中国、格差社会に不満のマグマ ⇒ 「毛沢東時代が恋しい」民衆

中国格差社会・格差問題> 最高実力者の鄧小平が「改革・開放政策」を打ち出したのは1978年。その後の中国は市場経済の強みを取り入れ、急成長路線を突き進んでいった。今の中国は米国と並んでロールス・ロイスが最も売れる国の1つだ。ところが、家にトイレがない農家がいまだ残るのも中国の現実。ここにきて、冷酷な格差社会のゆがみを取り繕えなくなっている。

今日のクローズアップ現代は「シリーズ・模索する中国(1) 民衆の不満はどこへ」と題し、噴出する民衆の不満への対応に焦点を当てたものだったが……一方、日経11月18日のコンフィデンシャルの記事は<「毛沢東時代が恋しい」 中国、格差社会に不満のマグマ>というルポ記事だった。 中国に広がる過酷な格差社会、「毛沢東時代のほうがましだった」と嘆く民衆…日経の記事をクリップして掲載しよう――

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)01「毛沢東時代が恋しい」 中国、格差社会に不満のマグマ
(日経 2013/11/18 7:00)

「腐敗」「不公平」――。中国で怨嗟(えんさ)の声がやまない。市中の不満が共産党を狙った襲撃事件というかたちで噴き出している。最大の原因は格差社会。「貧しくても平等な毛沢東の時代の方がまし」という声まで漏れる。習近平が率いる新指導部が発足して1年。中国の土台がぐらついている。

■ 旧満州に世界最大の「ロールス・ロイス」店

満州国時代に奉天と呼ばれた中国東北部、遼寧省の省都・瀋陽。英高級車「ロールス・ロイス」で世界最大のショールームは、車好きにとって新しい名所の1つだ。

その店内に、スエットパーカーに黄色いスニーカーというカジュアルな格好をした中年男性が入ると、女性従業員はかしずくように寄り添った。男性客が店内をぐるりと見渡すのをうかがいながら、「お色はいかがでしょうか」と話しかけた。

「黒がいい、に決まっているだろ」

男性は大声で答え、1台で400万元(約6530万円)以上もする「ロールス・ロイス ゴースト」の座席に腰を沈めた。説明を一通り聞き終えると、「おい、行くぞ」と3人の取り巻きに声をかけ、隣にある英高級車「ベントレー」の販売店に向かった。

瀋陽には、近隣の「鉄鋼の街」の鞍山、「石炭の街」の撫順から、富裕層たちがショッピングを楽しみにやってくる。高級車ディーラーを回った中年男性は40歳代。炭鉱ビジネスで財をなし、その会社の董事長(日本の会長に相当)をつとめているという。
中国、格差社会に不満のマグマ(日経)02
最高実力者の鄧小平が「改革・開放政策」を打ち出したのは1978年。その後の中国は市場経済の強みを取り入れ、急成長路線を突き進んでいった。今の中国は米国と並んでロールス・ロイスが最も売れる国の1つだ。ところが、家にトイレがない農家がいまだ残るのも中国の現実。ここにきて、冷酷な格差社会のゆがみを取り繕えなくなっている。

■ 容疑者は「縮図」の住人

ウイグル族とみられる家族による天安門突入事件、そして山西省太原市で起きた共産党委員会前で連続爆発事件……。11月9日から12日まで開催された「3中全会」の直前、共産党を標的にした事件が相次いだ。

3中全会とは、共産党の「中央委員会第3回全体会議」の略称で、指導部が中長期的な経済政策方針を示す大事な会議。今回は、国家主席の習が共産党の総書記として率いる新指導部が発足してちょうど1年後にあたる。そんな微妙なタイミングで、何が不満の導火線に火をつけたのか。

山西省の連続爆発事件の容疑者(41)が住んでいた太原市杏花嶺区。歩いてみると、中国社会の縮図が浮かび上がる。
中国、格差社会に不満のマグマ(日経)04
建設現場の槌音(つちおと)が響く一画に向かうと、巨大な複合商業施設を建てる工事が進んでいた。その名は「万達広場(ワンダ・プラザ)」。中国一の富豪とされる王健林が率いる大連万達集団(ワンダ・グループ)のショッピングモールだった。

王は「中国のディズニーを目指す」と豪語する著名経営者。ショッピングモールにホテルやマンション、大型映画館やゲームセンター、オフィスを組み合わせた商業施設を中国全土につくり続けている。

敷地には、「五つ星“超”」をうたうワンダ・ビスタ・ホテルが昨夏に一足早く開業。「プレジデンシャル・スイート」と呼ぶ部屋は1泊3万元(約49万円)もする。ホテルの裏にある高層マンションの販売を任されている不動産業者によると、床面積が150平方メートルと標準的な物件なら日本円で2400万円。その値段は、太原市の住民の平均年収の34倍に達する。

■ 良い格差と悪い格差

見上げるようなマンションやホテルは中国の成長のシンボル。地域の経済も潤すはずだ。周辺の住民はどう考えているのだろうか。

「腹立たしいさ。貧しい人は敷地の端に追いやられ、新しい金持ちが流入する。普通に働いて買えるマンションではないよ」

近くの公園で壁新聞を読んでいた78歳の男性に話を聞いてみると、悔しそうにつぶやいた。連続爆発事件の容疑者は、似たような不満を抱いていたのかもしれない。

「周」と名乗るこの男性の嘆きは止まらなかった。

「いつからこんな社会になってしまったのか。毛沢東の時代の方がまし。毛沢東は文化大革命で数々の政敵を死に追いやったが、一部の人だけが異様に金持ちになるのを見過ごす政治家よりは、よほどまともだ。あれを見てよ」

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)06指をさした先には「不夜城」という看板がかかったビルが建設されていた。マンションに併設してつくられる、オールナイトのバーやカラオケ店を集めた歓楽街らしい。なぜ、平均年収の30倍超のマンションを買える人がたくさんいるのか。夜通し遊ぶ不夜城では、どんな人が楽しむのか。合点がいかないことばかりという。

公園のベンチに腰掛けていた23歳の女性は「太原の連続爆発事件にも、全く驚かなかった。みんな不満なの。みんなが悪いことをしてお金を稼いでいる中で、1人だけ正義を貫き貧しい生活をしても意味がない」と漏らした。

鄧小平の改革・開放路線以降、中国は競争社会に変わり、ベンチャー企業の創業者や金融機関のエリート社員らの高所得者が続々と現れている。しかし、それは努力したものが報われる「良い格差」といえる。不健全な「悪い格差」をつくる病巣は、市場競争とは全く別のところで発生している。問題は、グレーな「灰色収入」で潤っている人が増え続けていることにあるのだ。

マイホームは全部で21軒――。2年ほど前、広東省の地方官僚が複数の家を所有していることが発覚したが、月給1万元なら307年間働かないと買えない資産だったという。その官僚は都市計画の責任者で、マンション開発の許認可権を握っていた。業者の賄賂で家を建てていたのだ。

中国は土地が公有制で、売買できるのは使用権だけ。都市開発などの土地は地方政府が入札にかけて市場に供給しており、至る所で不祥事の温床になっている。中国の最高人民検察院(最高検)によると、昨年、汚職で起訴された公務員は中央、地方合わせて4万7338人。そして、汚職は官僚に限った話ではない。

「先生、お疲れでしょう。きょうはマッサージなどいかがですか」

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)08今夏発覚した英製薬大手グラクソ・スミスクラインの贈賄事件。営業担当者が医師に様々な便宜供与を図っていたことが明るみに出た。国営新華社通信が伝えた元営業マンの証言によると、医師らを食事、女性が横に座るカラオケ店に連れて行き、旅行や買春の手配までしていた、という。

店を開くには消防局に、学校で手心を加えてもらうなら教師に。賄賂を渡す習慣がなかなか消えず、それどころか、「非公式」なビジネス慣習として定着してしまった。こうした灰色収入は月給の何倍にも上るケースもある。

■ 現代のアパルトヘイト

ごく一握りの人間に富が集中しがちなのは、汚職問題を引き起こすモラルハザードだけが理由ではない。13億人もの国民をコントロールするためにつくった制度が時代遅れになり、今や大きな亀裂を中国社会につくってしまっているのだ。

例えば、戸籍による都市部と地方部の分断。経済格差だけではなく、戸籍の違いで、日々の生活や将来が決まってしまうのだ。地方出身者が北京に働きに出ようとしても、都市部の戸籍がなければ、子供を学校に通わせることができない。仮に一流企業に勤められたとしても、地方の戸籍の保有者なら、北京で自由に家や車を買うことができない。

中国の戸籍制度がつくられたのは半世紀ほど前。農村から都市に人が流入し、都市人口が爆発的に拡大することを阻止することが目的の1つだったが、今では格差社会のシンボルそのもの。農村では、戸籍制度について、「現代のアパルトヘイト(人種隔離政策)」と呼ばれることも多い。

そんな都市と地方の対立に民族問題がからめば、さらに綻びは大きくなる。

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)10「上海城」「広州城」「深圳城」……。ウイグル族が居住者の9割を占める新疆ウイグル自治区カシュガルで、大都市の名を冠した開発区が次々にできている。現場を訪れると、ウイグル風の帽子をかぶった中年男性が近づいてきた。

「仕事は全部、漢民族が持っていくんだよ。ウイグル族のおれたちには回ってこない。土地もない。農地もない。仕事もない。どうやって生きろというのだ」

開発区の工事主体は、中国の大多数を占める漢民族が資本を出し、それぞれの大都市に本拠を置く企業ばかり。周囲の道路工事現場でセメント作業をしていたのも、すべて漢民族の会社だった。中国政府は新疆ウイグル自治区の開発に巨額の資金を投じているとアピールするが、恩恵は自治区に流入してきた漢民族が得ている。

■ 漢民族は小銃、ウイグル族は警棒

ウイグル族の街なのに、漢民族が政治も経済も主役。10月末、ウイグル族とみられる家族が中央政府に抗議するためからか、天安門に車で突入した。ウイグル族と漢民族の対立を解消できない政治への不満が事件発生の遠因とみられている。さらに16日には自治区カシュガル地区巴楚県で警察への襲撃事件が発生。警察関係者2人、襲撃した9人の計11人の死亡が伝えられた。

天安門突入事件から1週間たったカシュガル市内。武装警察が小銃を片手に巡回し、漢民族の公安が街ゆくウイグル族の人々を無作為に呼び止め、身分証や手荷物をチェックしていた。

「おれが何をやったんだ」

ウイグル族男性が抵抗するそぶりをみせると、公安は腰の銃に手をかけて威嚇した。そんな小競り合いはあちこちで起きていたが、よく眺めると、公安の携帯する武器が民族によって違う。

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)11漢民族の公安は自動小銃、ウイグル族の公安は警棒。政府はウイグル族の公安に銃を持たせていないのだ。

一枚岩だったはずの社会主義国家に走った亀裂は、広がるばかりなのだろうか。

中国は5年前のリーマン・ショック以降、もう一つの超大国である米国以上の存在感を持ちつつある。中国が揺らげば、世界も動揺する。中国の行方を占う3中全会が開かれていた先週までは、世界の政治家も、投資家も、経営者も、視線が北京にくぎづけになっていた。

中国、格差社会に不満のマグマ(日経)13共産党幹部だけが使える北京市内の高級ホテル「京西賓館」。3中全会の期間中には、中央・地方政府の幹部や国有企業の経営者など、中国で最も力を持つ400人近くが集まった。

■ パワーエリートたちは動くのか

会議の最終日にあたる11月12日午後、党総書記でもある国家主席の習は、彼らを前に3中全会を総括するコミュニケを読み上げた。

「腐敗を罰し、防ぐ体制をつくる」

「都市と農村の建設用地を等しく扱う」

習は汚職や格差などの問題にメスを入れる姿勢を打ち出したが、会場に集まった中国共産党のパワーエリートたちは、その指示通りに動くだろうか。彼らは国のリーダーであるのと同時に既得権益者でもあるのだ。

行き過ぎた統制は反発を招き、緩みは混乱の芽を生む。「2020年までに成果を出す」という習体制にとって、不満のマグマがあふれ出る格差社会をどう解消させるかが最大の課題だ。

(森安健、島田学)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1503L_V11C13A1000000/

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