米国防費20兆円、10万人削減、新聞報道をもっと突っ込んで調べてみた

紙面版や電子版の先週金・土曜日の報道で皆さん既にご存じだろう。 レオン・パネッタ(Leon Panetta)米国防長官は26日、国防総省の2013年の予算要求の概要を発表し、国防費削減のため兵士10万人の削減などを提案した。た だし、アジア太平洋と中東地域では戦力を維持するとして、新たな予算を求めた。

残念ながら日本のメディアの報道は外電に基づいているので概要ばかりで物足りない。 そこで米国防省がネット公開している情報と米国の電子版報道を調べてみた、紹介しよう。

米国防省の削減案の要点をまとめるとこうなる。

[米国防予算削減計画の要点]
● FY13以降の今後5年間で約2590億ドル(約20兆円)を削減
● 陸軍56万2千人から49万人へ7万2千人削減
● 海兵隊は20万2千人から18万人2千人へ2万人削減
● 欧州に展開する陸軍4旅団のうち2旅団を撤収
● F‐35、今後5年間の調達計画423機のうち179機を先送り
● 空軍の60ある戦術戦闘飛行隊のうち6飛行隊を削減
● 空軍の老朽化した輸送機127機以上を退役 (24機のC‐5A、65機のC-130を含む)
● 米国内基地の統合・閉鎖を議会に新たに提案

今回の削減案は昨年、オバマ大統領が議会に提出した予算案を削減したものだ。 それは米国予算管理法に基づく義務的削減(Budget Control Act Mandated Reductions)によって課せられた削減――FY2012-2021の10年間で4870億ドル、FY2013-2017の五年間で2590億ドルの削減――を達成するために発表された予算修正案だということ。 国防省が公開している「国防予算概況報告書(Fact Sheet: The Defense Budget)ではこういう5年プランを提示している。


報道の基になっている米国防長官の発表と記者会見の内容は国防省ウェブサイトで報道発表議事録(News Transcript)として公開されている:

「News Transcript–Presenter: Secretary of Defense Leon E. Panetta and Chairman of the Joint Chiefs of Staff Gen. Martin E. Dempsey. January 26, 2012」

実はその議事録を読むより、国防省が公開している報告書「国防予算の優先順位と選択」(Defense Budget Priorities and Choices)を読んだ方が具体的かつ簡潔で分かり易い、全15ページ。

米メディアの報道で要点を簡潔にまとめてかつ分かり易い英語で記事を掲載しているオススメの記事はVOA(Voice of America)とS&S(Stars & Stripes)だと思う。 以下、その記事のリンク。

VOA news  – Panetta Outlines US Defense Budget Decisions (January 26, 2012)

S&S news  – Panetta: Troop numbers to fall, but no hit to active-duty pay and benefits   (January 26, 2012)

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一応、日本の新聞の記事ものっけておこう。

米国防費5年で20兆円減 国防長官発表へ、F35調達先送り
(日経 2012/1/27 朝刊)

パネッタ米国防長官は26日に記者会見し、2013会計年度(12年10月~13年9月)から5年間の国防予算の削減計画を明らかにする。米同時テロ以降に大幅に膨らんだ陸軍と海兵隊の兵力規模の大幅削減や開発経費が高騰した最新鋭ステルス戦闘機F35の調達先送りなどが柱。5年間の削減幅は約2590億ドル(約20兆円)に上る。

昨年の財政赤字削減に向けた与野党合意に基づいて国防予算は今後10年間で4900億ドルを削減する計画。今回はその前半の5年間の具体的な見通しを示す。ただ、与野党の債務削減協議が進まずに強制的な国防予算の追加削減が決まれば、今回の削減計画はさらなる見直しを迫られる可能性もある。

5年間の国防予算削減計画の初年度となる13会計年度国防予算の要求額(戦費除く)は前年度の要求から300億ドル少ない5230億ドルに抑制する方針。戦費はイラク戦争終結とアフガニスタンからの米軍撤収の加速により前年度から330億ドル減の825億ドルとなる見通しだ。

史上最高額の武器調達と指摘されているF35については「試験飛行や開発上の変更を加えるために調達スピードを遅らせる」と明記。今後5年間に予定していた179機分の調達を先送りし、約200億ドル以上の節約を見込む。同戦闘機は日本の航空自衛隊の次期主力戦闘機に決定済み。米側の調達計画の見直しによる価格の高騰などが日本にも波及する可能性がある。このほか空軍の無人偵察機グローバルホークブロック30の調達は中止する。

兵力構成の見直しでは米同時テロを受けてそれぞれ57万人、20万人のピークに達している陸軍と海兵隊のそれぞれ8万人、2万人を削減。地域別では欧州に前方展開している陸軍の4つの戦闘旅団のうち2つを撤収させる。

一方で、オバマ政権が打ち出したアジア太平洋地域への関与強化の実現に向け「太平洋地域での陸軍と海兵隊の兵力構成は維持する」と指摘。イランの核問題など、なお不安定な情勢が続く中東についても「継続的なプレゼンス(存在)を確保する」とした。

(ワシントン=中山真)

米軍、5年で10万人削減 アジアは関与強化
予算圧縮20兆円
(日経 2012/1/27 10:54)

【ワシントン=中山真】パネッタ米国防長官は26日、国防総省で記者会見し、今後5年間で米軍地上部隊を約10万人削減することなどを柱とした国防予算の削減計画を発表した。兵器調達計画の見直しなどもあわせた5年間の予算圧縮額は約2600億ドル(約20兆円)。一方、現有の空母11隻体制を維持すると説明し、アジア太平洋地域への関与は強化する方針を改めて強調した。

今回の削減計画はオバマ大統領が今月発表した国防予算削減に基づく新たな国防戦略を具体化するもの。パネッタ長官は「戦争が終わり、厳しい財政的な制約に向き合う以上、軍隊は小さくせざるをえない。適切な訓練と装備をまかなえる以上の兵力構成は維持しない」と述べた。

兵力削減は2001年の米同時テロ以降の対テロ戦争への対応で大幅に膨らんだ陸軍と海兵隊が対象で、それぞれ8万人減の49万人、2万人減の18万人となる。ただ同時テロ前の水準よりは多く、制服組トップのデンプシー統合参謀本部議長も「5年で削減する規模としては正しい内容と確信している」と指摘した。

兵器調達の見直しでは日本の航空自衛隊の次期主力戦闘機にも決まっているステルス戦闘機F35について「大量購入する前に試験飛行や開発上の変更の余地を残すため、調達計画を遅らせる」と明記。最新レーダーを備えた無人偵察機グローバルホーク・ブロック30の調達計画中止や、維持費が高額な旧型巡視船の退役加速なども盛り込んだ。

削減計画の初年度、2013会計年度(12年10月~13年9月)の予算要求額(戦費を除く)は昨年末に成立した前年度予算よりも少ない5250億ドル。戦費はイラク戦争の終結やアフガニスタンからの米軍撤収の加速などを受けて、前年度比266億ドル減の884億ドルを要求する。

http://www.nikkei.com/news/article /g=96958A9C9381959FE0E5E2E3E68DE0E5E2E3E0E2E3E09F9FE2E2E2E2; m=96948D999D9C819A9B9C8D8D8D8D