<中国の大気汚染は止まらない>PM2.5の元凶、石炭依存の経済構造

中国は世界の半分の石炭を消費する石炭大国で、まもなく年間消費量は40億トンに達するといわれ、この10年で2倍に増えている。 毎年2億トンずつ増える、中国の石炭使用量。 石炭を最も大量に使用するのが、火力発電所。 中国では、いまだに発電に使うエネルギー資源の8割が石炭なのだ。 人口が世界の20%弱の中国が、世界の50%もの石炭を使うのは明らかに異常だが、背に腹は代えられぬ事情がる。 矛盾を多く抱える中国経済はいつまで持つのか…

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中国の大気汚染は止まらない…PM2.5の元凶は?
(日経2013/4/21 私が見た「未来世紀ジパング」より)

「ここの犬はやはり太陽を見ると、吠えるのだろうか?」。中国・内陸部の山西省と陝西省の鉱工業地帯を取材で回っていて思わずこんな質問をしたくなった。中国には「成都の犬は太陽を見て吠える」という言葉があるからだ。

四川省の省都、成都は周囲を山に囲まれ、年間300日以上が曇りか雨で、太陽が顔をのぞかせる日が少ない。そのため、めったにみかけない太陽を見て驚いた犬が吠えかけるという話だ。

■ 鉱工業都市、太陽見るのも難しく

成都の場合は自然環境によるものだが、山西省、陝西省の鉱工業都市は大気汚染によって太陽を見ることが難しくなっている。両省の境を流れる黄河はさほど川幅があるわけではないが、かかっている橋をたもとから見ればようやく半分あたりまでしか見えない。その向こうは赤茶けた濃霧のようなガスに遮られている。空には鉛色の雲がたれ込み、太陽の位置すらよくわからない。地元の人には申し訳ないが、歩いていて「息をするのが嫌になる」という感覚だ。

中国の大気汚染は最近始まった話ではない。私が北京に駐在していた1990年代末も北京市内では快晴という日は少なく、煙混じりのどんよりとした雲がいつも漂っていた。そんな日でも車で郊外に向け30分も走れば、きれいな青空がみえていたのを考えれば、市内の大気汚染はそれなりに深刻だったのだろう。

■ 北京五輪後に悪化した大気汚染

北京市は2008年のオリンピックに向けて、市内にある製鉄所など環境負荷の高い工場を市外に移転させ、排ガス規制に合致しない車を次々、取り締まって廃車にさせた。一時は北京の空気は昔よりよくなったと感じたものだ。ところが、オリンピックが終わった後、汚染は再び悪化、以前よりもっとひどくなった。

理由はいくつかある。第一は、自動車の増加だ。02年に325万台だった中国の自動車販売台数は12年には1930万台に達した。10年で6倍もの増加だ。08年のオリンピック開催以降の伸びが際だっており、3年で2倍になった。自動車の排ガスは今回、日本でも不安の種になっている微小粒子状物質「PM2.5」の原因のひとつだ。

だが、今回、私たちが着目したのは石炭だ。中国は世界の半分の石炭を消費する石炭大国で、まもなく年間消費量は40億トンに達するといわれる。人口が世界の20%弱の中国が、世界の50%もの石炭を使うのは明らかに異常だが、理由はある。

■ 石炭依存の経済構造

中国の大気汚染は止まらない2石油、天然ガスは国産で賄いきれず、輸入依存度が高まっているため、できるだけ国産燃料で値段も安い石炭を使いたいからだ。石炭は火力発電の燃料や製鉄所の高炉などで使うコークスの原料になる。さらに内陸では工場や住宅の燃料としても使われる。

石炭を燃やすと二酸化炭素に加え、硫黄酸化物、窒素酸化物など様々な汚染物質が排出され、煤塵も大量に出る。日本の石炭火力発電所はそうした汚染物質をほぼすべて除去したクリーンな排気しか出さないが、中国の石炭火力は汚染物質を大量に出している。脱硫装置は90%以上の石炭火力に装備済みで、集塵機もかなり装備されるようになってきているが、故障で使わなくなったり、運転にコストがかかると止めてしまうケースが多い。

中国内陸では「環境設備は検査の時だけ動かすもの」という経営者も少なくない。石炭は生産や輸送でも環境負荷が高い。鉄道貨物の輸送能力が限界にきている中国では、石炭をトラックで長距離輸送しており、トラックのディーセルエンジンがはき出す排気ガスもPM2.5の大きな要因とされる。

こうした石炭依存の経済構造を変えない限り、中国の大気汚染は改善が難しい。だが、石炭から天然ガスや風力など再生可能エネルギーに転換するには莫大なコストがかかり、また、伸び続ける電力需要に追いつくのも困難だ。

中国は原子力発電に期待をかけ、現在も30基近い建設を進めているが、それも需要増に追いつくには力不足。究極的には経済成長をスローダウンし、環境対応に政府予算をもっと支出するしかないが、中国の指導部にはそうした選択肢はない。

■ 成長鈍化許されず

成長鈍化は中国の体制問題につながってくるからだ。中国共産党の一党支配体制を支えてきた論理は「成長がすべてを解決する」。国民を豊かにすれば、国民は現体制を支持し、様々な社会問題も先鋭化しないという考えだ。だが、その論理も国民の健康問題につながる汚染の深刻化の前に見直しを迫られている。国民はより豊かになる以上に、健康で文化的な生活を求める段階に入ってきているからだ。

中国の指導層が国民の大多数が求めるものに耳を傾けるようにならなければ、中国の大気汚染は改善に向かわないのではないか。そう感じざるを得ない。

(編集委員 後藤康浩)

http://www.nikkei.com/article/DGXZZO48913460Y2A121C1000008/?dg=1

中国の頼みの綱…ニッポンの環境技術

中国の大気汚染は止まらない3大気・水・土壌、過去最悪の環境汚染が続く中国が、頼みとしているのが日本の環境技術だ。 新日鐵住金エンジニアリングの現地法人、BE3の中馬総経理は今、新日鐵の前身である八幡製鉄所で生まれた環境技術を中国に売るため、全土を飛び回っている。 かつて八幡製鉄所は、北九州市の大気を汚染し、「死の街」と言わしめた元凶。 そこで生まれたCDQと呼ばれるシステムが今、中国の製鉄所で売れに売れているのだ。 製鉄所は、火力発電所と並ぶ大気汚染の大元。CDQはコークス炉から出る有害な煙をシャットアウトし、発電まで出来てしまうという一石二鳥の技術….(TV Tokyo 「中国環境汚染の実態」http://www.tv-tokyo.co.jp/zipangu/next/#section1)

中国経済の失速の可能性を英フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)が4月3日に記事にしていた――

中国経済が転倒しかねない理由
(Financial Times(翻訳)2013/4/4)

今後10年間で中国の経済成長は鈍化する。恐らく急減速するだろう――。これは意地の悪い部外者の見解ではない。中国政府自身の見解である。問題は、この成長の鈍化がスムーズなのか、それとも急激なのか、だ。その答えは、中国自身の将来のみならず、世界の大部分の将来をも左右する。

■ 中国エコノミストの見方が明らかに

中国経済成長失速中国の公式見解が公表されたのは、中国国務院発展研究センター(DRC)が影響力のある外国人と中国政府高官を一堂に集めて先月開催した中国開発フォーラムでのことだった。ここで配布された背景説明書の1つに、DRCのエコノミストたちによる論文「今後10年間の見通し:潜在成長率の低下と新たな成長局面の始まり」が含まれていたのだ。

これによると、2000年から2010年にかけて年10%を超えていた中国の経済成長率は、2018年から2022年にかけては年6.5%になる。この成長の減速は、2010年第2四半期以降の成長率低下とも符合するという。

論文では、この減速の理由は2つ考えられるとしている。具体的には、中国が「中所得国のわな」という産業発展の中断状態に陥っているか、先進国に追いつき始めるときに生じる「ナチュラルランディング(自然着陸)」に対処しているかのどちらかだという。後者のシナリオは、1970年代の日本と1990年代の韓国で実現している。10%の経済成長を35年間続けてきた中国にも、ついにその時がやってきたというわけだ。

成長鈍化の見立てが正しそうだと論文の執筆者たちが考える理由は以下の通りだ。第1に、インフラ投資の潜在的な可能性は「著しく低下」している。中国の固定資産投資に占めるインフラ投資の割合は、過去10年間で30%から20%に縮小した。

第2に、資本利益率が低下し、過剰設備が増大している。限界資本係数(ICOR)――1単位の投資がどの程度の経済成長をもたらすかという尺度――は2011年に4.6という1992年以降で最も高い水準に達したが、現在では同じ1単位の投資をしてもこれほどの成長は実現しなくなっている。

第3に、労働供給の伸び率が急速に低下している。第4に、都市化はまだ進行中だが、そのペースは鈍化している。第5に、地方政府の財政や不動産分野でリスクが増大している。

■ 投資の減退が経済鈍化に直結

これだけの理由がそろった以上、低成長への移行は始まったと考えてよいと論文の執筆者たちは書いており、今後の見通しを経済モデルを使ってより厳格に分析している。そこで得られた結果のうち最も人目を引くのは、長らく続いたトレンドの転換だ。

中国では2011年、国内総生産(GDP)に占める投資(固定資本形成)の割合が49%にまで高まったが、2022年にはこれが42%に低下すると予想されている。一方、GDPに占める消費の割合は48%から2022年には56%に高まると見込まれている。

また、GDPに占める工業の割合も45%から40%に縮小し、サービス業の割合が45%から55%に急拡大するという。投資主導ではなく、消費主導の経済になるというわけだ。供給サイドでは、投資の減速に伴う資本ストックの伸びの鈍化が経済成長減速の最大の要因になっている。

経済成長の減速が間近に迫っているという見方は、まずまず妥当だと思われる。しかし、もっと楽観的な見通しを示すこともできるだろう。

米国の調査機関コンファレンス・ボードのデータによれば、現在の中国の1人当たりGDP(購買力平価ベース)は1966年の日本や1988年の韓国のそれと同じだ。この水準から日本は7年間、そして韓国は9年間も超高速な成長を続けた。

また、先進国にどの程度追いついたかを示す指標の1つとして米国の水準に対する比率を計算すると、現在の中国は1950年の日本や1982年の韓国と同じ状況にあることが分かる。これなら、中国の成長余地はさらに広がることになる。中国の1人当たりGDPは、米国の5分の1の水準を超えたばかりで、伸びしろはまだかなりありそうだ。

この楽観的な見方を否定する根拠もある。中国は日本と比べて、ケタ違いに大きい。だとすると、特に世界経済の中に見いだせるチャンスは相対的に小さいはずだ。さらに、温家宝前首相がよく述べていたように、中国の経済成長は「バランスと協調を欠き、持続不能」だった。この見方は多くの面で正しい。

しかし最も重大なのは、中国の成長が、生産能力拡大の源泉としてだけでなく需要の源泉としても投資に依存してきたことだ。投資に対するリターンは最終的に消費拡大に左右されるため、一貫して上昇する投資率は持続不能だ。

■ 低成長経済への移行に3つのリスク

ここで浮上するのが、それよりはるかに悲観的な見方だ。いみじくも日本が示したように、高投資・高成長経済から低投資・低成長経済への移行をうまく管理することは極めて困難だ。筆者は少なくとも3つのリスクを想像できる。

第1に、予想される成長率が10%超から例えば6%に低下したら、必要となる生産資本への投資率は劇的に下がる。一定したICORに基づけば、投資率はGDP比50%から例えば同30%に低下するだろう。進展が速ければ、投資の落ち込みはそれだけで恐慌を引き起こす。

第2に、信用の急拡大は、不動産投資をはじめ限界収益が低下していく投資への依存を伴っていた。こうした理由から、成長率の低下は不良債権の増加を意味する可能性が高い。過去の成長が続くとの前提に立って行われた投資では特に不良債権が増えるだろう。中国の金融システム、中でも急拡大している「影の銀行システム」の脆弱性は急激に高まりかねない。

第3に、家計貯蓄率の低下を見込む理由がほとんど存在しない以上、予想されている対投資での消費拡大を維持するためには、国営企業を含む企業部門から家計部門への同規模の所得移転が必要になる。これは実現可能だ。労働力不足の拡大と金利の上昇は所得移転を円滑にもたらすかもしれない。

だが、たとえそうなったとしても、その結果生じる企業収益の減少が投資の激減を加速させるという明白なリスクがある。

政府の計画は、言うまでもなく、より均衡が取れていて成長率が低い経済への移行を円滑に進めることだ。これは決して不可能ではない。政府は必要な手段をすべて持っている。さらに、経済は依然大きな可能性を秘めている。だが、投資崩壊と金融混乱を招かずに成長率低下を管理することは、どんな一般均衡モデルが示唆するよりもはるかに困難だ。

長年にわたり最高のパフォーマンスを見せたが、必然的に訪れる減速をうまく管理できなかった経済国は簡単に思い浮かぶ。日本がその一例だ。中国は今なお絶大な潜在成長力があることもあり、その運命を避けられるはずだ。だが、事故が起きる可能性は高い。1つの偶発的な事故が中国の台頭を完全に止めてしまうとは思わない。だが、向こう10年間は過去10年間よりもずっと厳しい時期になるだろう。

(2013年4月3日付 英フィナンシャル・タイムズ紙/Financial Times(翻訳))

http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM0305K_T00C13A4000000/

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