中国防空圏(中国軍10年越しの宿願)は原案を覆し膨張して設定された。軍総参謀部、習近平総書記と中国共産党最高指導部の対日強硬論がその背景にある…

中国防空圏、原案覆し膨張|強硬論受け、九州沖基点> 中国が昨年11月、東シナ海に突如設定した防空識別圏、実は10年越しの構想のものだった。その原案はもっと控えめで、領海基線から200カイリの排他的経済水域(EEZ)を目安としていており、200カイリ線より中国側にあり、日本が主張する日中中間線付近まで縮小すること提案されていた。 防空識別圏設定は中国軍の長年の宿願であり、それは2001年4月、南シナ海の公海上空で中国軍のF8戦闘機と米軍の電子偵察機EP3が空中接触し、中国機のパイロットが死亡した事件に端を発する。 原案を覆し、九州から約130キロの地点まで突き出した中国の防空識別圏は、軍総参謀部や習近平(シーチンピン)総書記を含む中国共産党最高指導部の裁可を経る中で強まった対日強硬論の結果のようだ――今日(1月12日)の朝日新聞朝刊は1面と2面でこの背景をスクープしている。

以下に、朝刊1、2面のスクープ記事をクリップして掲載。 その後に日経記事「中国防空圏、対応揺れる米国の事情(真相深層)」をクリップして掲載――

中國防空圏、原案覆し膨張(朝日新聞2014年1月12日)朝刊1面記事

中国防空圏、原案覆し膨張
強硬論受け、九州沖基点
(朝日新聞朝刊2014年1月12日1面記事)

中国が設定した防空識別圏(図解)昨年11月に中国が東シナ海に設定した防空識別圏=キーワード=は、中国の領海基線から200カイリ(約370キロ)を範囲設定の目安とした軍研究機関の原案を採用せず、日本の九州沖合に寄せる形で範囲を拡大していたことが分かった。日本に対する習近平(シーチンピン)政権内の強硬論が反映されたものとみられ、防衛上の実務的な要請よりも政治的な意図が強くにじむ内容となっていた。▼2面=構想10年越し

複数の中国軍関係者や軍事研究者が朝日新聞の取材に対して明らかにした。

原案は昨年5月、空軍の幹部養成機関であり重要な研究機関を兼ねる空軍指揮学院(北京市)が軍上層部に提出。具体的な地図を盛り込んでおらず、範囲については領海基線から200カイリの排他的経済水域(EEZ)を目安としていた。さらに、実現が難しければ200カイリ線より中国側にあり、日本が主張する日中中間線付近まで縮小することも提案していた。

範囲策定の背景について、軍総参謀部の元幹部は「敵機を察知し、中国の領空に到達するまでに緊急発進で対応するには、少なくとも20分前後の時間を確保する必要がある。戦闘機の時速から計算して、約330キロの距離を確保するというのが防衛上の合理的なニーズだ」と話す。

だが、半年後の昨年11月23日に中国国防省が公表した防空識別圏は、東端が中国の200カイリ線を大きく越えて九州西岸側へ張り出していた。この点について、同省は朝日新聞に「東端は日本の九州から約130キロの地点にある。日本の防空識別圏が中国大陸に最も接近している地点も約130キロだ」と回答した。

中国側は防空識別圏の設定について「いかなる特定の国も対象にしていない」(外務省報道官)と繰り返してきた。だが、日本の防空識別圏が中国から最も近い地点で浙江省の沿岸から約130キロにあることから、日本への対抗措置として原案を修正したとみられる。

さらに、原案には航空機に対する飛行計画(フライトプラン)の事前提出要求は盛り込まれていなかった。だが、公表された際は領空に向かってくる航空機だけでなく、防空識別圏を横切るだけの航空機もフライトプラン提出の対象としていた。

今回、原案が修正された詳細な経緯は明らかになっていない。ただ、軍総参謀部だけでなく、習総書記を含む中国共産党最高指導部の裁可を経る中で、対日強硬論が強まったことがうかがえる。 (北京=林望、倉重奈苗)

◆キーワード <防空識別圏> 海洋に接する国・地域が防空のため独自に設定できる空域。領空(沿岸から約22キロの領海上空)よりも外側に張り出して設定されることが多い。領空に向かって空域内を飛ぶ航空機には飛行計画の事前提出が求められる。事前通告なしに空域内に侵入した航空機は、戦闘機による緊急発進(スクランブル)の対象となる。

中國防空圏、構想10年越し(朝日新聞2014年1月12日)朝刊2面記事中国、構想10年越し 
防空圏、米軍機との事故契機 
(朝日新聞朝刊2014年1月12日2面記事)

■ 日本の尖閣国有化影響

中国防空識別圏をめぐる経緯(年表)中国が昨年11月に東シナ海に設定した防空識別圏は軍の長年の宿願だった。習近平(シーチンピン)体制の下で一気に実現に至った背景には、日本の尖閣国有化で国内の強硬論が勢いづいた事情がある。中国側の運用能力は評価が割れるが、着実に経験を積んでいる様子がうかがえる。▼1面参照

複数の政府系研究機関の幹部によると、中国による防空識別圏設定の発端は10年以上前にさかのぼる。2001年4月、南シナ海の公海上空で中国軍のF8戦闘機と米軍の電子偵察機EP3が空中接触し、中国機のパイロットが死亡した事件だ。

当時、中国側の抗議に対して米軍は「国際空域での飛行の自由」を正当性の根拠にした。中国軍の内部では「『飛行の自由』を口実に偵察に来る米軍機に対抗できる法的根拠を作るべきだ」との声が強まった。

02年の国防白書で、初めて「防空体制の建設」を盛り込んだ。この年、中国側が主催した国際学会に現役の中国軍幹部が出席。出席者によると、前年の接触事件に触れて、この幹部は「防空識別圏をいま検討している。設定はこれからだ」と語ったという。

その後、上海交通大の薛桂芳教授が07年に発表した論文で「日本の防空識別圏の最西端は、中国の浙江海岸からわずか130キロしかない」と指摘。この頃から日本の防空識別圏に対する不満が芽生えていたことがうかがえる。

09年11月にあった軍創設60周年の記念大会。当時、空軍司令官だった許其亮・党中央軍事委員会副主席は演説で、空軍の近代化とともに「防空識別圏の共通認識を作っていく」と強調した。

ただ、当時の胡錦濤(フーチンタオ)指導部は、軍の要請に慎重な姿勢を崩さなかった。防空識別圏の運用に必要な態勢が十分に整っていなかったという事情に加え、周辺諸国の強い反発を招くリスクを考慮したとみられる。

中国指導部の姿勢を大きく変えたのは、12年9月、民主党の野田佳彦前政権による尖閣諸島の国有化だ。領有権争いの「棚上げ」を建前とする中国政府は、日本による尖閣国有化を「現状の一方的な変更」(国防省報道官)と批判。「棚上げ」は崩れたとの立場から、尖閣諸島の上空を含む空域に防空識別圏を設定することを求める党や軍内の声が高まった。

外務省系シンクタンク、中国国際問題研究所の曲星所長は今月10日の会見で「自分がこうしたいから、こうする。これが日本の論理だ。中国も今は同じ理屈で動いている。防空識別圏に釣魚島(尖閣諸島の中国名)周辺を含めないことはあり得ない」と述べた。

尖閣国有化の直後に発足した習近平政権は、こうした国内世論にも押される形で領土や海洋権益の確保の必要性を強調。軍の体制強化にも乗り出した。

昨年5月に空軍指揮学院がまとめた原案は空軍司令部や軍総参謀部を経て、党中央軍事委員会や党中央国家安全指導小組などで協議され、党中央政治局常務委員らによる最高指導部にも上げられたとみられている。

この過程で強硬な意見が支持を得て、11月に開かれた党の重要会議、第18期中央委員会第3回全体会議(3中全会)までに防空識別圏の最終形が固まった。中国が防空識別圏の設定を発表したのは、3中全会閉幕から11日後。日本から約130キロの地点が基準になったことについて、ある研究者は「日本がやる以上のことはしないとの考慮もあった」と話す。

■ 運用能力、割れる評価

東シナ海・中国防空圏に配備されている空軍機「線を引くだけでは何の意味もない。航空機や各種のレーダー、衛星の能力が高まり、実効性を確保できる態勢が整ったから設定した」。軍総参謀部の元幹部はこう語る。

防空識別圏設定の公表から6日後の昨年11月末、国防省は主力戦闘機のスホイ30と殲(せん)11が、空域に入った自衛隊のE767早期警戒管制機やF15戦闘機、米軍のEP3偵察機などに緊急発進(スクランブル)をかけたと発表した。

共産党機関紙「人民日報」傘下の国際情報紙、環球時報は独自情報として、E767とF15が航空自衛隊南西航空混成団所属だったとし、F15は那覇基地から飛来したと報道。中国の識別圏を「張り子のトラ」(英通信社記者)と運用能力を疑う国内外の世論に対し懸命に「宣伝戦」を繰り広げた。

複数の軍関係者によると東シナ海は南京軍区が管轄。防空識別圏の運用を担う主力戦力は殲10、殲11Bなどの戦闘機と空警2000などの早期警戒管制機とされる。軍諮問委員会元メンバーの一人は「軍は南京軍区に新鋭機を集中的に投入してきた」と話す。

中国の軍事事情に詳しいカナダの評論家、平可夫氏によると、殲10の作戦行動半径(軍用機が発進してから任務を遂行して帰還できる距離)は推定850キロ、殲11Bは1500キロに及び、早期警戒機のレーダーは300キロ先の相手機を捕捉する能力を持つ。「中国空軍の能力拡張の速度は日本を超える。識別圏の運用能力は整っているとみるべきだ」と話す。

ただ、中国の運用能力に疑問を示す声は多い。日本の防衛省関係者は「戦闘機の数は十分に備わっており、能力が上がっているのは事実」としながらも、「地上レーダーの能力には限界があり、早期警戒管制機もイスラエル製の最新鋭機の購入が米国の反対で頓挫し、性能で劣るロシア機をベースにしたものに頼っている」と話す。

管制機などが捕捉した情報を指令部門が受け取り、適切な基地から的確な方角に戦闘機を発進させる一連の判断と動作には経験が必要とされる。こうした運用能力にも、「中国空軍が日米のような能力を備えているとは思えない」(北京の外交筋)との見方が強い。

それでも、防空識別圏の設定で中国が運用の実績を積む舞台を得たのは事実だ。国防省は昨年末、防空識別圏設定からの1カ月で圏内でのパトロールが計51回に及び、延べ87機の戦闘機や早期警戒機が出動したと発表した。

軍総参謀部の元幹部は語る。「中国はいずれ、南シナ海や黄海にも防空識別圏を置く。我々は東シナ海で経験を積んでいるのだ」 (北京=倉重奈苗、林望)

さて、日経の記事――

中国防空圏、対応揺れる米国の事情(真相深層)
(日経 2014/1/8 3:30)

東シナ海上空に中国が設定した防空識別圏(ADIZ)を巡って米国の対応が揺れている。戦略爆撃機を圏内で訓練飛行させて中国をけん制したかと思えば、米民間航空会社には中国側が要求する飛行計画の事前提出を認める。ちぐはぐに見える対応には領土・領空保全のルールづくりを主導してきた米国ならではの苦しい事情がある

■ 50年代引き継ぐ

中国防空圏、対応揺れる米国の事情(画像)防空識別圏は領空の外側に設定する空域を指す。領空に入った航空機がその国の領土上空に到達するまでの時間はわずか数分。外国の航空機の領空侵犯を確認してから対応していたのでは自国の領土が攻撃にさらされかねない。領空に入る前に航空機を識別して、あらかじめ防衛体制を取るのが防空識別圏の本来の目的だ。

もっとも防空識別圏は国際法上で明確に定義された概念ではない。そもそもは米国による「空の線引き」で、これを設定するのは世界でも米国の同盟国である日本や英国、韓国のほか、ノルウェーやインドなどの20カ国程度に限られる。

アジア太平洋では第2次世界大戦後の1950年、GHQ(連合国軍総司令部)が防空識別圏を設定した。東シナ海では日本や韓国、台湾、フィリピンにまたがる空域に線引きを設け、旧ソ連や中国の領空侵犯を監視するのに使っていた。

GHQの線引きは4カ国・地域にそのまま引き継がれる。日本では59年に航空総隊司令官と米軍第5空軍司令官との間で「松前・バーンズ協定」が交わされ、防空識別圏が日本側に移管された。協定は領空侵犯への対応を日米両国がどう分担するかを定めた内容といわれる。外国機を識別するには高性能レーダーや偵察機、緊急発進(スクランブル)できる戦闘機が必要であり、運用では米軍との緊密な連携が欠かせなかった。

専門家によると、防空識別圏は60年の日米安全保障条約改定までに完全に日本に引き継がれ、領空侵犯に対応する体制が整ったという。防衛庁(当時)が内部で防空識別圏を規定したのは69年。日本にとって東シナ海に設けた防空識別圏は日米安保協力を象徴する存在といえる。

昨年11月23日、中国が日本の防空識別圏に張り出す形で自前の防空圏を設定すると発表した。軍事力の誇示、沖縄県・尖閣諸島への領有権の主張が狙いだった。

日米同盟への挑戦とも映る中国の行動。日本政府は防空識別圏の撤回を中国に要求する。ところが米政府の反応は「東シナ海の現状を変えようとする一方的な行動だ」(ケリー国務長官)。撤回という表現はなく、微妙な曖昧さがあった。

■ 靖国参拝が影

米国からみれば、防空識別圏は各国の国内措置であり、他の国が撤回させるのは困難。そもそも中国や旧ソ連の領空侵犯を念頭に米国が設定した経緯があるだけに、撤回の要求は米国批判につながりかねないという計算があった。

その代わりに、米国が注目したのは中国が防空識別圏をいかに運用するか。中国は防空圏を飛行する航空機に対して事前通告を求め、これに従わなければ「武力で防御的な緊急措置を講じる」と宣言した。国際法の原則である「公海上空における飛行の自由」が脅かされかねない事態に米国は反応した。

事前通告なしに戦略爆撃機を訓練飛行させたのは、中国の一方的な指令は国際的に無効だと示すため。ただ防空圏の設定自体は「新しくも珍しくもない」(ヘーゲル国防長官)とし、撤回は求めなかった。安全への配慮から、米民間航空会社が中国に飛行計画を提出することも容認した。

防空識別圏の撤回を中国に要求する日本、曖昧な態度を崩そうとしない米国――。そんな日米関係にすきま風を呼び込んだのが昨年末の安倍晋三首相の靖国神社参拝だった。米政府は「失望している」という強い表現で日本に懸念を伝えた。東シナ海上空の防空識別圏問題の解決が遠のく恐れさえある。(ワシントン=中山真)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDC2400K_X00C14A1EA1000/?dg=1

(多分、追記するでしょう….)

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