学ばない学生、奨学金取り消し 586人、大学の判断覆す 学生支援機構

奨学金返済の滞納が増え、その額は2011年で総額876億円にもなるという。 そうした中、奨学金を貸している独立行政法人・日本学生支援機構は奨学生の審査を厳しくしている。 適格認定を厳格化し、将来の円滑な回収につなげようというr考えのようだ。 滞納の増加の背景には就職難や非正規雇用の増加がある。 そうした中で、日本学生支援機構の奨学金は「貧困ビジネス化」しているとの批判が起きている。 朝日の記事と毎日の記事をクリップして伝えたい――

奨学金返済滞納

学ばない学生、奨学金取り消し 586人、大学の判断覆す 学生支援機構
(朝日朝刊1面 2013-5-23)

大学生らに奨学金を貸している独立行政法人日本学生支援機構が昨年度、学生の所属大学などによる「適格認定」を覆し、約600人の奨学金の原則廃止を大学側に通知していたことがわかった。返還の滞納が社会問題になる中、異例の対応で奨学生の審査に厳しく臨む姿勢を示した。

同機構から奨学金を借りている学生は毎年、新年度前に、返還義務の自覚や家計の状況を記入した「継続願」を提出する必要がある。大学や専修学校が、学業への姿勢、成績などを基に貸与の継続にふさわしいかを審査。やむを得ない理由がないのに留年したり、ほとんど単位を取っていなかったりする場合は最も厳しい「廃止」と認定、学生は借りる資格を失う。最長1年貸与を止める「停止」もある。

昨年度の継続分についての審査は、91万人余りが対象となり、廃止は1万846人だった。一方、「このままの状況が続けば、次回の認定以後に廃止または停止する」という意味合いの「警告」となった奨学生が1万2329人いた。

機構は昨年7月、警告となった奨学生について大学側の審査が適切かチェックするため、初めて自ら「全件調査」に踏み切った。その結果、586人について大学側の判断を覆し「原則として廃止にすべきだ」と判断。昨年12月に大学側に通知した。特別な事情を認めて「停止」とした例も含め、継続希望があっても今年度から貸与を打ち切った。

機構広報課は「奨学金は学ぶことを応援する制度。学ぶ姿勢が見えないと認定された場合は、厳しく対応せざるを得ない」としている。背景には、経済状況の悪化を受けた学生の就職難などの影響で未返還の奨学金が増え、総額876億円(2011年度末)に上っていることがある。適格認定を厳格化し、将来の円滑な回収につなげたい考えだ。

一方、奨学金の問題に詳しい大内裕和・中京大教授は「やむを得ない事情で勉学に集中できない状況の学生もいる。回収の強化より、もっと奨学金を充実させて学習環境を整える方が大切だ」と話した。(大西史晃)

http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201305220784.html

奨学金返済に苦しむ若者 (「記者の目」浦松丈二)
(毎日新聞 2013年05月23日 02時13分)

「奨学金が若者をつぶす」―非正規雇用が広がり、奨学金返済に苦しむ若者が急増している現状を夕刊「特集ワイド」(4月19日東京本社版)で紹介したところ、ツイッターを含め約3000件の反響が寄せられた。「苦しくとも借金は返して当然」という批判もあったが、大半が「自分も似た境遇」など「返済できない状況」に共感するものだった。問題の根は広くて深いと改めて実感させられた。

今の大学生の半数以上利用

私は、この問題に取り組む初の全国組織「奨学金問題対策全国会議」が3月末に発足したことなどを受けて取材を始めた。まず、今の大学生の半数以上が奨学金を利用している事実に驚いた。日本最大の奨学金事業者、日本学生支援機構(旧日本育英会)は大学生向け有利子タイプの奨学金(年利最高3%)として月額12万円までほぼ無審査で貸し付けている。貸付残高は7兆円を超える。だが、大学を卒業しても4人に1人が非正規雇用などで正社員になれない時代、延滞者は2003年度末から11万人増加し、11年度末は33万人にも上っている。

記事で紹介した九州在住のパート事務職の女性(30)は高校、大学時代に同機構の奨学金を借り、元本と利子計800万円以上の債務を負った。父親が重い病気になったためだ。卒業後、IT企業に就職し、月額3万2000円の20年返済を開始したが、うつ病になって2年で退社。返済を続けられなくなった。

同機構にも救済制度はある。彼女は最長5年の返済猶予を使い切り、今年から減額返済(半額)を利用する。しかし、返済総額を減額する制度ではないため、最長で54歳まで返済期間が延びる。現在の月給は9万円余り。「借りたお金を返すのは当然だが、債務に縛られた一生だと思うと落ち込みます」と語った。

これは彼女の責任なのだろうか。一部の読者からは「高校を卒業して就職すればよかったのだ」との感想があった。一昔前ならそうできたかもしれない。しかし、高校新卒者向け求人はバブル末期・1992年の167万人から12年には20万人と実に87%も激減。奨学金問題に詳しい大内裕和・中京大教授は「仕事が見つからないから無理な金額を借りてでも進学するしかなくなっている」と説明する。

「自己破産すればいい」との声もあった。しかし、例えば彼女の場合、父親と叔父が連帯保証人になっている。奨学金はほぼ無審査無担保で貸してはくれるが、消費者金融と異なり無保証ではないからだ。自己破産すれば、家族で暮らす自宅を売却することを迫られる。不足分は叔父に請求される。多くの場合、自己破産もかなわないのだ。

「公共性」理由に貸金業法対象外

同機構は小泉純一郎政権下の04年に独立行政法人化された。「延滞額を5年で半減」などのノルマが課せられ、10年度からは3カ月以上の延滞者を個人信用情報機関に登録(ブラックリスト化)するなど回収を強化した。12年5月までにブラックリスト化された利用者は1万2281人に上る。登録されると自動車、住宅ローンやクレジットカードの申請が難しくなる。これでは人生設計に影響しかねない。

読者からは「教育ローンと改名すべきだ」との意見が目立った。同機構を所管する文部科学省学生・留学生課長の松尾泰樹さんは「奨学金は学生支援を目的として与信審査をせず、担保も取らずに貸与しており、金融事業とは異なる」としており、記事でも紹介した。無論、奨学金に救われる人も多いだろう。しかし、この問題に詳しいフリーライターの三宅勝久さんは「貸金業と同じことをやっているのに貸金業ではないと言い張って貸手責任を全く問われないところにエセ奨学金事業の本質があるように思います」と反論の手紙をくれた。同機構の奨学金事業はその公共性から貸金業法の対象から外されている。しかし、私は同機構の公共性に大きな疑問を持つ。現在の奨学金は、学生ではなく大学の学費値上げを支えているだけではないのか。

「これまでは、自分が多額の奨学金を背負っていることも、返済猶予を受けていることも恥ずべきことだと思い、周りの人にも話せませんでした。私のケースが世の中に知られ、制度の見直しにつながればうれしい」。冒頭に紹介した九州在住の女性は取材を受けてよかったと感想を送ってくれた。

彼女のように18歳時点の選択に人生を縛られてしまう奨学金制度には問題があると思う。現在の奨学金制度は毎年給料が上がっていく右肩上がりの時代に作られたものだ。低成長時代にはより安全な制度が必要とされている。(夕刊編集部)

http://mainichi.jp/opinion/news/20130523k0000m070118000c.html

毎日の記事が言っている「『奨学金が若者をつぶす』―非正規雇用が広がり、奨学金返済に苦しむ若者が急増している現状を夕刊「特集ワイド」(4月19日東京本社版)で紹介したところ…」とはこのような記事だった――

特集ワイド: 続報真相 若者つぶす奨学金
(毎日 2013年04月19日 東京夕刊)

◇ 回収強化する学生支援機構/返済延滞で年10%の“罰則”/「貧困ビジネス」との批判も

奨学金の延滞状況(毎日)「奨学金は、貧困ビジネスになっている」。先月31日、この問題で初の全国組織となる「奨学金問題対策全国会議」が設立された。共同代表になった大内裕和・中京大教授は冒頭のように語り、社会的な救済が必要だと訴えた。今、非正規雇用の広がりなどで奨学金の返済延滞が急増し、独立行政法人・日本学生支援機構(旧日本育英会)が回収強化に乗り出している。その実態を追った。

「寒い日でした。高校3年の冬、自転車の荷台にこたつを縛り付けて看護専門学校の寮に向かいました。車の多い環状7号線を通って東京・多摩地区の自宅から北区の寮まで。何時間かかったでしょうか。ようやく到着した時には排ガスで全身真っ黒でした」

東京都内で看護師として働く恵子さん(33)=仮名=は、18歳の門出をそう振り返る。病院でアルバイトして自活した。所持品はこたつの他にインスタントラーメン3個とお年玉の現金2万円。日本育英会(当時)の奨学金制度を恵子さんは知らなかった。

それから12年後。

「突然、裁判所から奨学金の支払い督促が届きました。不思議に思って母に聞いたところ、父の借金返済のために私名義で母が借りていたことを知りました」

実は恵子さんのような例は決して少なくないという。

奨学金は、消費者金融のように貸金業法の規制を受けない。有利子タイプはほぼ無審査、無担保で利用できる。現在、大学生の半数以上が奨学金を利用しており、日本最大の奨学金事業者、日本学生支援機構の貸付残高は7兆円を超えている。

同機構は小泉政権時代の2004年に独立法人化され、国から「延滞額を5年で半減」などのノルマを課せられた。しかし、若者層を中心に非正規雇用が広がり、逆に延滞額は増加。11年度末の延滞者数は33万人、延滞額は876億円に上っている。

同機構の申し立てで東京簡易裁判所が恵子さんに支払い督促を出したのは10年11月8日。財務省の指導を受けた同機構が、滞納者を個人信用情報機関に登録(ブラックリスト化)するなど回収強化に乗り出した時期にあたる。12年5月までに滞納3カ月以上の1万2281人を登録。支払い督促は00年度の338件から11年度に1万5件と約30倍になった。

恵子さんが督促されたのは156万円。高校3年間に貸与された元金に、延滞金62万4000円が加えられていた。同機構では毎月の返済が遅れると、割賦金(元金)に対して年10%もの延滞金が課せられるのだ。

「大金を一括請求されてただ驚き、途方に暮れました。でもこれまでに一度の連絡もなく、ペナルティーの延滞金まで支払えという態度は納得できなかった」と東京簡裁に異議を申し立てた。

11年12月の簡裁判決は、恵子さんが母親から説明を受けていなかったとして延滞金と時効分の支払いを免除した。同機構は控訴し、東京地裁は今年2月に一転して延滞金の支払いを命じた。奨学生には返済義務を明記した書類を渡していたという高校担当者の証言を証拠採用したのだ。同機構のずさんな住所調査から督促状が届かなかった事情は考慮されなかった。恵子さんは東京高裁に上告している。

訴訟を支援する首都圏なかまユニオンの伴幸生副委員長は「書類が本人に渡っていたという確かな証拠がないのに、延滞金まで認めた不当判決です。若者を支える奨学金に年10%もの延滞金というペナルティーがあるのがおかしい。負けられない裁判だと思っています」と強調する。

■  ■

より典型的なのは、九州在住の事務職パート、紀子さん(30)=仮名=のケースだ。高校2年間と大学4年間で利用した同機構の奨学金元本と利子は計800万円以上。紀子さんは「借りたお金を返すのは当然ですが、債務に縛られた一生だと思うと落ち込みます」とため息をつく。

毎月3万2000円で20年返済。救済がないわけではない。同機構には年収300万円以下なら最長5年の返済猶予がある。総額は減らないが、毎月の返済額を減らせる最長10年間の減額返済もある。ただ、いずれも延滞金があると申請できない。

紀子さんは返済猶予の5年を使い切り、今年から減額制度を利用する。最長10年間の減額(半額)を毎年申請して認められたとして、54歳になるまで返済に追われる。

「パートの手取りは残業代を含めて9万?10万円。減額後の返済額は1万6000円ですが、延滞すると減額が認められなくなり、返済も延滞金にあてられる。とても結婚や出産は考えられない」という。

実家の家計は苦しかった。高校を出たら就職するつもりだったが、地元の求人は遊技場店員など不安定なものばかり。「大学さえ出れば」と地元の私立大学に進学した。無利子と有利子(最高3%)を合わせて月15万円を借りた。一部を親の借金返済と妹と弟の学費に回した。

卒業後、IT企業に正社員として就職したが、うつ病になって2年で退社。満額返済できたのは1年半だけで、約750万円の債務が残る。実家に戻って両親と弟妹の5人で暮らすが、父親は障害基礎年金、母親は月5万円のパート収入だ。弟と妹も奨学金返済に追われる。

相談した弁護士には自己破産を勧められた。「考えてみましたが、父親と叔父が連帯保証人になっているので、自宅を売却しなければならないのです」。奨学金以外に道はなかったか? 「一度就職して学費をためて進学する道はあったが、高校時代には知るすべがなかった。もう少し学費が安かったらよかった」

文部科学省によると、12年の初年度納付金は国立大学で入学金28万2000円と授業料53万5800円。私立大学の平均は入学金、授業料と施設設備費で131万5882円。不況、デフレなのに右肩上がりだ。

■  ■

冒頭に登場した恵子さん。「内緒で奨学金を借りた母を恨んではいません。私が中学生のころ、父が事業に失敗して多額の借金を抱えました。母はパートで働きましたが、子ども3人を抱えて本当に大変だったと思います」

取り立てから逃れる父親から時々、母に電話が入った。「大きな仕事をしている。もうすぐ現金が入るから振り込む」。約束の日、うなだれて銀行から帰ってくる母親の姿が忘れられない。当時、自宅に上がって酒を飲むようになった消費者金融担当者の会社名を覚えている。

「実録『取り立て屋』稼業」を書いた元武富士社員の杉本哲之さん(34)に、その会社名を告げると「いわゆる中小規模の悪徳街金融業者です。自宅に上がり込むのは相手に恐怖心を植え付けて心を支配するため。洗脳です。多重債務者に無理やり奨学金や児童扶養手当、生活保護などを申請させて、その金で返済させるのが常とう手段です」と証言する。さらに「奨学金はほぼ無審査、無担保で月十数万円も借りられる。貸金業者にとって、親が返せなくなった借金を子どもに背負わせる都合のいい制度なのです」と話す。

■  ■

奨学金が金融事業化しているとの批判について、同機構を所管する文科省学生・留学生課長の松尾泰樹さんは「奨学金は学生支援を目的として、与信審査をせず、担保も取らずに貸与しており、金融事業とは異なる。回収は強化しているが、返済猶予もあり、返せない人から無理やり返してもらうようなことはしていない」と話す。ただ、その猶予は5年だけだ。

2月に全国44の弁護士会が一斉実施した相談会には「生活が苦しく返済できない」などの相談が453件寄せられた。奨学金問題対策全国会議の大内共同代表は「高卒の求人は激減しています。このため、親の経済力によって進学できない子どもは非正規、無業になる可能性が高いという『貧困の連鎖』が起きている。それを避けようとすれば無理な金額を借りてでも進学するしかない。なのに返済が遅れたら年10%の延滞金が課せられる。奨学金は貧困者を対象にもうける金融ビジネスになっている」と指摘する。

高校新卒者向け求人はバブル末期・92年の167万人をピークに、12年には20万人と87%も激減した。奨学金で進学しても就職難。自分の奨学金を完済する前に、子どもが借りるケースも出始めた。

対策会議事務局長の岩重佳治弁護士が訴える。「学生の立場に立った奨学金が今ほど求められる時代はない。真の学びを社会全体で支えていく仕組みが必要です」【浦松丈二】

大学の初年度納付金の推移http://mainichi.jp/feature/news/20130419dde012100056000c.html


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