ドコモ「ポータブルSIM」、「何でもLTE」の野望

NTTドコモは6月10日、プレスリリースで「新たな小型認証デバイスを開発」と発表した――「ポータブルSIM」がそれである。「ポータブルSIM」を使えば仕事用とプライベート用で2台のスマホを常時持ち歩いている人なら、スマホを一台に集約できる。ポータブルSIMを仕事用とプライベート用と目的に応じて複数個用意しておけば、ビジネス目的で使っていたスマホがプライベート用のポータブルSIMをかざした瞬間から私用に切り替えて使えるようになる。

NTTドコモ_ポータブルSIM_画像ポータブルSIMの力を借りれば1つのLTE回線を使い回せるようになる、狙いはそこにあるようだ。 以下、日経の記事をクリップ――

ドコモ、謎の新端末 透ける「何でもLTE」の野望
(日経 2014/7/16)

NTTドコモが、次の一手として着々と準備を進めている戦略商品がある。手のひらサイズの認証端末「ポータブルSIM」がそれだ。

世界で初めて開発に成功――。そんな触れ込みで6月にプレスリリースを発信した割には、白い箱型の本製品は一見地味で何がすごいのか分かりにくい。しかし自動車やテレビ、ノートパソコン、携帯型ゲーム機など、世の中のありとあらゆる機器をネット接続へといざなう壮大な構想の中核を担うものだ。ドコモの思惑はポータブルSIMによる、携帯電話業界の競争軸を変える「ゲームチェンジ」。その通りに事が運べば、携帯電話業界の未来は激変する可能性がある。

外付けSIMカードでどんな機器もネット対応に

NTTドコモ_ポータブルSIM_画像2「スマートフォン(スマホ)から削れるものをどんどん削っていったら、こんな端末が出来上がった」。NTTドコモの照沼和明移動機開発部長は、ポータブルSIMの開発コンセプトをこう語る。彼がポケットから取り出した実機をまじまじと眺めると、大きさは名刺入れより一回り小さい。モバイルルーターに似ているが、電源ボタンと2つの発光ダイオード(LED)のインジケーターがあるだけでいったい何ができる装置なのか謎めいている。

ポータブルSIMを一言で表すなら、スマホやタブレット(多機能携帯端末)に挿してある利用者の契約情報の入ったICカード「SIMカード」を独立した別の端末に仕立て、様々な機器との連携機能を持たせたものだ。これをスマホのほか、自動車やテレビなどにかざすだけで、LTE回線で通信できるネット機器へと変身させる魔法のボックスなのだ。

もちろんかざす機器側に改修が必要になるが、「技術的なハードルはそれほど高くない」(照沼部長)という。ポータブルSIMと機器間は近距離無線通信技術である「NFC」でまずひも付け、その上でSIMカードの情報を「ブルートゥース」で送る仕組み。5~30秒ごとに認証を行うため、ポータポータブルSIMの仕組み_図解ブルSIMは機器のそばに置いておく必要がある。ネット接続はそれぞれの機器側に用意したLTEの回路が担うことになる。いずれの通信技術も成熟していることから、現在通信機能を持たない機器に組み込むことはたやすい。

ポータブルSIMにはLTEの契約情報のほか、画面やセキュリティーなどの設定情報、ウェブサイトのID/パスワード一覧などを併せて記憶させておける。対話アプリ「LINE」が電話番号でスマホ1台ずつを識別しているように、ポータブルSIMをかざした自動車やテレビなどを含め「1台の電話機」として扱われる。もちろん、ドコモ利用者がスマホで使っているドコモ独自の様々なサービスも利用可能になる。

では、どんなメリットがあるのか。照沼部長は現在の「1回線=1端末」の概念から解放されることだとする。利用者に、端末と回線を組み合わせ使い回す自由を与えるものだと胸を張る。

端末や回線の使い回しが自在に

たとえば仕事用とプライベート用で2台のスマホを常時持ち歩いている人なら、スマホを一台に集約できる。ポータブルSIMを仕事用とプライベート用と目的に応じて複数個用意しておけば、ビジネス目的で使っていたスマホがプライベート用のポータブルSIMをかざした瞬間から私用に切り替えて使えるようになる。

出張先のホテルやネットカフェに置かれたパソコンやタブレット。こうした共有機器の利便性も向上しそうだ。デスクトップなどが使い慣れた環境でないため、借りても仕事がはかどらないことが多いが、ポータブルSIMの活用でいつものオフィスにあるパソコンのような環境で仕事ができるようになる。

ポータブルSIMの概念が国内や海外でも定着すれば、通信会社の壁を超えた端末の使い回しも夢ではなくなる。同じiPhoneでも挿すSIMカードがドコモとソフトバンクとでは受けられるサービスが異なる。同じように夫が使うときはドコモに、妻のときにはKDDIにつなぐ――。そうなれば確かに利便性は高まりそうだ。

新たな需要を開拓する余地も大きい。自動車業界は車のカーナビやセンサーをネットに常時接続する「テレマティクス」を10年以上前から推進するが、全車がネットにつながるのはまだまだ先。車専用の通信回線を契約し、通信機器を車内に設置しなければならないことが普及のネックになっている。

NTTドコモ_ポータブルSIM_画像3ポータブルSIMの力を借りれば、1つのLTE回線を使い回せるようになり、テレマティクス導入のハードルは一気に下がる。

ドコモの本気度は、異例の開発体制からもうかがえる。従来ドコモの製品やサービスは通常、神奈川県横須賀市にある自前の研究開発拠点で完璧に作り上げるまで門外不出だった。ところが今回は試作品の段階で発表し、ポータブルSIMの仕組みを応用したサービスのアイデアを社外から一般公募する催しを開くことを決めた。

ドコモがここまでポータブルSIMに力を入れる理由は、2013年度末の携帯電話契約数が1億4413万件となり、人口普及率でみれば113.4%に達したことだ。産業として成熟期に入った今、自社回線の利用拡大をどう図るかが最重要の経営課題になっている。同様の悩みは世界の通信事業者も抱えている。

苦い経験がドコモを駆り立てる

後押ししているのがかつての苦い経験だ。携帯型ゲーム機「プレイステーション・ヴィータ」に第3世代携帯電話(3G)モデルが用意されたことから複数の料金プランをわざわざ用意したが、大半が無線LANモデルを選択してしまい不発だったのだ。いつでもどこでも遊べる利便性は間違いなく3Gモデルに軍配が上がっていたが、通信料の負担増に対する根強い抵抗感は解きほぐせなかった。同じ現象がタブレットでも起きている。Wi-FiモデルとLTEモデルをラインアップするが、Wi-Fiモデルを好んで買っていく消費者ばかりだ。

ポータブルSIMは、ドコモにとって劇薬になる可能性もある。本来2回線契約してくれるかもしれない消費者が1回線で済ますようになれば、契約数でKDDIやソフトバンクに後れを取りかねない。現在携帯電話販売の最前線では、1回線でも多く契約を集めようと、使いもしないデジタルフォトフレームなどを半ば強引に消費者に売りつけてでも回線数増を競う「悪習」が横行しているからだ。

ただ裏返せば、数より質をとる作戦を先んじて行うことでゲームのルールを自らチェンジできる可能性も秘めている。契約する回線数は増えなくてもいい。LTE回線の利用機会を増やせれば長期的にみてパケット収入の増加につながるからいいではないか――。ポータブルSIMにこんな思いを込めている。最大手ドコモの新たな一手が、かつての「iモード」のようなドコモ主導のエコシステムの構築に向けた小さい一歩になるのかもしれない。

照沼部長は「ポータブルSIMは、日本のみならず世界中に対応機器を増やさないと意味のない技術。狭い世界にとどめず、早期に構想を公開して幅広い知見を得ることで普及を図る方が得策だと考えた」と狙いを明かす。携帯電話サービスの国際的な業界団体GSMアソシエーション(GSMA)でも詳細技術を開示し、採用を積極的に働きかけている。スマホを始めとする対応機器の開発も同時に促す。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK14H09_U4A710C1000000/

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