の開発者をグループ内に確保する狙いだ。ネットに接続した端末があれば場所を選ばずに仕事ができるIT企業は海外人材を活用しやすい。

小売業も海外の人材を増やしている。ファーストリテイリングが3月に開いた入社式に出席した国内採用者は273人。海外はこれを大きく上回り、12年に傘下のユニクロだけで約900人を新卒採用する。イオンは13年度、国内で2000人を採用し、海外では1000人を採用。将来は社員の6割を外国人にしたいという。

小売業には給与水準が低いという課題もある。国税庁によると10年の卸売・小売業の平均年間給与は362万円で製造業より約100万円少ない。工場のように現場の改善で生産性を高めにくいためだ。製造業から小売業へ転じた人は生活水準の維持が難しい。ITや小売りはこれまで雇用の受け皿を担ってきた製造業を引き継げる段階にはまだ至っていない。

慶応大学大学院教授の岸博幸(49)は「先進国は企業の成長が国内の雇用確保に直結しない難しい時代に入る」とみる。

海外で働けるか

地元に誘致した工場で安定した給与をもらい定年まで働く。製造業で当たり前だったこのような雇用形態は通用しにくくなっている。新興国で成長を目指す自動車大手などは生産や開発を海外へ移し、現地の人材を活用し始めた。

国内雇用を守る努力や知恵は必要だ。だが世界的なコスト競争のなかで海外流出をすべては止められない。国内だけに目を向けていては働き場所はこれから減っていく。国や企業が海外で活躍できる人材を育てることが、グローバル化の時代には必要だ。

ファストリ会長兼社長の柳井正(63)は「若い人は稼げる産業をつくる気概を持ってほしい」と言う。若者の雇用問題を解決するには政府や企業、労働組合、中高年、若者自身がそれぞれ変わらなければならない。若い力を生かせないような国は輝きを失う。=敬称略

(若者の雇用取材班)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD110P7_X10C12A7SHA000/?df=2

 

深海生物に木くず分解の酵素⇒廃棄物からバイオエタノール生産! “画期的”研究成果だ!!!

この新酵素の発見は凄い! トウモロコシなどの穀類ではなく、木材等の天然バイオマスや廃紙等から常温でのグルコース生産の可能性を大きく前進させる新規酵素を発見した世界初の画期的な成果だ!!!   海洋研究開発機構(JAMSTEC)、やるじゃないか――

深海生物に木くず分解の酵素
(NHK 8月16日 6時3分)

深海にすむエビに似た生物が、木くずを分解して栄養分を作り出す特殊な消化酵素を持っていることが、独立行政法人・海洋研究開発機構の研究で明らかになり、廃棄物から燃料を効率的に作り出す技術の開発につながると期待を集めています

特殊な消化酵素を持っているのが見つかったのは、世界で最も深い太平洋・マリアナ海溝の、水深およそ1万メートル付近に生息する、エビに似た生物「カイコウオオソコエビ」です。

深海生物に木くず分解の酵素⇒カイコウオオソコエビ

海洋研究開発機構の小林英城主任研究員たちのチームは、3年前から、この生物が、餌がほとんどない深海で、どのように栄養を摂取しているのか研究を進めていました。
その結果、この生物は、体内にある特殊な消化酵素で、深海にたまった木くずなどの、セルロースと呼ばれる成分を分解し、グルコースという栄養分に変えていることが分かりました。

グルコースは、再生可能エネルギーの一つ、バイオエタノールの原料で、従来は複数の酵素を使わなければ、木くずからは作り出せないと考えられていました。 カイコウオオソコエビの酵素は、これだけでグルコースを作ることができる特殊なもので、研究を進めれば、廃棄物から燃料を効率的に作り出す技術の開発につながると、期待を集めています。

海洋研究開発機構・小林英城主任研究員

小林主任研究員は「現在、大量に廃棄されている木や紙から、バイオエタノールを生産できるようになると考えられる。新たなエネルギーの確保につながるのではないか」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120816/k10014309921000.html

独立行政法人・海洋研究開発機構(JAMSTEC = Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology)、ご存じだとは思うが「しんかい6500」もJAMSTECがやっている。 早速、JAMSTECのホームページに行ってみた。 http://www.jamstec.go.jp/j/

8月16日のプレスリリースで詳細記事が掲載されていた。 以下、プレスリリース記事のクリップ――

2012年 8月16日
独立行政法人海洋研究開発機構

マリアナ海溝世界最深部に生息する超深海性ヨコエビの特異な生態の解明と新規セルラーゼの発見

1.概要

独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平 朝彦)海洋・極限環境生物圏領域の小林英城主任研究員らの研究チームは、マリアナ海溝チャレンジャー海淵の世界最深部(深度、10,900 m)に生息するヨコエビ(学名:Hirondellea gigas, 和名:カイコウオオソコエビ)の生態解明に取り組み、その食性究明において、タンパク質、脂質、多糖類などに対する分解活性を解析したところ、新規で有用性の高い消化酵素の検出及び精製に成功しました。

その結果、カイコウオオソコエビは、植物性多糖を分解するセルラーゼ、アミラーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼといった酵素を保持し、それら酵素の反応生産物であるグルコース、マルトース、セロビオースを大量に体内に含有しており、超深海において植物を分解、栄養としていることが明らかになりました。

また、各酵素の性質について調べたところ、これら酵素は高い反応性を有しており、特にセルラーゼについては、オガクズやコピー用紙等を分解して直接ブドウ糖(グルコース)に転換する、極めて生産効率の高い新規酵素であるとともに、酵素として優れた安定性を有していることを見いだしました。

本成果は、未だ明らかではない世界最深部に生息する超深海生物の生態を解明するとともに、トウモロコシなどの穀類ではなく、木材等の天然バイオマスや廃紙等から、その上常温でのグルコース生産の可能性を大きく前進させる有用な新規酵素を発見した世界初の画期的な成果です。 セルラーゼ以外の酵素についても、その特性解明を進めているところですが、それら酵素は安定性に乏しいため、解析等に時間を要していますが、今後、解析方法等について多角的に検討を進め、生活・社会に期待される成果に結び付けていきたいと考えています。

本成果は、平成24年度科研費 基盤研究(C) :カイコウオオソコエビが持つ新規セルラーゼの遺伝子解析とその工学的利用(課題番号:24580153)を用いた成果であり、8月16日付け(日本時間)のPublic Library of Science One (PLoS One) (電子版)に掲載される予定です。

なお、本研究により新規に同定されたセルラーゼについては、特許出願を行っています。

2.背景

1998年、当機構の前身である海洋科学技術センターの11,000m級無人探査機「かいこう」によって、海洋の最深部(日本の南方約2,500 km離れたマリアナ海溝チャレンジャー海淵)での探索が行われました。一般に、深海海底は非常に水圧が高く、また貧栄養であるため、生物の生息は困難な環境であることが知られていますが、「かいこう」の探索では、世界最深部にはカイコウオオソコエビ(図1)が多数生息していることが確認されました。しかし、これら超深海生物が何を食べて超深海で生息できるのかわかっていませんでした。

そこで本研究では、2009年の調査潜航(Cruise ID: YK09-08)において、当機構が作成・保有するフリーフォール式のカメラ付き採泥システム(図2)を用いて、カイコウオオソコエビを採取するとともに、その食性を解明するため、消化酵素を解析しました。

3.成果

カイコウオオソコエビが、貧栄養環境下で生息するための生態解明に取り組み、その消化酵素に着目し、タンパク質、脂質、多糖類などに対する分解活性を解析したところ、セルラーゼ、アミラーゼ、マンナナーゼ、キシラナーゼなどの植物性多糖分解酵素の検出に成功しました(図3)。これら4つの酵素は、それぞれセルロース、でんぷん質、ヘミセルロース(植物細胞壁に含まれるセルロース以外の多糖類)であるマンナンとキシランを分解することが知られており、同時に採取した海底泥から、木片も見つかったことから、カイコウオオソコエビは、世界最深部の海底で流木や枯れ葉、タネなどの植物片を食べると予想されました。

そこで、消化酵素の酵素学的性質を検討するため、カイコウオオソコエビから抽出した消化酵素と、でんぷん、カルボキシメチルセルロース(以下、CMC)、グルコマンナン、キシランを反応させ、その反応生産物について調べた結果、以下の通り物質が検出されました。

・でんぷん:分子量がマルトテトラオース以下のオリゴ糖

・CMC:グルコースとセロビオースのみ(図4)

・グルコマンナン:低分子量の各オリゴ糖

・キシラン:キシラナーゼ活性が不安定だったため、同定に至らず

上記結果のうち、CMCからグルコースとセロビオースを生産するセルラーゼの報告例はなく、新規セルラーゼであると期待されました。

このセルラーゼについて、カイコウオオソコエビ10個体分を精製し、一般的な分子生物学的手法を用いて酵素学的な性質を検討した結果、カイコウオオソコエビのセルラーゼは一種類であり、分子量は約59,000、反応至適温度は25-35℃、反応至適pHは5.6である新規セルラーゼであり、CMCとの反応において、グルコースとセロビオースを2:1の割合で生産することが明らかになりました。

カイコウオオソコエビが本セルラーゼを用いて、木片を消化しているかを検証するため、本セルラーゼをオガクズと反応させたところ、グルコースの生産が認められ、さらに、カイコウオオソコエビは、植物由来の生産物であるグルコース、セロビオース、マルトースを多く保有しており、特に、グルコースは乾燥体重の約0.4%も含まれていることが分かりました。

以上の結果より、生物の少ない超深海環境では、カイコウオオソコエビは、他の生物の死骸が落ちてくる間、流木などの植物片を食べて命を繋いでいると推測されます。

セルラーゼ以外の酵素についても、その特性解明を進めているところですが、それら酵素は、不安定であり酵素学的な性質等の解明は今後の課題です。

なお、本研究により新規に同定されたセルラーゼについては、特許出願を行っています。

4.今後の展望

本成果は、カイコウオオソコエビが保持するセルラーゼが、木材や紙類を含めた多種多様なバイオマス全般に対して、高いグルコース生産性を有していることを明らかにしたものですが、木材等と反応させることによって、エタノールの原料であるグルコースを容易に取得できることから、再生エネルギーとして期待されているバイオエタノールの生産等に大きく寄与することが期待できます。

また、エネルギーを利用せず、枯れ木等から直接グルコース生産が可能であることから、生産したグルコースを食品に加工することで、世界の飢餓地域の栄養改善にも利用できると考えられます。さらに、本セルラーゼは天然由来のセルロースだけでなく、一般紙のような加工されたセルロースでも、室温でグルコースを生産できることから(図5)、本酵素の利用範囲が非常に広いことを示しました。今後、セルラーゼ遺伝子を取得し、大量生産を行うための研究を推進していく予定です。

また、カイコウオオソコエビからは、セルラーゼ以外の酵素も検出され、有意かつ多様な特性が期待されるところですが、それら酵素は不安定であるため、研究の進展速度がセルラーゼに比べ遅れていますが、今後、解析方法等について多角的に検討を進め、生活・社会に期待される成果に結び付けていきたいと考えています。

超深海性ヨコエビの特異な生態の解明(JAMSTEC)

http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20120816/