海上滑空⇒空飛ぶイカ、これを「イカ・フライ」というのか!? イカフライが30m飛ぶなら、イカ天は天まで届く~

イカが、吸い込んだ海水を噴射して海上を飛び跳ねことは聞いたことがあるが、30メートルも滑空するとはスゴイ! このイカの飛行を「イカ・フライ」というのだろうか!?  イカフライとイカ天とどちらが好きかと問われれば…それはイカ天の方だ。 イカフライで30メートルなら、イカ天は天まで届くのか? オットット、話がメチャクチャになってしまった。 30メートル滑空する「空飛ぶイカ」の話だった。 捕食者であるマグロやイルカからの襲撃から逃れるため高度に発達した飛行行動だと考えられのだそうで、ドイツの国際的な科学雑誌「マリンバイオロジー」に論文(6名による共同論文)が発表されている(検索確認した、後段で紹介)。 この「空飛ぶイカ」はAFPで記事が配信され海外の英字紙に結構掲載されている(後段で紹介)。――

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 【更新・記事追加情報 2013-11-17】 このブログ投稿記事に出てくる関口圭子(せきぐち・けいこ)博士(鯨類研究家)がNHKラジオ第1の11月16日の深夜の番組「オトナの生き方」に出演―「南極へ、北極へ クジラの生態観察35年」―が放送されたようだ。 関口圭子さんにかんする記事を最後段に追加。
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海を飛び出し空飛ぶイカ 撮影に成功
(NHK 2月8日14時39分)

空飛ぶイカ0空飛ぶイカ1空飛ぶイカ2北海道大学の研究グループが、海中から飛び出して滑空するイカの撮影に成功し、グループは、魚から逃げるために発達した能力の1つではないかとみて注目しています。 撮影したのは、北大水産科学研究院の研究グループに所属する大学院生、村松康太さん(24)です。研究グループはおととし7月、東京の東600キロの太平洋で、アカイカの仲間とみられるおよそ100匹の群れが、海中から飛び出して滑空する姿を連続撮影しました。

これまでも、一部のイカには体内から海水を噴射して海中から飛び出す能力があることは分かっていましたが、画像を解析した結果、イカは空中でも体内から海水を噴射して速度を上げ、ひれや腕などを広げてバランスを保ち、1回でおよそ30メートル飛ぶと推測されたということです。 研究グループは、一連の動きから「高度な飛行行動」に当たるとみています。 撮影した村松さんは、「魚からより遠くに逃げるため、こうした能力を持っているのではないか」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130208/k10015390251000.html

空飛ぶイカ(朝日)イカ、フライ30メートル 滑空生態解明、北大グループ
(朝日 2013年2月8日13時49分)

イカが海面から飛び出し、滑空するメカニズムを北海道大の研究グループが解明した。高度に発達した「飛行行動」だとして、ドイツの国際的な科学雑誌「マリンバイオロジー」で論文を発表した。

北大大学院水産科学院の大学院生村松康太さん(24)=海洋生態学=らは2011年7月、東京から東約600キロの北西太平洋で実習航海中、イカの群れに遭遇。村松さんと国際基督教大大学院研究員の関口圭子さんが写真撮影した。

100匹ほどが海から飛び出し、海面と平行に2~3秒間飛行。約30メートル先に着水した。外洋性のアカイカかトビイカの子どもとみられ、体長約20センチだった。連続写真を分析したところ、胴体にためた水を勢いよく吐き出して海面から飛び出し、空中で水を噴射し続けて加速。三角部分のひれと、腕と腕の間にある薄い膜を翼のように広げてバランスを保って滑空し、着水時はひれと膜をたたんで衝撃を小さくしていることがわかったという。

イカが水面から飛び出す目撃情報は世界各地にあったが、その「飛行」の仕組みを分析したのは初めてという。村松さんらは「マグロやイルカなどの襲撃から逃れる行動として高度に発達した可能性が高い」とみている。 【芳垣文子】

http://www.asahi.com/tech_science/update/0208/TKY201302080057.html

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北大大学院水産科学院は函館が所在地なのだが、さすが地元、函館新聞の記事が他紙より詳しいと思う――

イカが30㍍〝飛行〟 北大院生ら論文発表
(函館新聞 2013/02/08 23:47)

イカが海中からジャンプして着水するまでを連続撮影した写真を解析した結果、意図的に形態や姿勢を変化させながら〝飛行〟することを、北大大学院水産科学院の村松康太さん(24)=修士2年=らの研究グループが突き止めた。村松さんは「捕食者から逃げるために進化した行動と考えられる」と話している。

村松さんや、同大北方生物圏フィールド科学センターの山本潤助教ら6人が論文にまとめ、ドイツの海洋生物学の国際学術誌「マリンバイオロジー」電子版(5日付)に掲載された

2011年7月、同大練習船「おしょろ丸」が東京の東方沖約600㌔を航海中、村松さんが海中から飛び出す約100匹のイカの群れを2回目撃、カメラに収めた。全長約20㌢のアカイカかトビイカとみられ、飛行行動が「飛び出し」「噴射」「滑空」「着水」の4段階に分類できることが分かった。

村松さんによると、ヒレを外套膜(胴体)に巻き付けて腕も畳んで水の抵抗を受けにくくして飛び出す。水を漏斗(墨をはく口)から噴射し続け空中でも加速し、ヒレや腕、保護膜も広げすき間をなくして翼に似た形に。航空機のように先端をやや上向きにしてバランスを取って滑空。着水時はヒレを外套膜に巻き付け腕を畳み、先端をやや下げて抵抗をなくしていた。

水面から2、3㍍の高さを、少なくとも3秒以上、約30㍍移動したと推測される。時速は約40㌔という。村松さんは「イカは水中だけでなく、海鳥など空中にいる生物にもエネルギーを受け渡す役割を担っているのでは」と話す。遊泳能力が高いイカが飛行行動をするとみられ、スルメイカも飛ぶ可能性があるとしている。

http://www.hokkaido-nl.jp/detail.cgi?id=14586

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以下のナショナルジオグラフィックのニュースもまた詳しい。 こうして見ると大手新聞社の記事は雑なようだ。 特に、今回の写真の撮影は関口圭子博士(鯨類研究家)との共同撮影だが、ナショナル・ジオグラフィックのニュース以外にはその話はとんと出て来ない――

本当にイカは飛ぶ
(2012-2-8)

北海道大学・北方生物圏フィールド科学センターの山本潤・助教らの研究グループが、イカが水面から飛び出して着水するまでの一連の様子を連続写真で撮影することに成功した。詳細なイカの飛行行動を明らかにしたのは世界でも初めて

イカの飛行は2011年7月25日、北海道大学水産学部付属の練習船「おしょろ丸」で千葉県の東方約600キロメートルの北西太平洋を実習航海中に観察された。船首波で驚いたと考えられる約100匹のイカの群れが2回水面から飛び出し、着水までの様子を北海道大学大学院水産科学院(修士課程2年)の村松康太さんと国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科の研究員で、鯨類研究家の関口圭子博士が撮影した。

これらのイカは「アカイカ」か「トビイカ」とみられ、連続写真を解析した結果、飛行行動は次の4段階に分類できることが分かった。

1. 飛び出し
外套膜(がいとうまく)内に吸い込んだ水を漏斗(ろうと)と呼ばれる噴出口から水を勢いよく吐き出して、水面から飛び出す。このときの姿勢は、水の抵抗を小さくするように、ヒレを外套膜に巻き付け、腕もたたむ。

2. 噴射
水を漏斗から噴射し続けて空中でも加速し、さらに揚力を得るために、ヒレと腕、腕の間にある保護膜を“翼”のような形にする。空中の飛行速度は秒速8.8~11.2メートルに達する。

3. 滑空
水の噴射が終わると、腕とヒレを広げた状態で滑空する。ヒレや腕と保護膜の“翼“を使い、体を進行方向に向かってやや持ち上げた姿勢(ピッチ・アップ)で、バランスを取る。外套膜は緊張状態を保ち、体の前後(ヒレと腕)にかかる揚力に耐えて、空中姿勢を安定させている。

4. 着水
ヒレを外套膜に巻き付けて腕をたたみ、進行方向に対してやや下がった姿勢(ピッチ・ダウン)を取る。これにより着水時の衝撃を小さくさせている。

イカは海中では、捕食者などの接近を感じた際に、漏斗から水を何度も噴出し、できるだけ早く危険から逃避する。特に筋肉が発達した外洋性の数種類のイカは、勢いよく水面から飛び出すことが知られ、“イカが空を飛ぶ”として、世界各地で目撃されてきた。しかし単なる“水面からの飛び出し”なのか、本当に“飛ぶ”のかは不明だった。今回の研究で、イカは高度に発達した飛行行動を持つことが分かったという。

研究結果をまとめた論文は5日、ドイツの科学誌「Marine Biology」に掲載された。

http://www.nationalgeographic.co.jp/news/news_article.php?file_id=00020130208004
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イカフライ解説図

科学雑誌「マリンバイオロジー」(Marine Biology)、電子版でAbstract(要約)の掲載を確認した ⇒ http://link.springer.com/article/10.1007%2Fs00227-013-2169-9
論文は6名による共同論文。

Marine Biology — Oceanic squid do fly

K. Muramatsu, J. Yamamoto, T. Abe, K. Sekiguchi, N. Hoshi, Y. Sakurai

Abstract

Using powerful jet propulsion, some squid species are able to exit the water and become airborne; this is a common behavior seen throughout the world’s oceans. However, direct scientific observation is rare, with most studies relying on anecdotal evidence and limited photographic documentation. Here, we examine the flying behavior of young oceanic squid (Ommastrephidae) observed in sequential photographs taken in the Northwest Pacific (35o34.0′N, 146o19.3′E) on July 25, 2011. We define four phases in the flight process: launching, jetting, gliding and diving. During flight, squid actively change their aerial posture and attitude depending on the flight phase and their distance from the water. The present study demonstrated that flight of squid is not simple gliding after incidental exit from the water, but involves jet propulsion, generation of lift force and control of different body postures in different flight phases, which have evolved to enhance escape from predators.
MarineBiology_SquidDoFly
AFPで配信された記事をもとに海外英字紙が記事を掲載している。 その中からイギリスのDaily Telegraph (デイリー・テレグラフ)の記事を紹介――

Telegraph_SquidCanFly100ftSquids ‘can fly 100 feet through the air’
(The Telegraph 08 Feb 2013)

The oceanic squid can fly more than 100 feet through the air at speeds faster than Usain Bolt if it wants to escape predators, Japanese researchers said.

The mollusc propels itself out of the ocean by shooting a jet of water at high pressure, before opening its fins to glide at up to 11.2 metres per second, Jun Yamamoto of Hokkaido University said.

Olympic Gold medallist Bolt averaged 10.31 metres a second when he bagged gold in London last year.

“There were always witnesses and rumours that said squid were seen flying, and we have proved that it really is true,” Yamamoto told AFP.

Yamamoto and his team were tracking a shoal of around 100 oceanic squid in the northwest Pacific 600 kilometres (370 miles) east of Tokyo, in July 2011.

As their boat approached, the 20 centimetre (8-inch) creatures launched themselves into the air with a powerful jet of water that shot out from their funnel-like stems.

“Once they finish shooting out the water, they glide by spreading out their fins and arms,” Yamamoto’s team said in a report.

“As they land back in the water, the fins are all folded back into place to minimise the impact.”

A picture researchers snapped shows more than 20 of the creatures in full flight above the water, droplets of water from their propulsion jet clearly visible.

The squid are in the air for about three seconds and travel upwards of 30 metres, said Yamamoto, in what he believed was a defence mechanism to escape being eaten.

But, he added, being out of the ocean opened a new front, leaving the cephalopods vulnerable to other predators.

“This finding means that we should no longer consider squid as things that live only in the water. It is highly possible that they are also a source of food for sea birds.”

The study was published by German science magazine Marine Biology this week.

Source: AFP

http://www.telegraph.co.uk/earth/wildlife/9856840/Squids-can-fly-100-feet-through-the-air.html

更新・記事追加 2013-11-17

このブログ投稿記事に出てくる関口圭子(せきぐち・けいこ)博士(鯨類研究家)がNHKラジオ第1の11月16日の深夜の番組「オトナの生き方」に出演―「南極へ、北極へ クジラの生態観察35年」―が放送されたようだ。 NHKラジオ第1の「ブログR1」に番組の概要と関口さんの写真が掲載されていたのでクリップ。 また、さらに調べてみると、2007年8月6日の朝日新聞電子版「ニュース特集>地球環境」欄に「氷ない北極海、コククジラ襲うシャチ」という記事が掲載されており、関口さんが撮影した「若いコククジラを襲うシャチ」の写真も載っていた。 それもクリップして掲載――

オトナの生き方「南極へ、北極へ クジラの生態観察35年」
関口圭子さん(鯨類学者)

(NHKラジオ第1 11月16日(土)深夜 「ラジオ深夜便」

関口圭子博士(鯨類学者)の写真_オトナの生き方「南極へ、北極へ クジラの生態観察35年」関口圭子さんは56歳。数少ない日本の鯨類学者の中でも珍しい生態観察の専門家です。南氷洋での目視調査だけでも14回におよび、ミンククジラの生息数の推計などに生かされています。

関口さんは少女時代、手塚治虫のテレビアニメで見た少年とイルカが会話をするシーンに感動し、この道に入ったといいます。

夫は大学時代に知り合った天文学者で、共にハワイで研究生活を続けた時期もあったといいます。

番組では関口さんに、海で出会った生き物たちについてや、夫と二人三脚で暮らしてきたエピソードなどをお話しいただきます。)

http://www.nhk.or.jp/r1-blog/050/171850.html

当ブログ掲載のナショナルジオグラフィックのニュース(2012-2-8)では「国際基督教大学大学院アーツ・サイエンス研究科の研究員で、鯨類研究家の関口圭子博士」となっているが、下記の朝日新聞の記事によると関口圭子さんはハワイ大学ヒロ校の客員教授(鯨類学)もなさっていたようだ――

氷ない北極海、コククジラ襲うシャチ
(朝日 2007年08月26日)

北緯68度。ベーリング海を北上、北極海を航海中の北海道大水産学部の練習船「おしょろ丸」(1383トン)で、関口圭子・ハワイ大ヒロ校客員教授(鯨類 学)は今月6日、海面に大きな水しぶきが上がるのを目撃した。直後に海が赤く染まった。シャチが、コククジラを襲った瞬間だった。

氷ない北極海、コククジラ襲うシャチ_関口圭子・ハワイ大ヒロ校客員教授(鯨類学)

若いコククジラを襲うシャチ。クジラの下あごを狙って水面下から突き上げると、水しぶきとともに鮮血が飛び散った=米・アラスカ沖のチュクチ海で

コククジラは繁殖地のカリフォルニア半島付近を回遊、夏場にエサを求めて北上するとされるが、北極海での観察例はほとんどない。だが、関口さんは10日間に約200頭のコククジラを見た。「氷が減り、北極海に入りやすくなっているのかもしれない」と関口さん。

山口篤・北大助教は北太平洋に生息するネオカラヌスという動物プランクトンを水深50メートルほどのこの海で見つけた。ここで育ったとは考えにくく、「南からの流れに乗り、分布域を拡大しているのでは」とみる。北極海の海氷面積は今夏、観測史上最小を記録した。

http://www.asahi.com/special/070110/TKY200708240386.html

財団法人「鯨研通信」第446号(2010年6月) http://www.icrwhale.org/pdf/geiken446.pdf によると――関口圭子さんは2009年12月9日に塩釜港を出港したSOWER調査船「海幸丸」に12月23日にインドネシア・バリ島沖合で乗船し、翌年1月7日から2月7日までの間、国際調査員4名の調査団長として南極海での鯨調査を行っている。 海幸丸は2010年3月11日に塩釜港に帰港しているが、関口さんら国際調査員4名はインドネシア・バリ島沖合で下船している。 船に乗り世界を飛び回って、鯨の研究をやっておられるようだ――

「鯨研通信」第446号(2010年6月)_関口圭子博士(鯨類研究家)かと思うと、鯨グッズ展に参加していたり、まさに神出鬼没――

鯨グッズ展2012年_関口圭子博士(鯨研究家)鯨グッズ展2012年_関口圭子博士(鯨研究家)2 鯨グッズ展2012年_関口圭子博士(鯨研究家)3

関口圭子さんは56歳ということだが、私は二つ上の58歳で、NHKR1のブログに出てくる「関口さんは少女時代、手塚治虫のテレビアニメで見た少年とイルカが会話をするシーンに感動し、この道に入ったといいます..」を理解できる世代だ。

まだ小・中学生だった頃にみた手塚治虫の漫画やテレビアニメは夢がありまたインパクトがあった。 日本はロボット研究・開発で世界の最先端を行っているが、日本のロボット開発・研究をしている大学教授、学者、研究家の多くが手塚治虫の「鉄腕アトム」の影響を受けているという。 鯨の学者さんも手塚インパクトを受けた世代だったか~、ワカル、ワカル…

この投稿記事 イカフライ ⇒ イカ天 ⇒ クジラ と、本当に話が「飛んで」しまった….

海上滑空⇒空飛ぶイカ、これを「イカ・フライ」というのか!? イカフライが30m飛ぶなら、イカ天は天まで届く~」への2件のフィードバック

  1. 色々な、恐怖及びび悲惨な出来事がある時に、非常にホットなニュースに接し、
    感動しました!!!
    貴重jな情報提供して頂き、有難うございます。

    • 貴重なコメントありがとうございます。 本当に貴重なコメントです。 「感動」の言葉にこちらが感動しました。 というのは、このブログ開設してから1年と18日たっています、この時点で。 で、閲覧数は596,192あります。 59万6千以上の閲覧数で、寄せられたコメント数は35です。 だいたい1万7千の閲覧数で一個コメントがある計算になります。 「そんなもんなの~」と声が聞こえてきそうです。 でも、以前やっていたブログよりましです。 以前のブログは1年で30万アクセス数ありましたが、コメント投稿は4個でした。 7万5千閲覧で一個のコメント! という経験があるもので、正体不明のこのブログに35人もの方がコメントを寄せてくれているのは「感動」ものです。 暇がある時に、たまに寄って、このブログの投稿記事を読んで頂ければ幸いです。 気に入った記事があった時は「いいね」でも、たまにクリックして頂ければ幸いです…….. Hashigozakura

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