脅威の冷凍保存技術でニジマスからヤマメを作り出す|世界初!東京海洋大の凍結細胞移植とは!?

<脅威の冷凍保存技術でニジマスからヤマメを作り出す|世界初!東京海洋大の凍結細胞移植とは!?> ☛ 東京海洋大学の研究チームは、冷凍保存技術を使ってニジマスに準絶滅危惧(きぐ)種のヤマメを産ませることを可能にする凍結細胞移植による次世代生産に世界で初めて成功したと発表した。 どういう事なのか? ニジマスの稚魚に冷凍保存したヤマメの細胞を移植する。そうすると、オスのニジマスからはヤマメの精子が、メスからは卵ができ、これらを交配させるとヤマメの稚魚が生まれたというのだ。 ニジマスからヤマメを作り出す。 凍結細胞移植というらしい。

今朝、5時25分にNHKニュースが第一報を配信した。 東京海洋大・大学院海洋科学技術研究科の吉崎悟朗教授らのグループによる研究成果で世界初だ!。 この研究成果は1月14日付けの「米国科学アカデミー紀要」の電子版に掲載された(詳細は後段に掲載)。 この技術によって「世界中に、絶滅が危惧される魚がいるが、精子の元になる細胞を冷凍しておけば、絶滅を防ぐことができる可能性がある」と吉崎教授は言っている。 このニュースに関し調べたがそれを紹介したい。 先ずは第一報を伝えたNHKニュースから――

絶滅危惧の魚 細胞移植で保存1「絶滅危惧の魚 細胞移植で保存も」
(NHK 1月15日5時25分)

絶滅危惧の魚 細胞移植で保存2冷凍保存した魚の精子の元になる細胞を別の魚に移植することで子孫を残すことに、東京海洋大学の研究チームが成功し、絶滅のおそれがある魚の種の保存につながると期待されています。

淡水や海水にすむ一部の魚は、稚魚のうちに別の魚の精子の元になる細胞を移植されると、その魚の精子や卵を作ることが知られています。 この技術を、冷凍保存した細胞にも応用できるか検証するため、東京海洋大学の吉崎悟朗教授らの研究チームは、ニジマスの稚魚に冷凍保存したヤマメの細胞を移植する実験を行いました。 その結果、オスのニジマスからはヤマメの精子が、メスからは卵ができ、これらを交配させたところ、新たにヤマメの稚魚が生まれたということです。

研究チームは、同様の方法でカワマスにイワナの精子や卵を作らせることにも成功しているということです。 研究チームでは現在、山梨県の西湖で2010年に再発見されたクニマスの細胞を冷凍保存する作業も進めているということで、吉崎教授は「世界中に、絶滅が危惧される魚がいるが、精子の元になる細胞を冷凍しておけば、絶滅を防ぐことができる可能性がある」と話しています。

絶滅危惧の魚 細胞移植で保存3絶滅危惧の魚 細胞移植で保存4絶滅危惧の魚 細胞移植で保存5絶滅危惧の魚 細胞移植で保存6絶滅危惧の魚 細胞移植で保存7http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130115/k10014795361000.html

NHKのニュースに書いてある凍結細胞移植の部分をおさらいしてみよう。

● 淡水や海水にすむ一部の魚は、稚魚のうちに別の魚の精子の元になる細胞を移植されると、その魚の精子や卵を作ることが知られている

● この技術を、冷凍保存した精巣(凍結細胞)にも応用 ⇒ ニジマスの稚魚に冷凍保存したヤマメの精巣(凍結細胞)を解凍し移植する

● そうすると、オスのニジマスからはヤマメの精子が、メスのニジマスからはヤマメの卵ができる

● これらを交配させるとヤマメの稚魚が生まれる

この凍結細胞移植を図解するとこうなる(画像クリックで拡大)――

凍結細胞移植・ニジマスからヤマメ参考図

東京海洋大学HP☛ 国立・東京海洋大学のHP(https://www.kaiyodai.ac.jp/)へ行くと「News & Topics」の欄に「2013.01.15 凍結細胞から生きた魚の作出が可能に・絶滅危惧魚種の永久保存が実用レベルで可能」というのがリストされている。 それをクリックすると詳しい内容が読める。 直リンクは  https://www.kaiyodai.ac.jp/topics/2101/18035.html。  そのウェッブ・ページにはこういうことが書いてある――

吉崎悟朗(海洋生物資源学部門 教授)の研究グループは、ニジマスの精巣を液体窒素内で凍結保存する方法を開発し、解凍後の精巣から単離した精原細胞(精子の元になる細胞)を孵化直後のニジマス宿主へと移植することで、この宿主が雄の場合は凍結細胞に由来する機能的な精子を、雌の場合は凍結細胞由来の機能的な卵を生産することを明らかにしました。さらに、凍結精巣由来の細胞を移植した雌雄を交配することで、凍結細胞を起源とする正常な次世代個体を生産することに成功しました。

近年、乱獲や環境破壊により多くの魚種が絶滅の危機に瀕しています。一般に絶滅危惧種の遺伝子資源を保存する方法としては卵や精子、さらには胚の凍結保存が挙げられますが、魚類の卵はサイズが大きいうえ、脂肪分に富むため、卵や胚の凍結保存研究は全く進んでいませんでした。今回の研究で開発した技術を用いることで、絶滅危惧種の精巣を凍結しておきさえすれば、たとえ当該種が絶滅した場合でも、現存する近縁種に凍結細胞を移植し、絶滅種の卵や精子を、ひいては受精を介して“生きた魚類個体”をいつでも再生することが可能になりました。

本研究の成果は、文部科学省国家基幹研究開発推進事業海洋資源利用促進技術開発プログラムにおける研究テーマ「生殖幹細胞操作によるクロマグロ等の新たな受精卵供給法の開発」および科学研究費補助金新学術領域「サケ科魚類生殖腺GSC-ニッチシステムを構成する細胞の同定と季節制御」において、東京海洋大学大学院海洋科学技術研究科教授吉崎悟朗が得たものであります。発表論文は2013年1月14日の米国科学アカデミー紀要電子版に掲載されます……

さらに解説のPDFへのリンクが掲載されているが、その内容を転載しよう――

「凍結細胞から生きた魚の作出が可能に-絶滅危惧魚種の永久保存が実用レベルで可能に―」

【成果の概要】

研究の背景と経緯

近年、乱獲や環境破壊により多くの魚種が絶滅の危機に瀕しています。一般に絶滅危惧種の遺伝子資源を保存する方法としては卵や精子、さらには胚の凍結保存が挙げられますが、魚類の卵はサイズが大きいうえ(凍結保存が可能な哺乳類の10-80倍の直径、体積ではその3乗)、脂肪分に富むため、卵や胚の凍結保存研究は全く進んでいません。

2007年に吉崎のグループが孵化前後の胚あるいは初期の稚魚が保持している未熟な生殖細胞である始原生殖細胞を凍結し、これを宿主個体へ移植することで、凍結細胞由来の卵や精子を生産可能であることを示しました。 しかし、これらの方法では、移植細胞の供給に、孵化前後の胚、あるいは稚魚が必要であるため、受精卵の生産が可能になっていない多くの絶滅危惧種に本法を応用することは現実的な選択肢ではありませんでした。

そこで、絶滅危惧種の精巣を凍結保存し、ここから調整した細胞を宿主へと移植することで、凍結細胞由来の卵や精子、さらには次世代個体を生産することができれば、上記の問題が一挙に解決できると考えました。 本研究では、精巣細胞をどのように凍結すれば細胞の生残率が高まるのか? また解凍後の細胞を移植しても宿主はドナー由来の卵、精子を生産できるか? といった点を明らかにするため、研究を行いました。

研究の内容

まず、ニジマス精巣を丸のままの状態でトレハロースや鶏卵の卵黄を含む保存液中に浸した後、-1℃/分というゆっくりとした速度で-80℃まで冷却し、その後液体窒素中で凍結しました。 これらの精巣を解凍し、精巣中に含まれる精原細胞(精子の元になる細胞)の生残率を確認したところ、約30%であることが確認されました。 また、この生残率は凍結期間を1日から728日まで延長してもまったく低下しないことを確認しました。なお、理論的には液体窒素内で細胞を一旦凍結することができた場合、これらは半永久的に保存可能であるといわれています。

次に98日間液体窒素内で凍結した精巣をばらばらに解離し、これを孵化直後のニジマス宿主に移植しました。 この際に宿主ニジマスが自身の卵や精子を生産しないように、通常の個体(父由来の染色体セットと母由来の染色体セット、合計2セットの染色体を保持する)に加え、1セット余計に染色体セットを保持する3倍体ニジマスを作出し、これを移植実験に用いました。

これらの3倍体は、卵や精子の成熟が進まず、完全に不妊になることが知られています。 そこで、作出した3倍体ニジマス孵化稚魚の腹腔内に解凍後のニジマスの精巣細胞(精原細胞を含む)を移植しました。 孵化直後の稚魚は、免疫系が未熟であるため、異系統由来の生殖細胞を移植しても拒絶が起こらないことが明らかになっています。 移植したニジマスの精原細胞は自発的に宿主の生殖腺に向かって、アメーバー運動により移動し、そこに取り込まれました。

さらに、3倍体ニジマス宿主を継続飼育した結果、凍結精巣由来の精原細胞は雄ニジマス精巣内では正常な精子を、雌ニジマス卵巣内では正常な卵を生産することを明らかにしました。 なお、これらの宿主は卵や精子を3年間にわたり生産し続けました。 次に、得られた卵と精子を人工授精した結果、凍結精巣に由来する正常な次世代を大量生産することに成功しました。

吉崎らの研究グループは、精原細胞の異種間での移植により、ヤマメにニジマスをうませることや、クサフグにトラフグを生ませることにも成功しており、今回の精巣凍結技術と異種間移植を組み合わせることで、絶滅危惧種の精巣さえ凍結しておけば、当該種が絶滅した場合でも、絶滅種由来の卵や精子、ひいては次世代個体を生産できることが期待されます。 また、今回開発した技術は手法的にも非常に簡便で冷凍庫と液体窒素以外に特殊な機器を必要としないため、すくなくともサケ科魚類に関しては、ただちに実際の絶滅危惧種の保全プロジェクトを開始することが可能であります。

今後の展開

① 米国で絶滅の危機に瀕しているベニサケの地域集団を保存するプロジェクトが進行中です。
② 最近、山梨県西湖で再発見されたクニマスの精巣凍結プロジェクトが進行中です。
③ 将来、養殖魚の品種が樹立された際は、これらの品種を凍結精巣の状態で永久保存することが可能です。わが国で口蹄疫が発症した際に、種牛の処分が問題になりましたが、同様の問題が魚類で発生した場合には有効な方法です。

用語解説
1) 始原生殖細胞:発生の極めて初期、すなわち個体の性が未だ決定されていない時期の動物が保持する生殖細胞。精巣内では精子へ、卵巣内では卵へと分化する。
2) 精原細胞:精巣内に存在する精子の源となる細胞。精原細胞の一部は幹細胞としての能力を保持している。従来、精原細胞は精子になることが決定されていると考えられていたが、本研究グループ研究により、この細胞は卵と精子の両者に分化する能力を保持していることが近年明らかとなった。

(出典: 国立・東京海洋大学 「凍結細胞から生きた魚の作出が可能に-絶滅危惧魚種の永久保存が実用レベルで可能に―」 https://www.kaiyodai.ac.jp/topics/2101/18035/file/0115yoshizaki.pdf

さて、東京海洋大ウェッブ・ページ掲載情報によると、吉崎悟朗教授らグループによるこの研究成果を発表した論文は「2013年1月14日の米国科学アカデミー紀要電子版に掲載されます」とあるのでさっそく調べてみた。 「米国科学アカデミー紀要」は英語でProceedings of the National Academy of Sciences〔【略】PNAS〕だ。 ウェッブサイトは http://www.pnas.org/

PNAS 1吉崎悟朗教授の発表論文をさがしてみたところ、「Abstract」(要約)が http://www.pnas.org/content/early/2013/01/09/1218468110.abstract に掲載されていた――

Generation of functional eggs and sperm from cryopreserved whole testes

Abstract

The conservation of endangered fish is of critical importance. Cryobanking could provide an effective backup measure for use in conjunction with the conservation of natural populations; however, methodology for cryopreservation of fish eggs and embryos has not yet been developed. The present study established a methodology capable of deriving functional eggs and sperm from frozen type A spermatogonia (ASGs). Whole testes taken from rainbow trout were slowly frozen in a cryomedium, and the viability of ASGs within these testes did not decrease over a 728-d freezing period. Frozen-thawed ASGs that were intraperitoneally transplanted into sterile triploid hatchlings migrated toward, and were incorporated into, recipient genital ridges. Transplantability of ASGs did not decrease after as much as 939 d of cryopreservation. Nearly half of triploid recipients produced functional eggs or sperm derived from the frozen ASGs and displayed high fecundity. Fertilization of resultant gametes resulted in the successful production of normal, frozen ASG-derived offspring. Feasibility and simplicity of this methodology will call for an immediate application for real conservation of endangered wild salmonids.

PNAS 2 Generation of functional eggs and sperm論文の全文は PDF版で http://www.pnas.org/content/early/2013/01/09/1218468110.full.pdf なのだが、残念ながら会員(有料)登録していないと閲覧できない。

それにしても、「すばらしい」の一言に尽きる研究成果だと思う。 なんだかんだ言っても日本には優秀な学者、技術者が一杯いる。 大事にしなければ外国に引っこ抜かれるか、自分で出て行ってしまう。 「二番じゃダメなんですか!」などと言っていたアホー、否、レンホー、などがいる民主党政権とバイバイしてよかった、まさにグッド・バイだ。

「はやぶさ2」の予算も増やして欲しいんだが…安倍さん、増額して頂戴!

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