格安スマホは本当に安いのか?

格安スマホは本当に安いのか?> 最近、家電量販店などでよく目にするのが「格安スマホ」と呼ばれる価格の手ごろなスマートフォン(スマホ)です。そうしたスマホが登場したのは、スマホの料金に不満を持つ利用者が増えていることが背景にあります。従来型の携帯電話からスマホに替えたら毎月の料金が跳ね上がったという方は多いでしょう。しかも携帯電話大手3社の料金プランはほぼ横並びです。格安スマホの登場は、そうした日本の携帯市場の寡占体制に一石を投じることができるのでしょうか。

格安スマホは本当に安いのか?(日経・わかりやすい時事解説)画像1スマホの料金が上がる理由はいくつかあります。まず「パケット料金」と呼ばれるデータ通信料金が通常の7ギガバイトのプランで6000円近くします。従来の携帯電話の通話料は基本料金に一定の無料通話分が含まれていましたが、スマホの場合は30秒ごとに20円かかります。つまり通話の多い人ほど割高になる計算です。端末の支払代金には毎月、割引がありますが、合計の月額料金は6000円から7000円くらいしてしまいます。

「MVNO」が市場を拡大

一方、格安スマホですが、料金が安いといっても色々なパターンがあります。まずは端末自体が安い例です。人気の高いスマホは端末価格が5万円くらいしますが、最近は「HUAWEI(華為技術)」といった中国製のスマホが出回るようになりました。こうした端末は従来価格の半分くらいで売られる場合が多く、毎月の支払いがその分、安くなるというわけです。

それから「MVNO(仮想移動体通信事業者)」と呼ばれる新しい通信会社の登場が格安スマホの市場を拡大しています。MVNOは名前の通り、自社では携帯回線を持たず、他社から回線を借りてサービスを行う事業者です。代表例が日本通信で、電話番号情報などを記録したICチップの「SIMカード」を販売しています。今年8月からはアマゾン・ドット・コムと組んで、海外製の低価格スマホと同社のSIMカードをネットで簡単に買えるようにしました。

ただMVNOが提供するSIMカードを利用するには、SIMロックがかかっていない端末が必要です。プリペイド型のSIMカードが普及している海外では、SIMロックフリーの端末が普通に売られていますが、防犯上の理由からプリペイド型の端末があまり売られていない日本では、SIMロックフリー端末を入手するのはなかなか困難なことです。日本の携帯電話契約数の中でMVNOの比率が3%程度にとどまっているのは、他社のSIMカードを使える端末が少ないからMVNO契約数のグラフ_格安スマホは本当に安いのか?(日経・わかりやすい時事解説)画像といってもよいでしょう。

このため総務省は携帯大手3社による日本の寡占状態を崩すにはMVNOの普及が重要だと考え、一定の契約期間が経過した端末についてはSIMロックを解除するよう携帯各社に義務づけました。というのも総務省は4年前からSIMロックを自主的に解除するよう携帯各社に指導してきましたが、それに従ってきたのはNTTドコモくらいで、ドコモも米アップルのiPhone(アイフォーン)についてはSIMロックの解除を認めていなかったからです。

ワイモバイルは月額約3000円

ワイモバイルのエリック・ガン社長_格安スマホは本当に安いのか?(日経・わかりやすい時事解説)画像 それからもう1社、格安スマホを提供する新しい通信会社として登場したのがソフトバンクグループのワイモバイルです。ソフトバンクが買収したイー・アクセスが同じグループ傘下のウィルコムを統合し、新たに社名を変えた会社です。社名のロゴの「Y!mobile」は、もともとヤフーの日本法人がイー・アクセスを買収して通信事業に進出する計画だったことから、ヤフーの「Y!」の字を使っています。

ワイモバイルが提供する格安スマホの特徴は、通話料込みで月額約3000円という値段を提示したことでしょう。MVNOが提供する格安スマホの月額料金はそれより少し安いですが、通話料については大手3社と同様に30秒20円の料金がかかります。ワイモバイルはウィルコムが提供していた「だれとでも定額」の料金プランを踏襲する形で、1回の通話が10分以内なら月300回までは無料という形にしました。

同社がこうした低価格戦略を打ち出した背景には、これまで扱ってきた端末のメニューが微妙に影響しています。つまり「イー・モバイル」のブランドで携帯端末を販売してきたイー・アクセスの主力商品は「ポケットWiFi」と呼ばれるデータ通信専用の端末で、ウィルコムが販売してきたのは通話が主体のPHS端末でした。そこで第4位の携帯電話会社として市場で認知されるためにはスマホの販売を増やす必要があったわけです。逆にいえば、大胆な低価格政策がとれたのも、これまでスマホを一部しか扱ってこなかったため、既存のビジネスを犠牲にしなくてすむからです。

では、こうした格安スマホは大手3社の端末やサービスに比べ、本当に安いといえるのでしょうか。

実は大手3社も色々な批判にこたえるため、最近、様々な新しい料金プランを投入しています。その一つがデータ通信量の多寡に応じてパケット料金を選べるというものです。ドコモには以前から3ギガバイトの低価格プランがありましたが、今度は2ギガバイトのプランも設け、割安感を出そうとしています。

それからもう一つの新しいプランがかけ放題の通話プランです。ワイモバイルの場合は1回10分以内で月300回という制限がありますが、大手の場合はそうした制限がありません。その代わり毎月の料金は2700円プラス消費税ということで、それなりの値段になっています。興味深いことに、この通話定額プランも大手3社はいずれも横並びです。

高齢者や主婦には高ハードル?

携帯各社はこれまで定額通話プランに否定的でしたが、ここへ来て方針を転換した背景には、高速データ通信規格の「LTE」を使ったIP電話「VoLTE(ボルテ)」の実用化が影響しています。回線交換方式と呼ばれる従来の携帯電話は従量課金でしたが、IP電話が主力になれば、通話もいずれ定額が当たり前になるからです。もっといえば、IP電話がデータ通信の定額分に入らないよう、別建ての料金プランを今から定着させておこうという狙いもあるといえるでしょう。

こう見てくると「携帯大手3社のスマホは割高で、MVNOやワイモバイルなどが提供する格安スマホは安い」とは一概にはいえなくなってきます。特にMVNOの場合は自前の携帯ショップを持たず、SIMカードの挿入なども自分で対応しないとなりません。また「APN(アクセス・ポイント・ネーム)」と呼ばれるデータ接続のための端末設定も自分でする必要があります。技術にあまり詳しくない高齢者や主婦などにはハードルが高いといえるでしょう。

端末価格の問題もあります。総務省の新方針が出たことで、今後は携帯大手3社のショップに行けば、自分が現在使っている端末のSIMロックを有償で外してもらえるようになります。しかし最初からSIMロックフリーの端末を入手しようとすると、携帯会社の割引制度が受けられない分、端末価格は高くなってしまいます。MVNOは毎月の通信料金は安くても、端末にかかる代金を毎月にならせば、結局は大手携帯会社の料金プランとあまり変わらなくなってしまうかもしれません。

それから人気の高いアップルのiPhoneを扱っているのは今のところ大手3社だけです。もちろんアップル自身がSIMロックフリーの端末を発売していますが、先に述べた理由で値段はそれなりに高くなっています。iPhoneは海外でも売られているため、香港など海外の安い店で購入してくることも考えられますが、国内と海外では使っている周波数帯が微妙に異なるため、注意が必要です。

世界におけるMVNOの普及状況の図結果として、格安スマホをお勧めできるのは恐らく以下のような利用者になるでしょう。まず(1)通話はあまりしないか、従来の携帯電話を別に持っているので、スマホはデータ通信専用として使いたい(2)携帯端末の設定などは自分でできるので、専門の携帯ショップは必要としない(3)海外に頻繁に行くので、海外では現地のSIMカードを挿入して使いたい(4)新しい携帯端末に飛びつくより、同じ端末を長く愛用したい(5)同じSIMカードを複数の端末で使い回ししたい(6)国内を留守にする機会が多いので、日本にいない間の通信料金はなるべく安くしたい――。つまり、いずれもスマホにある程度熟知した利用者が対象になるといえるでしょう。

欧州やアジアでは目的ごとに使い分け

こうした需要は日本国内ではまだそれほどありませんが、携帯電話の世界共通規格である「GSM」や「W-CDMA」が普及し、プリペイド方式のSIMカードが広く出回っている欧州やアジア地域では、目的に応じて携帯端末やSIMカードを使い分ける習慣が根付いています。2020年に開かれる東京五輪には、そうした海外の利用者も多数、日本に訪れることが予想されるため、携帯電話サービスの様々なサービスメニューを今から用意しておくことが重要でしょう。

さらにSIMロックのかかっていない端末が今後、主流になっていけば、日本の端末メーカーも国内の携帯会社にとらわれない自由な端末の開発や販売が可能になります。ガラパゴス市場といわれ、これまでは国内でしか売れなかった端末を海外に販売していくこともできます。そう考えると、格安スマホの登場は、高止まりしていた国内の携帯料金の値下げを促すだけでなく、日本の携帯市場をオープンにしていくという効果も期待できるに違いありません。

格安スマホを扱う事業者は、値段の安さを武器に、主婦などスマホの新しい利用者層を掘り起こそうとしていますが、利用開始までの手続きの難しさを考えると、必ずしも初心者に向いているとはいえません。その意味では、格安スマホを日本の利用者にどれだけ定着できるかが、今後の市場拡大を促す重要なポイントだといえるでしょう。

(ソース: 日経・わかりやすい時事解説「格安スマホは本当に安いのか」(2014/8/31 7:00)
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO76335410Z20C14A8000000/

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