<川崎重工業、35分のクーデター 「3人に強い不信感」> 何があったのか?【更新6/15、記事追加】

更新6/15、記事追加】 造船・重機の名門、川崎重工業でクーデターが起きた。三井造船との経営統合交渉をめぐって長谷川聡社長ら3人が解任された13日の臨時取締役会は、わずか35分。否定していた経営統合の交渉の事実があったことも認めた。2カ月近く市場を欺いた責任は重い。

13日午後3時。川崎重工の取締役13人全員が出席して、臨時取締役会が始まった。長谷川聡社長、企画本部を担当する高尾光俊副社長、企画本部長の広畑昌彦常務の3人を解任する緊急動議が提出された。

職を解かれることになった3人の側は釈明もしたが、動議は大橋忠晴会長を含む残る10人全員が賛成。経営統合の交渉打ち切りも10人による賛成多数で決まった。取締役会は、淡々と35分で終わったという。

約5時間後。新社長に就いた村山滋常務らが東京都内のホテルで記者会見し、この日の解任劇の様子を説明していった。

川崎重工業、35分のクーデターそして、こう語った。「3人が適切なプロセスを度外視し、経営統合ありきの姿勢であることに強い不信感を覚えた」「大変悩んだが、取締役として不適格と言わざるをえない。苦楽をともにした仲間であり、このような結論に至ったことは慚愧(ざんき)にたえない」

不信はなぜ募ったのか。

業界再編による効率化を期待する主取引銀行の後押しも受けつつ、長谷川氏らは統合に動き出した。他の取締役が知らされたのは、日本経済新聞が報道した4月22日の1、2週間前だったという。

極めて重い案件の場合、一握りの役員が先行して動くのは珍しくない。だが川重では、取締役全員が知った後もスタンドプレーが続いた。

統合交渉の報道に対して解任された広畑氏は、「事実はない」と発表すると決めた。長谷川、高尾の両氏も直後の記者会見で同じようにコメントした。

5月23日。取締役会後の検討会議では統合反対が多数派だった。だが広畑氏は議事録の原案で「是非は株主総会後の新体制で決まればよい」という趣旨の内容を記したという。

6月26日の株主総会が近づき、統合交渉を取締役会にはかるべきだとの意見が出たという。3人は臨時で取締役会を開くと話していたものの、手続きをすぐには進めなかった。「打ち切り」について話し合う取締役会の開催を決めた後も議長に採決しないよう働きかけたという。機関決定の「妨害」だとみた役員らに一段の不信感が募った。

「コーポレートガバナンス(企業統治)の観点から見過ごせない行動を繰り返した」。村山氏は会見で3人を非難した。解任された3人はどう考えるのか。会見に姿はなく、コメントは得られていない。

■ 統合交渉は打ち切り

川崎重工業と三井造船の経営統合交渉は、日本経済新聞が4月22日付の朝刊で「川重・三井造船 統合交渉」と報じて表面化した。

この日朝、川重は東京証券取引所などの情報開示のルールに基づいて、「当社が発表したものではなく、またそのような事実もありません」とのコメントを出した。もう一方の当事者の三井造船は「当社として発表したものではありません」。川重の否定は、より強く踏み込んでいた。

だが同日の夕刊では各紙とも、経営統合問題を報じた。朝日新聞も独自取材を踏まえ、「統合検討」と伝えた。

これに対して川重は、事実そのものを否定し続ける。4月25日に開いた中期経営計画の説明会で長谷川聡社長は、交渉の事実を改めて否定。そのうえで、「成長に必要な事業や技術をM&A(企業買収や合併)で取得するのは排除していない。(あらゆる)可能性を検討するのは経営陣の責務だ」と話した。

統合交渉の表面化から2カ月近く。長谷川氏らが解任された6月13日、川重は4月22日のコメントの表現を「交渉の事実はありますが、何も決まっていません」と訂正。そのうえで、「交渉を行ってまいりましたが、本日の臨時取締役会で打ち切ることを決定しました」とした。三井造船は当初のコメントについて「訂正の必要はない」(広報)とした。

〈川崎重工業〉 本社・神戸市中央区。1878年に東京で川崎築地造船所として創業し、造船のほか、鉄道車両なども手がける総合輸送機器メーカー。二輪車ではカワサキの名は世界で知られている。2013年3月期の連結売上高は1兆2888億円で、造船・重機業界では三菱重工業に次ぐ2位。従業員数は約3万3千人。

(朝日<名門・川重、35分のクーデター 「3人に強い不信感」> 2013年06月14日01時39分 http://www.asahi.com/business/update/0613/TKY201306130446.html


【動画ニュース、川重・記者会見】 川崎重工業  長谷川社長を解任、 村山常務が社長に昇格

更新6/15、記事追加

川重解任、裏に縦割り(朝日2013-6-15)川重解任 裏に縦割り <権限強い事業部門、反旗>
(朝日・朝刊9面「経済」 2013年6月15日) 

社長を解任された長谷川聡社長(川崎重工)川崎重工業で起きた長谷川聡社長ら3役員の解任劇は、ライバルとの経営統合という会社の将来像をめぐるクーデターだった。 全社を見渡す企画部門の動きを、事業部門の役員が拒んだ。 強い発言力を持つ縦割り組織が背景にあったようだ。

不祥事の発覚などではなく、経営そのものに起因する解任劇。 一夜明けた14日、経済界から疑問の声が出た。「M&A(企業買収・合併)であれば取締役会で何度も承認を得て、プロセスを踏むのが普通だ。理解に苦しむ」。 経済同友会の長谷川閑史(やすちか)代表幹事(武田薬品工業社長)は記者会見で、こう話した。

だが、川重は、かじとり役を担う企画部門ではとりまとめにくい組織だった。

三菱重工業やIHIなどの造船・重機大手はそもそも、船、飛行機、産業機械など多様な製品を手がけている。なかでも川重は、世界にカワサキの名を知らしめる二輪車なども含めた七つの「カンパニー」の集合体だ。「社内の会社」として独立色が強い組織がそれぞれ利益を追求している。

長谷川聡社長とともに解任された2役員は、企画部門の担当。主取引銀行の後押しを得て三井造船との統合推進役を担ったが、各事業部門を支える役員が団結した。東京本社での臨時取締役会で、残る全10役員が緊急動議に賛成した。

川重の事業は手広く、船舶部門の比率は低い

川重の事業は手広く、船舶部門の比率は低い

川重の2013年3月期の売上高は、三井造船の2倍を超す約1兆2800億円。だが、船舶関連部門に限れば三井の3分の1にも届かない903億円だ。「釣り合いがとれない」と市場から見られた統合に、「企業価値の増大にはつながらないとほとんどの取締役が思ったのではないか」(松岡京平・新副社長)。01年に導入したカンパニー制のもと、社員にも「縦割りと感じることもある」との声がある。「自部門にメリットがない」との判断が重なりあい、「遠心力が働いた」(アナリスト)との見方が出た。縦割りは今後とも、会社全体でかじをきる必要が生じた時の足かせになりかねない。

■ 市場には評価も

14日の東京株式市場。川重の株価は前日比13円高の319円で取引を終えた。かたや三井造船は8円安の137円。「統合交渉の打ち切り」で川重株は買い、だった。解任劇に加え、「交渉の事実はない」と正しくない情報を伝えていたにも関わらずだ。

取締役会での対立の原因は、三井造船との統合交渉での手続きに加え、統合そのものが川重にプラスかどうかでもあった。

造船・重機業界に詳しいメリルリンチ日本証券の森貴宏アナリストは「取締役会が健全に機能していい結論が得られた」と話す。

日本の企業では、創業家やオーナー、そして「中興の祖」と呼ばれる一部の経営者に、権限が集中することが珍しくない。そうなると取締役はモノが言いにくくなる。森氏は「取締役会が緊張感を持つのはよいことだ」と指摘する。

ただし、企業法務に詳しい淵辺善彦弁護士は「解任は最後の最後の手段。解任する前に辞任を迫るなど、どこかでけん制が働くのがふつうの企業統治だ」と話した。 (木村裕明、石橋達平)

この川崎重工業のクーデター解任劇、日経の記事ではこうだ――

川重トップ解任劇、新経営陣に「クーデターの代償」
(日経「スペシャルリポート」 2013/6/14)

重厚長大産業を代表する名門の川崎重工業で、「トップ解任」という大きなトラウマを抱えて新体制がスタートした。14日の株価は上昇。株式市場で大きな混乱はなかったが、長い目で見れば、経営陣の迷走が会社そのものの停滞の始まりにつながりやすい。川重の新経営陣には、「クーデターの代償」が待っている。

川崎重工業の長谷川社長(日経)「今月26日の株主総会の後を『勝負どころ』にしようとしたのが、裏目に出たのではないだろうか」。川重の前社長、長谷川聡の解任劇から一夜明けた14日、業界内で、こんな見方が広がった。

長谷川にとって、26日の総会は特別な日だった。この日に前任社長で現会長の大橋忠晴が相談役に退任、「大橋会長―長谷川社長の通常体制」から、「長谷川社長のワントップ体制」に移る。社内でくすぶる三井造船との統合への不安を鎮め、相手との本格交渉をスタートする絶好のチャンスにできるはずだった。

ところが、その話が大橋の耳に入り、「逆に反対派の役員が結集する求心力になったのではないか」と見られている。大橋は鉄道などの車両部門出身で、社長時代は海外展開などで実績を残した実力会長。今月の株主総会で相談役に退く前に、社内に広がる不満をまとめた、という見立てである。

そもそも川重の社内力学は複雑だ。二輪車や航空機エンジン、ガスタービン、そして造船など様々な分野の製品を生産。カンパニーの数は7つもある。そうした部門の間の思惑の違いが噴出することも少なくない。

経営トップの選び方も少し変わっている。「社長が後継者を指名するのではなく、会長が指名することが多い」(同社関係者)という。そのため、会長―社長の間は微妙な関係になることが多い。そんなパワーバランスの中で、長谷川による三井造船の統合構想が動き出し、解任騒動につながっていった。

社内の派閥争いの行き着いた先が、今回の解任劇なら、再出発する川重の新経営陣にのしかかる重圧ははかりしれない。そもそも、「縦割り」「内向き」など大企業病がまん延しているところに、社長解任の動揺が重なれば、社内は疑心暗鬼になりやすくなる。結果、混乱はそう簡単に収まらず、業績の長期低迷などを招いてしまう。

川崎重工業の部門別業績と役員の出身部門一覧表

川崎重工業の部門別業績と役員の出身部門一覧表

経営トップの解任劇は古今東西で決して珍しい話ではない。米国では、1990年代の米ゼネラル・モーターズ(GM)で社外取締役らが最高経営責任者(CEO)を追放したトップ解任劇、日本では、82年の「三越事件」が知られている。

「なぜだ」――。当時の三越のワンマン社長、岡田茂が部下たちに解任された取締役会で発した言葉はあまりに有名だ。

その後の両社はどんな運命をたどっていったのだろうか。

「自動車産業の王様」だったGMは法的整理を迫られ、政府の手を借りなければ再建できないところまで追い詰められた。三越も、日本の消費文化を引っ張るリーダーの座をなかなか取り戻せず、結局、ライバルの伊勢丹に事実上飲み込まれた。

川重の株価は14日、4%超上昇。時価総額は200億円以上増えた。新経営陣の想像通り、株式市場は「三井造船を抱え込むことは川重にマイナス」ととらえていたのだろうが、新経営陣は喜んでいられるはずがない。うまく経営をリセットできなかった場合の結末は、今のGMや三越の姿が証明しているのだ。

(編集委員 武類雅典)

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1402S_U3A610C1000000/

川重、部門の論理に統合派孤立
(日経 2013/6/15 1:38)

川重は7部門の寄り合い所帯(日経13-6-15)川崎重工業が長谷川聡社長(当時)を取締役に降格する人事を公表してから一夜明けた14日、新経営陣は村山滋社長が社員に「自由で風通しの良い社風を大切にする」と文書で呼びかけるなど、社内の動揺を抑えることに力を尽くした。異例の解任劇に至った関係者の動きを振り返ると、川崎重工社内の「部門」の論理の中で、孤立を深めていった「統合派」の姿が浮かび上がる。

「メーンバンクとしての支援を引き続きお願いしたい」。13日夕、川崎重工の村山社長は、臨時取締役会で長谷川氏を解任した直後、みずほフィナンシャルグループの佐藤康博社長に急きょ会い、そう頼み込んだ。

■ 「うちには何の利点もない」

そもそも川崎重工と三井造船の統合交渉のきっかけを作ったのは銀行。関係者によれば今年に入り、両社の主取引銀行(メーンバンク)であるみずほコーポレート銀行と三井住友銀行が両社を引き合わせたとされる。

この銀行の提案に長谷川氏と企画部門の高尾光俊副社長(当時)、広畑昌彦常務(同)の3人が乗った。三井造船は海底から原油やガスを掘り出して船上で精製などをする海洋資源開発で高い技術力を持つ。同分野の世界市場は2020年までに10兆円以上に膨らむとの予想もある。三井造船を取り込めば世界で存在感を示すことができる。

しかし長谷川氏らは社内の猛反発にあう。「反対です」。4月上旬、長谷川氏は他の取締役10人に三井造船と統合交渉していることを内密に知らせた際、10人全員がそろって反対した。

銀行側は反対派の動きを重視していなかったようだ。4月下旬、長谷川氏らはみずほに「各カンパニーのトップに説明し、統合交渉入りで前向きの感触を得た」と伝えていた。「造船業界だけにスピード感はないが、遅々として、進んでいる」。みずほ幹部は直前までそう周囲に説明してきたほどだ。

取締役の多くが統合交渉に反対した背景には、社内が7つの事業部に分かれ、それぞれが独立色の強い川崎重工の社内構造がある。解任劇の前は13人の取締役のうち10人が代表権を持つという独特の体制だった。「うちには何の利点もないから」。5月上旬、ある事業部を指揮する取締役は統合交渉に反対する理由をこう言い切った。

しかも造船(船舶海洋)は売上高が約900億円で社内最小の部門。三井造船と統合が実現すれば、売上高約4100億円と一気に最大部門に躍り出ることへの抵抗感もあったとみられる。「統合派」は次第に社内で孤立していった。

13日の取締役会では造船部門の「ドン」とされた神林伸光取締役でさえも長谷川氏らの解任に賛成した。売上高で上回る三井造船にのみ込まれることを警戒したためだ。

次期社長争いが背景との見方も

三井造船との統合交渉は長谷川社長らが主導(日経13-6-15)「全ては株主総会が終わってから」。長谷川氏は常々、周囲にこう漏らしてきた。今月26日の株主総会で自らの立場を盤石にしてから統合交渉を進めるという意味だ。総会後には大橋忠晴会長が退任し、長谷川氏が筆頭の取締役になる予定だった。

次期社長を巡る争いが背景にあるとの見方もある。川崎重工は7事業部のうち最も収益性や成長力が高い部門が社長を輩出してきた歴史を持つ。長谷川氏自身、ガスタービン・機械部門の好調さを背景に社長に就任した。

その意味で、炭素繊維を使った航空機の胴体部品が好調な航空宇宙部門出身の村山氏は、取締役10人の中では次期社長候補の筆頭格。だが、三井造船との統合が実現すれば、それを功績に統合派の高尾氏が次期社長となる可能性が高まる。

「解任のリスクがあるなら長谷川氏は統合交渉を白紙にすればいいだけのこと。結局は川崎重工の社内部門間の権力抗争だったのではないか」。14日、みずほ幹部からはこんな感想が漏れた。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD140JM_U3A610C1EA2000/?dg=1


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