グリーンランドほぼ全域 氷とける

グリーンランドほぼ全域 氷とける
(NHK 7月25日 17時46分)

北極圏のグリーンランドを覆う氷の表面が、今月中旬にほぼ全域でとけたことが、NASA=アメリカ航空宇宙局などによる観測で分かり、NASAでは、暖かい空気の塊が上空にとどまり、前例のない規模で氷がとけだしたものとみて、観測を続けています。

これは、NASAが24日、アメリカの大学の研究チームなどとともに人工衛星による観測データを分析して発表したものです。 それによりますと、グリーンランドを覆う氷の表面がとけた割合は、今月8日の時点で、全面積の40%ほどだったのが、その後、急速に氷がとけ出し、4日後の12日には、97%にまで達し、ほぼ全域で氷の表面がとけたことが分かりました。

グリーンランドを覆う氷の表面は毎年夏に全面積のおよそ半分がとけるものの、これほどの規模で氷がとけたのは、30年余りの観測史上、例がないということです。 また、島の中心部に位置する標高およそ3200メートルの山の頂上付近の氷も、およそ120年ぶりにとけ出したことが確認されたということです。 その原因について、NASAでは、暖かい空気の塊がグリーンランドの上空にとどまったためとみていて、海面上昇などにつながるおそれがないか注意深く観測を続ける必要があるとしています。

http://www3.nhk.or.jp/news/html/20120725/k10013849321000.html

このNHKのニュースは画像がないので、NASAのサイトを調べてみたところ、“Satellites See Unprecedented Greenland Ice Sheet Surface Melt” というタイトルで7月24日付でこういうのが掲載されていた。 左が7月8日時点での衛星写真で氷が40%溶けているのもの、右が7月12日で97%溶けている(画像クリックで拡大)――

Extent of surface melt over Greenland’s ice sheet on July 8 (left) and July 12 (right). Measurements from three satellites showed that on July 8, about 40 percent of the ice sheet had undergone thawing at or near the surface. In just a few days, the melting had dramatically accelerated and an estimated 97 percent of the ice sheet surface had thawed by July 12. In the image, the areas classified as “probable melt” (light pink) correspond to those sites where at least one satellite detected surface melting. The areas classified as “melt” (dark pink) correspond to sites where two or three satellites detected surface melting. The satellites are measuring different physical properties at different scales and are passing over Greenland at different times. As a whole, they provide a picture of an extreme melt event about which scientists are very confident. Credit: Nicolo E. DiGirolamo, SSAI/NASA GSFC, and Jesse Allen, NASA Earth Observatory

http://www.nasa.gov/topics/earth/features/greenland-melt.html

高解像度の画像をNASAが掲載しているので見たい人は以下のリンクをクリック――

左の画像の高解像度版
http://www.nasa.gov/images/content/670401main_melt-1.jpg

右の画像の高解像度版
http://www.nasa.gov/images/content/670402main_melt-2.jpg

【関連記事】  日経プレスリリース 2012/07/19 より

東大、南極・グリーンランド氷床と山岳氷河の融解が近年に特有の現象などと発表

現在の南極・グリーンランド氷床および山岳氷河の融解は
人為起源気候変調によるものである可能性

[発表者]横山 祐典(東京大学大気海洋研究所 海洋底科学部門/地球表層圏変動センター准教授)

[発表概要]
東京大学大気海洋研究所の横山祐典准教授らのグループは、現在進行中の南極氷床およびグリーンランド氷床そして山岳氷河の融解が、2万年前の氷期から引き続き起こっている氷床融解現象ではなく、近年に特有の現象であることを明らかにしました。人為起源の気候変調による極域氷床の変動である可能性を示唆する結果で、気候メカニズムの解明に大きく貢献することのできる成果です。
これらの成果は、7月13日にアメリカ地球物理学会のGeophysical Research Letters誌に掲載されました。

[背景]
人工衛星や測地学的手法、および潮位計の計測などから、近年、南極およびグリーンランド氷床の融解が進んでいることや、地球規模で海水準が上昇していることが明らかとなっています。しかし現在の地球の気候は、10万年周期で起こる氷期.間氷期(注1)の寒暖サイクルの中では、比較的温暖な時期にあたることから、これらの現象は自然の変化の一部であるとする見方も存在します。現在からもっとも近い時代の氷期(2万年前に終焉)の後に起こった氷床の融解により、海水準は世界的に120.130m上昇しました。
氷期には、カナダの全範囲と北欧に大規模氷床が存在し、南極氷床も現在より大きかったことが分かっています。しかし、現在のカナダや北欧に氷床は存在しません。これらの氷床は、およそ6,000年前までにとけ終わっていたことが、これまでの研究からわかっています。いっぽうで今回の研究対象となった南極氷床とグリーンランド氷床は、比較的温暖な時期(間氷期)である現在もその大部分が氷床に覆われています。同時に、気候変動との関連性がよくわかっていない氷床でもあります。
近年観測されたデータは、過去50年分程度であるため、果たしてその海水準上昇傾向(または氷床の減少傾向)が、近年の人為起源の環境変化によりもたらされたものなのか、過去2万年間続いてきているものなのかは、世界的に議論が続いていました。

[研究方法の概要]
青森県下北半島の過去の海水準の変化を、堆積物中のプランクトン組成(塩分変化の指標)や地形によって求め、また海水準の変化のタイミングを、放射性炭素年代測定により正確に求めました。
2万年前以降の海水準の上昇にともなって、海洋全体(つまり地球表層の70%)に均質に分散されたおよそ120.130mの厚みをもつ海水の荷重によって海水の器である海洋全体が押し下げられています。それにより、ゆっくりした地殻変動がおこり、過去の海水準(つまり標高0m)が氷床からの距離や地下構造により、現在の海水準より高いところに現れます。今回の研究では、それらを物理計算によって比較検討することにより、氷床の融解の規模とタイミングについて検討しました。

[結果と考察]
南極やグリーンランドの氷床からは離れた日本列島から採取された地質データと、固体地球の変形モデルを併用することにより、氷床融解の以下の3つのモデルについて検討しました。すなわち、(1)およそ1万9千年前の氷期の終焉から引き続き現在まで融解がつづいているとするモデル、(2)北米や北欧氷床が融解し終わった6,000年前までに融解し終え、その後は海水量の変化がないモデル、そして、(3)その間の3,000.4,000年前までに融解し終え、その後は海水量の変化がないモデル、の3つです。その結果、氷期から現在まで融解しているモデル(1)は、現在よりもおよそ2m高い位置にある3,000-4,000年前の海水準の観測値の存在を説明することができませんでした。つまり、モデル(2)あるいは(3)が妥当である、すなわち氷期終焉後の主な氷床融解は、数千年前、おそらく3,000-4,000年前までに終了していたことがわかりました。したがって、現在観測されている氷床融解の加速は近年に特徴的な現象であり、現在の温暖化にともなって引き起こされた可能性が示唆されます。

[研究の意義]
今回の研究の意義は、地球の現象を捉える上では極めて短期間の人工衛星や測地学的データに基づく氷床融解のシグナルが、いわゆる自然現象ではない可能性を強く示唆した点にあります。
今後の温暖化で一番危惧されるのは、南極氷床を含む氷床の融解にともなう海水準上昇やそれに伴う海洋環境変化ですが、氷床の安定性を検討する上でも重要な知見です。現在準備中で2013年に出版予定の「第5次IPCC気候変動評価報告書」に対しても、重要な貢献となります。

[今後の展望]
今回の研究では、氷床から遠く離れた日本列島の地形地質データを、地球物理モデルと組み合わせることにより、人為起源の環境変化と自然現象とを区別できた点がユニークです。現在でも西南極氷床は、海底に着底し世界的に海水準を5mほど上昇させる氷床が存在しており、今後の温暖化に伴う不安定化が懸念されています。これまでの氷床融解のタイミングと気候変動との関連性を明らかにする上で、氷床の近辺での地球科学的試料に基づく、変化のタイミングと規模の決定についての研究をすすめていく必要があります。また、日本のように地震活動の大きな場所だけでなく、地殻変動の少ない地域でのデータの採取と高精度年代決定により、今後より詳細な情報の採取を行って行く必要があります。

[発表雑誌]
著者   :Yokoyama,Y.(*),J.Okuno(*),Y.Miyairi(*),S.Obrochta(*),N.Demboya,Y.Makino and H.Kawahata(*)(2012)
[(*)は大気海洋研究所のメンバー]
タイトル :Holocene sea-level change and Antarctic melting history derived from geological observations and geophysical modeling along the Shimokita Peninsula,northern Japan.
雑誌名  :Geophysical Research Letters
掲載日  :2012年7月13日

[用語解説]
注1:氷期.間氷期
地球の気候は、太陽をまわる公転軌道要素の変化(例えば回転軸の傾きの角度の変化)などにより、およそ10万年周期で氷期と間氷期をくりかえしています。氷期には氷床が厚くなるとともに海水準は低下し、間氷期には氷床がとけるとともに海水準は上昇する、という関係にあります。直近の氷期はおよそ11万5千年前に開始し、1万9千年前に終了しました。その間、北米と北欧には、厚さ3kmにもおよぶ氷床が存在し、南極氷床も拡大していたため、全球の海水準を約130mも低下させていました。いわゆる“自然の”環境変化によってもたらされた130mの海水準上昇と、人為起源の気候変調による融解とを区別するためには、地球科学的なデータを用いて、長期的な氷床の安定性について調べる必要があります。

http://release.nikkei.co.jp/detail.cfm?relID=314864&lindID=5

● 関連資料  図1~図4 javascript:openWindow(‘/attach_file /0314864_01.pdf’,’new’,’toolbar=no,status=no,scrollbars=yes,resizable=yes’)

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