知らぬ間に「ネット加害者」、未熟な中学生の常識 <日経特集「スマホチルドレンの憂鬱」>

日経特集「スマホチルドレンの憂鬱」の8月20日の記事は「知らぬ間に「ネット加害者」、未熟な中学生の常識」というものだった。 興味深い記事だったのでクリップして掲載――

知らぬ間に「ネット加害者」 未熟な中学生の常識
(日経 2013/8/20)

――― ネットを通じて「名誉毀損罪」や「侮辱罪」にあたる可能性のある行為をした経験を持つ子供は少なくない。最大の原因は、知識不足にある。しかも親の無知さが、そうした危機的状況を悪化させている――。小学校高学年から中高生までスマホが急速に広がるなか、様々な課題が浮上してきた。本連載では、スマートフォン(スマホ)を肌身離さず持ち歩く「スマホチルドレン」の現状を、中学校での生徒指導経験が豊富な兵庫県立大学の竹内和雄准教授が明らかにする ―――

筆者らは、昨年(2012年)11月に「ネット上のふるまい調査」というアンケート調査を、大阪府と滋賀県の中学生1362人を対象に実施した。アンケートではネット上での「被害」経験と「加害」経験などを質問したが、その結果からは意外な事実と示唆に富む結果を得られた。

これまでの子供とネットにかかわる調査では、どちらかというと子供たちが被害を受けたことに焦点をあてたものが多かった。そこで今回はアンケートから見えたネット上での「加害」についてまとめてみた。

知らぬ間に「ネット加害者」、未熟な中学生の常識(図1-小)図1は回答した中学生1362人のうち、一度でも“犯罪に該当する行為”を経験したと答えた比率である。生徒たちには、アンケートの収集にあたって当該行為が犯罪であることはあえて伏せ、やったことがあるかどうかについて回答を求めた(回答を受けた後、正しい知識を詳細に説明した)。

回答結果からわかるように、1割を超える男子中学生が、犯罪に該当する行為をしてしまっている。女子も男子よりも割合は低いとはいえ、少なくない人数がこれらの行為をしていると答えた。具体的には、ネットを通じて、「名誉毀損罪」や「侮辱罪」にあたる可能性のある行為をしてしまう場合が多い。

■ ネット上に横行する名誉棄損罪と侮辱罪

名誉棄損罪は、刑法第230条1項で「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金に処する」と定めてある。つまり、「A子は援助交際している」「B男はカンニングした」などの事実(ただしその事実の真偽は問われない)を公然と示すことによって、他人の名誉を毀損する行為である。

これに対して、公然とした事実を適示することなく、例えば「C子はウザい」「D男は気持ち悪い」といった評価・判断を示す言葉で公然と人を侮辱する行為は、侮辱罪にあたる。

ネット掲示板などにある悪意のある書き込みはたいてい名誉毀損罪か侮辱罪のどちらかにあたる。ただし、どちらも被害者が犯人を知ってから6カ月以内に告訴することが、犯罪の成立要件となる「親告罪」である。

2005年に男子高校生が、本人に代わってネットに書き込みをするなどして、名誉毀損罪で逮捕された事件があった。高校生を対象とした講演会の際に、筆者はこの事件の詳細を示して、犯罪の可能性があるかどうかを聞くことにしている。関西のある公立高校1年生たちの場合、「犯罪の可能性がある」と答えた生徒は22.0%で、全体の4分の1に満たなかった。

実際に逮捕された事実を伝えると、生徒たちからどよめきが起こった。中にはあからさまに「やばい」という表情をする生徒もいた。もしかすると、似たようなことをした覚えがあったのかもしれない。

■ 不正アクセスも犯罪とは思わない

もう一つ、子供たちのネット利用の近いところにある法律が「不正アクセス禁止法」だ。同法(第3条、第8条関係)では、「不正アクセス行為とは、アクセス制御機能による利用制限を免れて特定電子計算機の特定利用をできる状態にする行為」と記されている。不正アクセス行為の禁止に違反した者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられることとなる。しかも、不正アクセス禁止法は告訴が成立要件となる親告罪ではない。

例えば女子高生などが、ほかの女子高生になりすまし、IDとパスワードを使って携帯電話からその女子高生のプロフ(携帯電話向けのプロフィール作成・紹介サイト)に不正アクセスした事件や、成人男性が携帯電話から知人女性のメールアドレスとIDを使って不正にアクセスし、女性のIDを変更するなどの事件があった。これら事件で加害者は、書類送検されたり逮捕されたりしている。

こうした事例に対して、先ほどの公立高校の1年生たちが「犯罪の可能性がある」と思う割合はさらに低く、10.1%にすぎなかった。多くの高校生が筆者の説明に疑いのまなざしを注いだため、これらのニュースが掲載された新聞記事の実物を見せたところ、さらにどよめきが広がった。高校生の多くは、これらの行為が書類送致や逮捕に至る、犯罪の可能性がある行為だということを知らなかった。

■ 「みんなやってる」と話す子供たち

彼らの価値判断基準は、自分の周囲にいるほんの一握りの友達の言葉である。その友達の多くがやっていることを、彼らは「みんなやってる」と話す。彼らにとって自分の周囲の友達がすべてで、他の判断基準はかすんでしまう。例えば5人の仲良しグループのうち3人がスマホを持っていると、「お母さん、みんながスマホ持ってるのに、私だけ持ってないから、早く買って」となる。

こうした子供たちに、私たち大人の基準を提示するときには、感情的になってはいけない。彼らが納得するように基準を示す必要がある。彼らは納得すれば大人の基準を受け入れるし、同じことを二度としなくなる。

一人を納得させただけでは十分でない。彼らの仲間全員を納得させることが必要である。こうした基準を理解させるのは、学校での全体指導が手っ取り早い。各家庭でのしつけだけではもはや対処できない。

学校の力を借りないのであれば、子供の友達の親同士が密接に情報交換しておくことが効果的。親がいっせいに同じことを話すと、子供の仲間内でも合意ができるなど、効果があがる場合が多い。

■ 「犯罪」と理解すればやらなくなる

知らぬ間に「ネット加害者」、未熟な中学生の常識(図2-小)図2は、その行為が犯罪だと認識しているか否かによって、その行為を実施してしまう人の比率が変わることを示したグラフである。子供たちへの今後の教育にあたって、示唆に富む調査結果といえる。「その行為が犯罪であると理解した生徒は、その行為をしなくなる可能性が高い」ことがはっきりとわかるからだ。

ただし、犯罪に当たる行為を重ねるにつれて慣れが生じ、犯罪認識がなくなってしまう可能性もありえる。また、犯罪であるとの認識があれば、その行為を100%しないとも言い切れない。それでも、子供たちに何が犯罪に当たるかという事実を教える必要があるとはいえるだろう。

筆者は現在、研究室に出入りしている大学生と、高校生たちに、これらの事実や知識を与えるための教材作りに着手している。今のところは講演会や授業の場だけで使う教材だが、将来的には各家庭で保護者が子供に対して活用できるものも作りたい。日本中を見渡しても、最新事情までカバーして子供に伝えられる家庭向けの教材は存在しないからだ。

■ 大人の無知が危機的状況を悪化させる

筆者は全国の学校で講演し、生徒や親たちと対話をしていくなかで、犯罪行為は論外として、スマホを使う子供たちの行動を導く規範が「危機的状況」にあるという思いを募らせている。この連載を始めたのも、その危機感が高まり、何らかの解決を図ろうと考えたからだ。

筆者が特に危険を感じるのは、大人がスマホで動く最新アプリについての知識が乏しいことである。例えば無料のメッセージアプリとして人気の「LINE」について、学校関係者の知識不足には驚いてしまうほとだ。

スマホユーザーから絶大的な支持を得て、メッセージアプリとして最大のシェアとなったLINEに対して、学校関係者は「LINEは危険だ」「LINEが元凶」と強硬に話す場合が多い。危険と思われる理由に踏み込んで聞いてみると、「事件はLINEで起きている」、「みんな言っている」程度の答えしか返ってこない。

当初は先生たちに「先生同士で使ってみたら、対策が一番わかりますよ」と助言していたのだが、どうも乗り気な対応ではない。詳しく聞くと、学校関係者には「登録したら端末内にあるすべての個人情報が流出してしまうので、絶対登録すべきでない」といった噂が流れているようだ。

もちろんユーザーが意図しない情報の流出を防ぐ手段は存在する。LINEに登録するときに、アプリで「友達自動追加」「友達への追加を許可」のチェックを外すよう設定すれば、端末内のアドレス帳にある個人情報はLINEのサーバーに送信されない。「IDの検索を許可」のチェックを外して設定すれば、知らない人から自分が検索されることもない。もしも知らない人からの接触があっても、「ブロック」することにより遮断できる。こうした説明をして、機能を理解したうえでようやく先生たちは安心する。

それぞれのアプリの功罪について発言したり、注意喚起をしたりするには、自分が使ってはじめてわかることがある。ところが、もはやこうしたツールでは、子供たちのリテラシーのほうが高い。筆者自身は子供たちに劣らない程度に使えていると思うが、それでも難しいと感じているのも事実である。そこで、大学生に刻々と変わる最新の状況を教えてもらっている。

学校関係者や保護者などの大人には「子供たちに教えてもらうつもりで関わるとよい」と推奨しているが、これはなかなか難しいようだ。

■ 放任派と厳禁派、両極端に振れるスマホ対策

大人は、子供に何が犯罪行為かについて教えるのと同じように、スマホやアプリについて教えられるよう、学んでおくことが必要だと筆者は提唱している。何も知らずに指導することは危険性を高くしかねないので、大人が勉強しようというのだ。

その一方で、スマホに対して両極端な意見が増えていることが気になっている。「子供の自由にさせればいい」という放置派と、「危険なのでスマホは絶対持たせるべきではない」という厳禁派。現状を考えると、筆者はどちらも好ましくないと考えている。

子供にスマホを賢く使わせる工夫を、親として真剣に考える段階にきているはずだ。だからこそ、正しい方向を考えられるだけの情報の収集と理解をしておくべきだろう。

(次回は8月27日掲載予定)

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竹内和雄(たけうち・かずお)
兵庫県立大学環境人間学部准教授。公立中学校で20年間生徒指導主事等を担当(途中小学校兼務)、教育委員会指導主事を経て、2012年より現職。大学では教職を目指す学生の指導のほか、いじめやネット問題など、「困っている子」への効果的な対応方法を研究。研究室では、教師を目指す学生が自主的に集まる教師塾「センセーション」で、毎週木曜日に大学生と子どもたちの今について議論する。総務省の「スマートフォン時代における安心・安全な利用環境の在り方に関するWG」構成員、文部科学省学校ネットパトロール調査研究協力者。
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http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK08059_Y3A800C1000000/

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知らぬ間に「ネット加害者」、未熟な中学生の常識 <日経特集「スマホチルドレンの憂鬱」>」への1件のフィードバック

  1. 私の疑問は、中学生がlineをして今後どうなるか。全国の学校では、何か対策をしているのか。考えればきりがないのです。このような疑問を持ちはじめたのは、私のlineに、子供の小学校時代の友達から、IDを教えてと!きたことからです。子供は全くというほど使わないのですが、タイムラインというものが、まわってきます。それには、一分以内に廻さなければ…など、色々きます。沢山の子供さんがスタンプを押しており…呆れております。子供と話し合って非表示にしましたが、このような繋がりでlineが広がっていることに危機感を強く感じています。ちなみに、子供はキッズ携帯で、クラスに二人だけだそうで欲しがりましたが、今は諦めているようです。下の子供もおりますので、lineをしていないということで、イジメや学業に、専念できないなどといった問題が増えるのではないかと思います。以上、長文失礼しました。

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