厚生労働省は今日(10月29日)、平成22年(2010年)3月に卒業した高校生、大学生など新規学卒者の3年以内の離職率を公表した。 大学を卒業して就職した若者のうち、3人に1人が3年以内に勤め先を辞めているとデータは示している。 業種別では宿泊や飲食業の離職率が最も高く、2人に1人が辞めていた。
大卒者の離職率は31%(前年比2.2ポイント増)、短大などが39.9%(同0.6ポイント増)、高卒者39.2%(同3.5ポイント増)、中卒者62.1%(同2.1ポイント減)で、中卒以外で離職率が上昇した。 新卒者の離職率は、若者を使い潰すと批判が出ている「ブラック企業」の判断材料になるとして注目されている。
厚生労働省による離職率は、ハローワークに提出される雇用保険加入届、離職届のデータから分析されている。 平成22年(2010年)3月に卒業した大学生の場合、365,500人が就職し、そのうち一年目までに13.4%(48,945人)、2年目までに23.3%(85,001人)、3年目までに31.0%(113,390人)が離職していると推計される。 (参照: 厚生労働省「新規大学卒業就職者の事業所規模別離職状況」表、下の画像クリックで拡大)
NHKのニュースの報道はこう伝えている――
大卒若者の離職率 宿泊・飲食業で51%
(NHK 10月29日12時5分)
大学を卒業して就職後、3年以内に仕事を辞めた人の割合は31%で、業種別では宿泊業や飲食サービス業で51%に上っていることが分かりました。 厚生労働省は「社会に出た若者を育てていくような雇用管理ができていない企業もあるとみられ、改善が必要だ」と話しています。
厚生労働省は、高校や大学などを卒業し新卒採用された若者の離職率を調べていて、去年からは業種別の割合を公表しています。 それによりますと、平成22年に就職した若者のうち3年以内に辞めたのは、大学を卒業した人で31%、高校卒業でおよそ39%に上りました。
大学卒業の若者の離職率を業種別に見ますと、最も高いのは宿泊業・飲食サービス業で、51%と去年の調査を2.5ポイント上回りました。 次いで、教育・学習支援業が48.9%、生活関連サービス業・娯楽業が45.4%となっています。
一方、離職率が最も低かったのは、電気やガスなどのライフライン産業で8.8%、次いで鉱業・採石業などで13.6%、製造業が17.6%となっています。
厚生労働省は、離職率が極端に高い企業などは「若者の使い捨て」が疑われるとして、集中的に立ち入り調査を行って対策に乗り出していて、「社会に出た若者を育てていくような雇用管理ができていない企業もあるとみられ、改善が必要だ。なぜ離職率が高いのか、業種ごとの分析を進めたい」と話しています。
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20131029/k10015637021000.html
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他メディアの報道記事リンク
- 日経 「大卒31%が3年以内に離職 10年3月卒、厚労省まとめ」(2013/10/29 13:37)
- 毎日 「離職率:新卒が上昇…3年以内、大卒31%」(2013年10月29日19時53分)
- 朝日 「大卒の3割超、3年以内に退職 宿泊・飲食業は半数」(2013年10月29日18時01分)
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上記にリンクした新聞社の記事、どれも厚生労働省の発表した資料がどこに行けば見れるのかは書いていない。 電子版ならなおさらの話だが、資料へのリンクぐらい付けておくぐらいのことはするべきではないか? この発表資料は厚生労働省HPのかなり階層の深いところに掲載されていて、慣れた人でないとたどり着けないと思うが。 このように階層は深い――
厚生労働省HP・ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 雇用・労働 > 雇用 > 若年者雇用対策 > 新卒者・既卒者の皆様、事業主の皆様へ > 若年者雇用対策に関するデータ・調査 > 若者雇用関連データ > 新規学卒者の離職状況に関する資料一覧
ま~、「大卒離職率」で検索するとヒットするのは確かだが…..
資料が掲載されている厚生労働省HP・新規学卒者の離職状況に関する資料一覧ページへの直リンクはこれ ⇒ http://www.mhlw.go.jp/topics/2010/01/tp0127-2/24.html
そのページ行くとデータ表やグラフのPDFが一杯載っているが、その中からこのグラフを抜粋して掲載(画像クリックで拡大)――
厚生労働省2013年10月29日発表
「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」のグラフ
(出典: 厚生労働省「新規学卒就職者の在職期間別離職率の推移」のグラフ)
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【では、「ブラック企業」とは何なのか?】
Q) ブラック企業。最近、よく耳にするが・・どのような企業なのか?
A) インターネットなどで生まれた言葉と言われていて、正確な定義はないが、今、特に問題になっているのは、「若者を使い捨てにする」企業。
A) 若者を正社員として大量に採用するが、結果として、大量に辞めてしまう。 逆に言えば、大量に辞めることを前提に、大量に採用している企業。 まさに、若者の使いすてといえる。 主に二つのタイプがあるといわれている――
● 低賃金で長時間労働を強いる企業
● 社員を選別する企業
A) 例えば、毎日、終電ぎりぎりまで働いても、業務が終わらない。 残業が一か月で80時間とか、100時間に及んで、休みたいと思っても、「有給休暇はない」と言われたり、土日も出社しなければいけなかったりするケースなど..。 それでも、残業代が出ればまだいいが、出ない。 月給の中に、以下の図のように一定時間分の残業代が組み込まれているケースもあるようだ――
A) ハイ。 それでも、まだ、昔は、「終身雇用」そして「年功序列型の賃金」が保証されていたので、ある程度、希望は持てた。 また、辞めても、次の就職先が見つかっていた。 しかし、今は、それも期待できない。 就職が厳しい時代に、せっかく正社員になれたということで、なんとかがんばり続けようとして、その結果、体を壊したり、精神を病んだりして、辞めざるをえなくなる若者が増えているという現状がある。
Q) では、社員を選別する企業というのは?
A) 大量に採用した後、働き方を見て、企業が優秀だとみなした人だけ残して、あとは、辞めてもらう。
Q) 解雇するのか?
A) いや。 日本では、正社員は、そう簡単に解雇できない。 自分から辞めるよう追い込むような手口を使う。 例えば、上司が「きみの同期は、成果を出しているけれど、君は、向いていないね」「他の仕事の方がいいのではないか」といったことを言う。 繰り返し、繰り返し、呼び出して言うケースもある。 結局、「自分が悪いのかな」「向いていないのかな」と思って、辞めざるを得ない状態に追い込まれてしまい、「自己都合」の退職という形になってしまう。
A) サービス残業など、違法なケースもあるが、ただ、労使で、長い残業時間を協定で容認していたり、残業代こみの賃金を契約に盛り込んでいたり、たくみに退職に追い込んだりと、明らかな違法と言えないケースも多くある。
A) このブログに書いてある通り、厚労省の10月29日の発表によると3年以内に3割が辞めていると推定される。 また、業種によっては5割の離職率にもなっている。
Q) そんなに辞めてしまって、企業は困らないのか? なぜ、そのようなことをするのか?
A) 昔は、企業は、採用した人材を、じっくり育てようとしてきた。 しかし、デフレで、安さが求められるようになったり、企業が短期の利益を重視するようになった結果、「人件費の削減」を最優先にする企業が増えた。 特に、新興企業の場合、すぐに成果を出せない社員をじっくり育てる余裕はない。 人事担当者も少なくて、採用の段階でじっくり人材を見極める余裕もないという状況がある。 就職難で、応募してくる学生は多いという状況もあり、とりあえず大量に採用して、一部、残せばいい。 と考える企業がでてきている。 労働組合すらない企業も多い。
A) 就職難で、必死な学生が多いので、なかなか、事前に見抜くのは、難しいようだ。 賃金や残業の実態について、契約書に小さく書かれてあったり、説明すらなかったり。 あるいは、入社したら、事前に受けていた説明とまったく違ったというケースも多いようだ。
Q) 入社した後、しまったと思っても、辞めてもなかなか、次の仕事につけないのではないか?
A) その通り。 その結果、安定した仕事につけない若者、精神的に病んでしまう若者を大量に生んでしまうことになりかねない。 それは、社会にとっても大きな問題であり、なんとかしなければ大変なことになる。
(参考: 「“ブラック企業”被害 電話相談」 – NHK解説委員室ブログ)
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