うつ病発症メカニズム解明⇒思春期のストレスがうつ病の一因に|名城大学・鍋島俊隆特任教授らの研究成果

「うつ」はどうして起きるのか? 名城大・鍋島俊隆特任教授らの研究グループによる「うつ病発症のメカニズム」の研究成果が発表された。 思春期に受けたストレスが成熟後の精神疾患につながる仕組みの一端をマウスを使った実験で解明したという。 発症の仕組みが分かり、新たな治療薬が開発される可能性が出てきた。 この共同研究成果は18日付の米科学誌サイエンスに掲載された、電子版では概要が掲載されている。 以下、この件を報じたNHKと日経の報道――

うつ病の発症メカニズム解明1うつ病の発症メカニズム解明2うつ病の発症メカニズム解明3うつ病の発症メカニズム解明4うつ病の発症メカニズム解明
(NHK 1月18日6時42分)

成長期のマウスにストレスを与えると、脳の活動を調節する遺伝子の働きが低下し、認知力の低下などにつながるとする、うつ病発症のメカニズムを名古屋市の大学などの研究グループが発表し、新たな治療薬の開発に役立つとしています。

研究を行ったのは、名古屋市にある名城大学の鍋島俊隆特任教授と名古屋大学などからなる研究グループです。

研究グループでは、うつ病などを発症しやすくしたマウスを、集団と一匹ずつ隔離した場合に分けて、それぞれヒトの思春期に当たる時期から3週間にわたって飼育しました。
そうしたところ、集団飼育したマウスには異常は見られなかったものの、隔離したマウスには、▽認知力が低下する、▽動きに活発さがなくなるなど、うつ病や統合失調症の症状が見られ、脳を刺激する「ドーパミン」という物質を作る遺伝子の働きが大幅に低下していたということです。

こうした症状は、集団飼育に戻しても治らなかった一方で、飼育の前に、あらかじめストレスで分泌されるホルモンの働きを抑えておくと現れなかったということです。

こうしたことから研究グループは、ストレスによって脳の活動を調節する遺伝子の働きが低下してうつ病などが発症するというメカニズムが初めて分かったとしています。
鍋島特任教授は、「発症の仕組みが分かり、新たな治療薬の開発に役立つ」と話しています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130118/k10014881231000.html

思春期のストレスがうつ病の一因に 名城大、マウスで解明
(日経 2013/1/18 4:00)

名城大学の鍋島俊隆特任教授らは、思春期に受けたストレスが成熟後の精神疾患につながる仕組みの一端をマウスを使った実験で解明した。精神疾患の遺伝要因を持つマウスを成長期に隔離してストレスを与えながら育てたところ、意思決定や注意力に関係する脳の神経回路に異常が起きた。

名古屋大学や京都大学などとの共同研究成果。18日付の米科学誌サイエンスに掲載される。

うつ病などの精神疾患は成長・発達期の心理的ストレスなども原因とされるが、発症する詳しい仕組みは不明だった。

研究チームは精神疾患の発症に関係するとされる遺伝子を持つマウスを人為的に作製。人間の思春期にあたる生後5~8週に集団から隔離して飼育した。音に過敏に反応したり、意欲が低下したりするなどの症状が表れた。集団で飼育した場合はマウスの行動に異常はなかった。

発症したマウスは血液中のストレスホルモンの量が増えていた。注意力や意思決定に関係する神経回路で、神経伝達物質のドーパミンが減り、働きが鈍っていることがわかった。一方、幻覚や妄想にかかわるとされる脳の部分では、刺激を受けるとドーパミンが増えた。

http://www.nikkei.com/article/DGXNZO50710740Y3A110C1CR8000/

早速、米科学誌サイエンス(Science)の電子版に行って確認して見たが、以下のように要約(Abstract)が掲載されていた――

うつ病の発症メカニズム解明_ScienceScience 18 January 2013:
Vol. 339 no. 6117 pp. 335-339
DOI: 10.1126/science.1226931

“Adolescent Stress―Induced Epigenetic Control of Dopaminergic Neurons via Glucocorticoids”

Minae Niwa1, Hanna Jaaro-Peled, Stephanie Tankou, Saurav Seshadri, Takatoshi Hikida, Yurie Matsumoto, Nicola G. Cascella, Shin-ichi Kano, Norio Ozaki, Toshitaka Nabeshima, Akira Sawa

Abstract
Environmental stressors during childhood and adolescence influence postnatal brain maturation and human behavioral patterns in adulthood. Accordingly, excess stressors result in adult-onset neuropsychiatric disorders. We describe an underlying mechanism in which glucocorticoids link adolescent stressors to epigenetic controls in neurons. In a mouse model of this phenomenon, a mild isolation stress affects the mesocortical projection of dopaminergic neurons in which DNA hypermethylation of the tyrosine hydroxylase gene is elicited, but only when combined with a relevant genetic risk for neuropsychiatric disorders. These molecular changes are associated with several neurochemical and behavioral deficits that occur in this mouse model, all of which are blocked by a glucocorticoid receptor antagonist. The biology and phenotypes of the mouse models resemble those of psychotic depression, a common and debilitating psychiatric disease.

http://www.sciencemag.org/content/339/6117/335.abstract?sid=0c8248f4-d768-4f64-b138-4ab3580910d5

うつ病といえば、ここ数年問題になっているのが“現代型うつ”というやつだ。 クローズアップ現代で2011年11月22日に「“現代型うつ”にどう向きあうか」というのが放送されたが、それまで認識がなかったが“現代型うつ”の現状を番組でみて驚いた。 番組の概要はこうなのだが――
“現代型うつ”にどう向きあうか1“現代型うつ”にどう向きあうか2今、これまでの概念では捉えきれない「うつ病」が増加している。不眠に悩む、職場で激しく落ち込むといった「うつ」の症状を示す一方で、自分を責めるのではなく上司のせいにする、休職中にも関わらず旅行には出かける…。いわゆる”現代型うつ”だ。20~30代の若者を中心に増え続けているとされ、従来の治療法が効きにくいことから医療現場は混乱している。さらに企業では休職者が増え、経営を圧迫。中には「怠け」と判断し、解雇したところ裁判で訴えられるケースも出ている。現代型うつに翻弄される医療現場と企業の実態に加え、最新の治療法も取材、対応策を考える….  http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku/detail_3124.html

今回の研究成果によって新薬が開発され、“現代型うつ”も何とかならないものだろうか…

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