クレーム噴出、目立つ欠航…成田発格安航空の実態|LCC就航1年、果たして、日本の空に定着するのか?

格安航空会社(LCC = Low Cost Carrier)、さーて、皆さんはどう思っているのかな? 私は、アメリカでLCCを利用したことはあるが日本のLCCを利用したことはまだない。 そもそも、アメリカの通常航空会社自体があまりサービスが良くない。 日本の通常航空会社の機内サービスはいささか過剰ではないかとずーっと思っていたが、それが当たり前と思っている多くの日本人利用客にとってはLCCはある種のカルチャーショック的なものがあったと思う。 安ければ安いなりに何かがある。 安全まで削って、空飛ぶ高速バス(=陸援隊)のようなことが無ければいいのだが… 以下は、日経「コンフィンデンシャル」の記事のクリップ――

成田発格安航空の実態1クレーム噴出、目立つ欠航…成田発格安航空の実態
(日経 2013/3/11 7:00)

予約確認できないウェブサイト、つながらないコールセンター…。 日本の国内線に格安航空会社(LCC)が就航して1年。空の旅を身近にしたのは確かだが、利用者からのクレームがいまだ絶えず、欠航も目立つ。日本の空に果たして定着するか。

■ ドライな対応にクレーム急増

昨年12月。新千歳―成田間のジェットスター・ジャパンの往復チケットをネットで購入した札幌在住の田島英子(仮名、37)は東京で1泊した後、ウェブサイト上で復路便の予約確認をしようとした。ところが、予約確認のサイト画面がうまく作動しない。コールセンターに電話してもオペレーターにつながらない。そんな状態が1時間半…。当日中に札幌に戻らなくてはならないので、予約できていなかった場合に備え、やむなく新規に予約した。

成田空港のジェットスターのカウンターに着くと復路便は予約できていた。追加予約した便の取り消しを求めたが、係員は「予約取り消しの払い戻しはできません」と、にべもない。さらに次の説明が追い打ちをかける。「ウェブで予約確認できない場合、成田まで来て予約確認する方がけっこういらっしゃいますよ」。自分が責められているような気がしたという。

「予約変更したいのにコールセンターに電話がつながらない」(50代男性)。「予約した便が勝手に早朝便に変更され、キャンセルを申し出たが応じてもらえない」(40代女性)――。全国の消費者センターにはLCCに関する苦情が相次いでいる。2012年の航空サービスについての苦情件数は1238件と前の年に比べ44%も増えた。

LCCは機材をできるだけ少人数で効率的に運営し、サービスも必要最小限に抑えてコストを減らし、運賃を既存大手に比べ半分以下の格安にする。機材が少ないうえ、空港での待機時間を短くして運航するので、トラブルが発生すると欠航がでやすい。「欠航が出ても原則代替便はない」「キャンセルしても運賃が戻らない」など対応はドライだ。

一足先にLCCが普及した海外では、格安と引き換えの不便さを利用者はある程度理解して利用しているが、大手の高いサービス水準や、時刻表通りに正確に走る交通網に慣れた日本の利用者には戸惑いが大きいようだ。

■ 4カ月でCEOが交代したエアアジア

昨年、LCC市場に参入した3社のうちジェットスターは豪州、エアアジア・ジャパンはマレーシアのLCCが運営母体。本国で成功したビジネスモデルを持ち込んだものの、「本国基準」のサービスが「日本人基準」に合わないギャップに直面する。

成田発格安航空の実態2ジェットスターは就航した昨年7月の利用率は85%と好調な出足だったが、繁忙期の夏を過ぎると客足が遠のき11月には65%にまで低下。12月以降は利用率を公表しなくなった。エアアジアもスタートした昨年8月は84%だった利用率が10月、11月には50%台にまで低下。リピーターが増えず、両社の目算は大きく狂った。

エアアジアは12月、状況打開を狙って、就任からわずか4か月でトップを交代。「ウェブが使いにくいことがリピーターの増えない原因だった」――。急きょ登板した最高経営責任者(CEO)の小田切義憲の最初の仕事はウェブシステムの改良だった。エアアジアが導入したウェブ予約システムは、マレーシアの本国モデルをそのまま日本語に訳したものに近い。データの処理速度が遅いうえ、途中に英語の部分が残るなど日本人には使いにくかった。

小田切はマレーシアのエアアジア本社からITシステム担当者を呼び、ピーチ・アビエーション、ジェットスター、エアアジアのそれぞれのウェブサイトで予約が完了するまで時間を計測してみせた。1位は断トツでピーチ、2位ジェットスター、エアアジアは最下位。「日本人のスピード感からは根本的に遅すぎる」と改良を迫った。

■ LCCを悩ます「雪」

成田発格安航空の実態3LCCはもうひとつの日本特有の事情に翻弄されている。雪だ。

ジェットスターが国内線に参入した昨年7月から今年3月2日までに発生した欠航便数は203。航空会社の運航品質を示す重要な指標である「定時出航率」は10月は92%だったが、1月には77%に落ちた。新千歳―成田間のフライトで雪による遅延が増えたことが響いた。

雪の少ない豪州育ちのジェットスターや東南アジア生まれのエアアジアにとって新千歳空港は鬼門。雪が降ると様々な余分な作業が発生する。機体についている雪が氷になると揚力に影響するため、出発するごとに機体から除雪材をまかなければならない。搭乗機までバスで移動して歩いてタラップを上がる乗客の動きも鈍くなる。こうした時間が積み重なり、定時出航を難しくする。

■ 成田空港の厳しい「門限」

ジェットスターとエアアジアの苦戦の要因は、参入を急ぐ余り日本人の嗜好や気象条件に十分に対応しきれなかったことにある。しかし、両社が実力を出しきれないのは日本の空港インフラの問題もある。

成田発格安航空の実態4頼むから間に合ってくれ――。

8月15日、午後10時過ぎ。成田空港近くのエアアジア・ジャパン本社(現在は成田空港内に移転)は緊迫した空気に包まれていた。

沖縄―成田の最終便が成田空港の発着制限時間内の午後11時に間に合うかどうか、瀬戸際にあった。お盆の混雑で朝から運航便は遅れがち。最終便が沖縄を出発するころには1時間10分あった余白時間をほぼ使い切っていた。3日前には制限時間に間に合わず、急きょ羽田空港に着陸した。欠航は避けたい。かといって、目的地以外での着陸を繰り返しては基本的な運航品質に関わる。社員は祈るような気持ちで最終便の軌跡を追った。

午後10時59分55秒。残りわずか5秒で最終便は滑走路に降り立った。ほっと胸をなで下ろすエアアジアの関係者。制限時間ぎりぎりの運航は今なお続いている。

成田空港は周辺住民への配慮から、離着陸が許されているのは午前6時~午後11時。少ない機材をフル稼働させるLCC運航には大きな制約だ。保有7機のジェットスターの就航から直近までの欠航率は2.8%。223機を保有する日本航空の昨年1年間の国内線欠航率1.4%と比べると欠航率の高さが目につく。ジェットスターの場合、天候以外の理由で欠航になったケースが全体の53%で日航は34%。時間制限に間に合わず早々に欠航を決めるケースが多いのだ。

通常、LCCは欠航になっても原則として、他社への振替便を用意するなどの対応はない。だが、就航初日に欠航を出してしまったジェットスターはホテル宿泊代や交通費、無料券を配っている。世界のLCCの常識に照らすと異例の措置だが、それだけ欠航による利用者離れを恐れている。

1路線で安定的な黒字を出すには1日4往復分(8便)の運航が必要とされるが、エアアジアやジェットスターはせいぜい3往復(6便)分にとどまる。単純計算で4往復に比べ売り上げは25%減る。人件費にも無駄がでる。一般的な航空会社の勤務協定では、客室乗務員やパイロットなどクルーの連続勤務は国内線では2往復程度が限界とされる。1機材1日あたりクルーが2組必要になる計算だが、3往復分しか飛べないと後半のクルーは半分しか稼働できない。

■ 100万円の時計

成田発格安航空の実態5LCC側も当初から成田の制約はわかっていたが、それでも進出を決めたのは着陸料の割引やLCC専用ターミナルなど「いろんなインセンティブを考えている」という空港側の優遇策を期待してのことだった。ところが、既存航空会社との調整などが難航し、空港側の動きは鈍い。それどころが1円単位でコスト減らしに取り組むLCCの神経を逆なでするようなこともあった。

「時計いかがですが」――。昨年9月、成田空港の運営会社の職員がエアアジアに時計の売り込みにきた。カウンターの上部に設置する大型のデジタル時計だ。CEOの小田切は時計の金額を聞いて耳を疑った。その額100万円。コストを極限まで切り詰めるLCCが時計にそんな金額を出せるはずがない。「どこまで本気でLCCの優遇措置を考えてくれているのか…」。コスト意識のあまりの違いがこんな疑心を抱かせている。

■ 関西空港を拠点とするピーチは…

集客に有利な成田空港を拠点にしながらも、苦戦するエアアジアとジェットスター。一方、関西空港を舞台にしたLCCの世界はやや異なる光景だ。

2月のある日、関西空港のLCCターミナルに足を運んだピーチCEOの井上慎一は、自社便に利用者が列をなす光景に目を疑った。閑散期の2月にピーチでは満席便が続出している。「感覚的だが、リピーターがかなり増えている。それと『これまでLCC大丈夫かな』と遠巻きに見ていた方が利用し始めているのでは」と井上は分析する。

全日空の社員だった08年、LCC参入の準備を指示された井上がまずこだわったのは、航空会社としての基本品質。「汚くてもうまい中華料理屋に行列ができるのと一緒で、まず安全でダイヤ通りの運航と使いやすさが最優先」と判断した井上の頭の中には、発着時間制限がある成田を拠点空港にする選択肢はなく、24時間利用可能な関西空港を選んだ。関空もLCC誘致を空港間競争の生き残り策の柱に据え、いち早く使用料の安いLCCターミナルを建設するなどピーチ支援に動いた。

ウェブシステムを日本人が好むスピードに合わせて設計した。バーコードで簡単にチェックインできる仕組みを取り入れ、当初想定外だった60歳以上の利用客も取り込んでいる。キャビンアテンダント(CA)の制服は日本人の顔が一番きれいに見えるオレンジを加味した紫色を採用。徹底してLCCを日本流にカスタマイズした。

■ 6000円の「神戸牛」機内食も

成田発格安航空の実態6ピーチの運航品質は安定している。昨年3月の就航から今年1月末までの平均定時出航率は83%とLCCの中では群を抜く。欠航率も大手並みの1%にとどめ、利用率も76%を確保する。安定した運航が顧客を呼び込んでいることが数字に裏付けられている。3年目で単年度営業黒字を達成できる可能性が高まっている。

「20食限定で6000円の神戸牛ステーキを出せないかな」。井上は今、社内でこんなアイデアを出している。運賃を抑えた分だけ財布のヒモが緩むはず。目指すのは格安運賃だが、既存大手を上回る満足度のLCC。顧客の要求水準の高い日本で磨いたサービス力を武器に新しいLCCのモデルを作り上げ、本場アジアへの本格進出を狙う。

苦戦が続いた海外発LCC組も反転攻勢に向けて動き始めた。エアアジアは旅行会社の仲介販売の比率が高い日本の事情に合わせ、販売をウェブだけに頼らず、旅行会社を活用して顧客層を広げる取り組みを開始。ジェットスターも大株主の日本航空と共同運航便を6日から実施し、日航の顧客の取り込みを狙う。両社とも中部空港への進出を決めた。制約の多い成田の依存度を下げることで、遅延や欠航を減らそうとしている。

格安のLCCの安全性を不安視する声もまだ一部にある。安全基準は既存大手もLCCも同じで「低価格=低安全性ではない」とLCC各社は訴えるが、隙もあった。昨年3月にピーチで非常用脱出装置が飛び出すトラブルが発生。11月にはジェットスターが整備士の選任で安全管理上の問題あるとして、国土交通省から厳重注意を受けた。まずは安全に関わる対策を充実させ、利用者からの信頼を確実にすることが2年目の最優先課題だ。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK0804H_Y3A300C1000000/

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