中国産業スパイ問題|「中国が狙う 産業スパイはそこにいる」(日経)

中国の産業スパイは各国で問題になっているのは皆さんご存じだろう。 日本でも今年3月に、工作機械大手ヤマザキマザックの機密情報が不正に複製された事件で、中国籍の元同社社員、唐博容疑者(31)が逮捕された。 この中国産業スパイ問題の記事を日経コンフィデンシャルからクリップした。 さらに、昨年の記事から「ルノーも揺れた 中国巡る産業スパイ問題の実態」も追加した。 背後で暗躍する中国人民解放軍が見え隠れする。 読んでみましょう――

中国が狙う 産業スパイはそこにいる
(日経  2012/7/9)

信頼していた中国人社員がIPアドレスを頻繁に変え、大量の図面情報をネット経由で盗み出していた――。 今春、日本の大手メーカーを舞台にした機密情報の不正取得事件が発覚した。 だが、これは氷山の一角にすぎない。 中国が関係する産業スパイと思われる出来事が各国で起きている。「技術立国・中国」の虚実を探った。

■ 大量のダウンロードに不信感

「父の看護のため退職したい」――。工作機械メーカー、ヤマザキマザックの販売部門に所属する中国人社員、唐博が上司のAに退社を申し出たのは3月12日だった。

家族の事情とはいえ、それまで辞めるそぶりなど見せていなかった唐の退職申請は唐突だった。Aは違和感を持ったが、それが不信感に変わる出来事があった。

「退職するというのに、なぜ大量にダウンロードするのか」。退社を申し出たあとも唐は設計情報など会社の機密情報の取得をやめていないことにAは気づく。「これは変だ」。Aの依頼を受けて情報システム部門などが唐の社内システムへのアクセス履歴などを調べたのは14日。唐は自分の業務とは関係のない製品図面の3Dデータや組み立て指示書、販売や価格の情報などを大量に手に入れていた。

会社はこれ以上の情報流出を防ごうと、唐のアクセス権限を制限したが、会社が思うより唐の動きは悪質だった。唐は社用パソコンに割り当てられたIPアドレスを変更したうえで、なおもアクセスを継続。切羽詰まった会社は愛知県警にかけこんだ。

県警は19日に唐の自宅アパートや会社のロッカーなどからパスポートやパソコンなどを押収し、27日に唐を逮捕した。

唐は中国・瀋陽出身。約10年前に来日し、関東地方の大学で経済を学んだ。日本語も堪能で2006年4月、ヤマザキマザックに入社した。販売部門では、世界で工作機械を売り込む営業部隊に、機械の情報などを提供する役割を担っていた。「友達が少なく、1人で過ごすことが多かった」(同社)が、特にトラブルもなく、勤務態度に目立った問題点はなかったという唐。

しかし、県警の取り調べなどで「別の顔」を持っていた実態が浮かび上がった。

唐はIPアドレスを約10回も変えながら、図面情報にアクセス。少なくとも11年6月ごろから、職務とは直接かかわりのない図面を次々に入手していた。ダウンロードした図面情報は2万件以上にも及ぶといい、同社の最新機器も含まれていた。唐は不正競争防止法違反罪で起訴されることになった。

「勉強のため」「ひまつぶしだった」。唐は図面情報を売却するなど自己の利益を図るためだったとする捜査側の見方を否定。逮捕以降、否認を通す。しかし、唐がかつての同級生や同業他社、中国政府関係者とみられる人物らと頻繁にメールをやり取りしていたことも判明している。県警の調べに「中国の日系企業に転職したかった」とも供述し、情報を母国に持ち出し、再就職を有利にするなどの狙いがあった可能性もある。

 ヤマザキマザックは非上場ながら工作機械の世界最大手。工作機械は自動車やエレクトロニクス機器などの工場に設置され、製品加工に使われる。最終製品の競争力をも左右する基盤設備で、日本の工作機械メーカーが持つ高度な加工技術は世界の注目の的だ。とくに製造業で存在感を増す中国が同社に注ぐ視線は熱い。見本市でヤマザキマザックの機械が展示されると、何枚も写真を撮ったり、機械の裏側までのぞき込んだりする中国人の姿がよく見られる。

工作機械1機種をつくるのに必要な図面は数万、数十万とされる。今回の機密情報の漏洩(ろうえい)について、ヤマザキマザック関係者は「図面の一部を盗み出しても、同じ機械がつくれるわけではない」と話すが、信頼して図面のダウンロード権限を与えていた社員が事件を起こした事実はやはりショッキングに違いない。

中国はいまや世界最大の工作機械市場。早くから経営のグローバル化に取り組んできたヤマザキマザックは、中国にも工場を1つ持ち、さらにもう1カ所を加える計画を進める。世界で働く全従業員7000人のうち、1000人が中国人とされる。いわば「身内」といえる中国人社員に情報を持ち出されたことに、同業他社からも「ヤマザキマザックは気の毒だ」との声が上がる。

「標的」となるのは日本企業だけではない。

■ オーストリアから盗まれたソフトの設計図

北京大学など多くの大学が集まる北京市西部に本社を置く中国の風力発電機メーカーの最大手、華鋭風電科技(シノベルウインド)。巨大なタービンを制御する装置の調達先として米アメリカン・スーパーコンダクター(AMSC)と提携関係にあった。AMSCはシノベルの風力発電機1基につき一定のロイヤルティー収入を得る取り決めだった。

ところが11年6月、ある事件が起こる。

シノベルが突如、AMSCからの制御装置納入を拒否。不審に思ったAMSCが「定期点検」と称してシノベルの風力発電所にコンピューター技師を派遣して制御装置のデータを解析すると、衝撃的な事実が判明した。AMSCがオーストリアのホストコンピューターで厳重に管理しているソフトの設計図「ソースコード」を盗み出し、それを勝手に書き換えて利用していたのだ。

AMSCが社内調査したところ、関与が疑われたのはオーストリアの研究所に勤めるセルビア人技師、デジャン・カラバセヴィッチ。11年3月末に退職希望を提出し、残された有給休暇を消化しているところだったが、6月初旬、通常とは別のコンピューターから社内の電子メールにアクセスしていることが分かった。中国からのアクセスだった。

 AMSCの告発を受けオーストリア当局はカラバセヴィッチを逮捕。自宅からはシノベルと結んだ報酬170万ドル(約1億3千万円)の契約書が見つかった。

「シノベルから接触を受け始めたのは2010年。風力発電機にすぐに取り付けられるソフトウェアを開発してほしいと言われた」。取り調べに対しカラバセヴィッチは事件の詳細を語り始めた。シノベルが用意した北京市内のマンションで缶詰め状態となって完成させたソフトは、11年7月までにシノベルの1000を超す発電機に組み込まれていたという。

■ 付加価値の高い産業への転換がプレッシャーに

中国政府の産業育成策を受けて市場の拡大が期待された風力発電機市場。しかし新規参入が相次いだ結果、過当競争による値崩れが起きた。1.5メガワットの発電機の価格は現在、ピークから40%下落したとされる。シノベルも1基当たりのコストに占めるAMSCへのライセンス料の負担が12%から18%に跳ね上がった。利益を生み出す手っ取り早い方法は高額なライセンス料負担を取り除くことだった。最大手メーカーを産業スパイに走らせた背景だ。

 「国有企業出身のシノベルには独特のプレッシャーがかかっている。毎年のように事業の拡大を求められる。政府に対して『採算が悪いので縮小したい』とは言い出せない雰囲気がある」。中国南部の広西チワン族自治区を拠点とする別の風力発電機メーカー、銀河風力発電の部長、ラース・アンドレアスンが話す。

中国が改革開放に乗り出して34年。安い労働力を武器に大量生産することで中国経済は奇跡的な成長を見せ、「世界の工場」と呼ばれる地位に上りつめた。だが、人件費は上がり、米国などからの通貨・人民元に対する上昇圧力を受けて輸出競争力は低下傾向にある。中国政府指導者はより付加価値の高い産業への構造転換の必要性を繰り返し訴え、産業界もその要望に応えようともがき、ひずみも生む。

3月に世界知的所有権機関(WIPO)が発表した2011年の国際特許出願件数によると、中国の通信機器大手の中興通訊(ZTE)がパナソニックを抜いて世界首位となった。3位にはライバルの華為技術(ファーウェイ)も食い込み、世界トップ3のうち2社を中国勢が占めた。かつて「模倣大国」と言われた中国が急速に独自の技術力をつけているような印象を与えるランキングだ。しかし、一方で後を絶たない産業スパイ事件。世界が中国を見る目はまだまだ冷ややかだ。

■ 中国出張帰りの研究者が必ずする「儀式」

英オックスフォードにある科学研究所、ラザフォード・アップルトン・ラボラトリー。中国出張から戻った研究者らが必ず実施する「儀式」がある。中国で使ったプレゼンテーション資料を入れたUSBメモリーを検査し、処分することだ。

ラザフォードが中国の研究者らと共同研究を始めて10年。一定の信頼関係を築いてきたはずだが、出張時もパソコンは決して中国に持ち込まない。USBに必要最低限のプレゼン資料だけを記録し、現地に向かう。いつどこで情報を抜き取られるか分からないからだ。

シンポジウムや勉強会では主催者側のパソコンを借りてプレゼンをする。中国のパソコンとの接触はその数回に限られるが、帰国時にUSBを検査すると、毎回90%以上の確率で情報を抜き取るためのソフトウェア「スパイウェア」に感染している。「偶然とは思えない」と研究者の1人は語る。

 高速鉄道(中国版新幹線)を巡っても、中国は世界の常識とは乖離(かいり)した行動に出た。

11年6月、中国は共産党創設90周年に合わせて北京―上海間の高速鉄道を開業した。最高時速は300キロ。首相の温家宝が一番列車に乗り、中国の新聞各紙は1面トップで大々的に報じた。1978年に最高指導者、トウ小平が来日し、日本の新幹線の速さに感嘆してから33年。ついに中国の2大都市が新幹線で結ばれた。

中国側は技術力の進歩を証明するため、車両技術について国際特許を出願した。しかし、この車両は2004年に川崎重工業から技術供与を受けたもの。中国側は「提供されたのは時速200~250キロの車両。独自の技術開発で時速300キロ以上を実現した」として自前の技術だと主張する。

だが、川重幹部は「われわれの技術の延長だ」と中国側の動きに不快感を示す。米議会の米中経済・安全保障調査委員会も「中国が外国技術を入手した最もひどい例」と断じた。

米大統領のバラク・オバマは1月の一般教書演説(施政方針演説)で、中国の不公正な行為を調査するため、省庁横断の新チームを設置すると発表した。米中央情報局(CIA)などインテリジェンス(情報)機関も加わり、目を光らせる。もはや産業界だけで解決できる問題ではないという危機感がにじむ。

技術立国へ向けてアクセルを踏む中国政府。期待にこたえて前進する会社がある一方、急な転換ができず、産業スパイなどに「暴走」する会社も少なくないようにみえる。中国が真のハイテク国家と世界に認められる日はいつやって来るのだろうか。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK1503J_V10C12A6000000/


さらに、昨年の記事であるが、仏・ルノーをめぐるこういう記事もあった――

ルノーも揺れた 中国巡る産業スパイ問題の実態
(日経「コンフィデンシャル」2011/1/31)

世界的に知られているのに中国では報道されない事件がある。仏ルノーの電気自動車(EV)の機密情報流出事件。中国企業が関与した疑いが浮上しているが、実は同様の産業スパイのトラブルが中国では急増中だ。標的は日本企業にも及ぶ。中国を巡る産業スパイ問題の実態を追う。

ルノー・中国産業スパイ1■ 通信機器大手の社員がインドで逮捕

「何を撮影してるんだ」――。年明け早々のインド。ネパール国境に近いウッタルプラデシュ州で、中国籍の男性2人と女性1人が地元警察当局に逮捕された。警察幹部によると、男性は中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)の社員で、女性は男性のガールフレンド。国境警備隊の駐屯地を撮影していたという。

中国側は「旅行していて誤ってインド側に入ったものでスパイではない」と話しているが、警察当局は「現場は過疎の村が点在するだけの平原で、観光とは理解しがたい」としている。

ファーウェイは中国の人民解放軍出身者が創業した通信機器メーカー。急拡大する国内需要を背景に成長、ノキアなどと争う世界3強の一角となっている。男女の本当の目的は不明だが、企業としてはこれまでにも「スパイ」の話題ではちょっと知られた存在だ。

インドに関しては、同社の通信機器に盗聴機能などを仕組まれる恐れがあり安全保障上問題があるとして、インド当局が09年末に輸入を制限した経緯がある。その際には、10年後半になってファーウェイがソフトウエア設計図などの提出に応じて制限が解かれた。

10年7月には米モトローラが技術を盗まれたとして米国の裁判所にファーウェイを提訴。米通信大手スプリント・ネクステルは通信機器の購入選考対象から除外している。

一連の疑惑についてファーウェイ側は「我々は民間企業であり、スパイなどの疑惑は一切ない」などと強く否定している。

ただ、欧米の大使館関係者は「ファーウェイだけでなく、中国企業の多くは政府との関係が非常に深く、一体で行動することもある」と疑いの目を向けている。インドで逮捕された3人についても、「会社員の身分を借りた諜報(ちょうほう)活動ではないか」(同)との見方を示す。

■ ルノー問題で浮上する国家電網とは

ファーウェイの問題とほぼ同時期に明らかになったのはルノーのEV情報流出事件。その流出先として、仏メディアは中国の国有企業、国家電網を名指ししているが、中国共産党中央宣伝部は「ルノーのEV情報流出問題で独自報道は認めない」と中国メディアに通告、厳戒態勢を敷いた。中国メディアは国家電網関与の疑いを全く伝えず、他国からは政府と国家電網の一体感がより浮かび上がって見える結果になっている。

ルノー・中国産業スパイ2(表1)国家電網とはどんな会社なのか。

発電と送電という電力事業のうち、送電だけを手掛けているが、南部の一部を除いた中国の大半の地域を独占する巨大な国有企業だ。日系商社幹部は「日本で言えば東京電力や関西電力などの各地の電力会社を集めたような圧倒的な政治力がある」と話す。

従業員数は153万人にのぼり、09年の売上高は1兆2600億元(約15兆7500億円)。中国最大の企業である中国国有石油大手、中国石油化工集団(シノペックグループ)に次ぐ2番目の規模だ。

渦中のEVについては充電設備などのインフラ整備を手掛ける。2015年までに140億元を投じて、全国各地に充電スタンドを建設する計画だ。中国の国有企業16社が組織した「電気自動車産業連盟」にも参加。その中核会社として、EVの普及の旗振り役を務めている。

同組織には日産自動車が合弁を組む東風汽車集団(湖北省)も入っており、中国国家エネルギー局関係者は「(情報を)盗むほど困っていない」と主張する。しかし一方で、中国民営自動車幹部からは「ルノー・日産からEVの合弁生産で有利な条件を引き出すためにも、EVの内部情報は欲しかったのではないか」との声が漏れる。

中国政府は20年をめどにEVなどの新エネルギー車を500万台以上普及させる目標を掲げる。中国汽車工業協会の葉盛基氏は「中国は世界最大の自動車大国になったが、EVが興隆する次の時代では最強を目指す」と力を込める。

■ 増える情報漏洩

ルノー・中国産業スパイ3(表2)ただ、自動車開発専業の阿爾特中国汽車技術(IAT)の宣奇武董事長は「EVでも中国は日米欧から数年は遅れている」と指摘する。中国が思い描く理想と現実の間にはなお隔たりが大きいのが実情と言えそうだ。中国の外資系企業を顧客に持つ米国人弁護士は「中国政府は国民向けに自国技術が世界トップクラスだと宣伝しているが、そのレベルは大半の分野で日米欧に劣る。そのギャップを埋めるために産業スパイに走っている。中国のその姿勢が改まらない限りは産業スパイ活動はなくならない」との見方を示す。

このため、欧米自動車大手の中国法人幹部は「常に中国から技術を盗まれるのではないかという不安を抱えながら仕事をしている」と明かす。

日系自動車メーカーの中国法人幹部は「国際競争力を持つ日系の自動車メーカーが標的になっている」と漏らす。「実際に、中国の合弁企業では技術情報の盗難件数が増えている」と指摘、同社でも複数の中国人社員が情報漏洩の疑いで懲戒解雇処分になっているという。

同社だけではない。日本絡みでは07年にデンソーの中国人技術者が製品情報を不正に持ち出そうとして懲戒解雇になったほか、09年末には自動車部品ミクニから現地合弁幹部が技術情報を持ち出した問題で、中国の地裁が懲役の実刑判決を下している。

もちろん日本企業ばかりではない。07年には韓国の検察当局が起亜自動車と現代自動車の社員を相次いで機密情報を中国企業に渡したとして摘発。09年には双竜自動車幹部がディーゼルハイブリッド技術を上海汽車集団に流したとして起訴した。さらに、米国では米連邦捜査局(FBI)が米フォード・モーターから北京汽車集団に転職した中国人社員をスパイ容疑で逮捕する事件も発生している。

中国が技術向上を急いでいる自動車やIT(情報技術)以外でも、産業スパイ事件は頻発。中国企業による技術盗用にからみ、米ボーイングの中国系米国人社員がスパイ容疑で懲役15年の判決を受けた。ロケット技術を巡ってもFBIが中国系米国人科学者を逮捕している。

ルノー・中国産業スパイ4(グラフ1)もっとも、疑いをかけられるのは中国側だけではない。

中国の公安当局は09年7月に英豪系リオ・ティントの社員4人を産業スパイ容疑で身柄拘束。さらに、10年7月には国内油田の情報を国外企業に売却したとして米国籍中国人に懲役の判決を下した。

伊フィアットに訴えられた長城汽車(河北省)も中国で訴え返すなど中国側も黙ってはいない。前出のファーウェイは提携関係にあった米モトローラが無線通信インフラ事業をファーウェイのライバルであるノキア・シーメンス・ネットワークスに事業売却しようとした際、技術情報が流出するとして米国で差し止め請求を行っている。

中国と先進国側との争いは法廷だけでなく、政治の世界をも巻き込み始めている。

ルノー・中国産業スパイ5(グラフ2)ファーウェイの販売提携先である米アメリリンク・テレコムは取締役にゲッパート元院内総務を起用している。ロビー活動に通じる有力者を使って中国脅威論を抑えるという作戦だ。一方、リオ・ティントは中国事業の顧問に中国との太いパイプを持つキッシンジャー元米国務長官を起用、産業スパイ問題以降の中国の動きをけん制する。

表面化している産業スパイ事件は氷山の一角にすぎない。多くの企業は企業秘密が公になるのを恐れて裁判などに訴えないからだ。ただ、急速にトラブルが増えつつあることは間違いなさそうだ。

米危機管理コンサルティング大手クロールのアジア地区調査主管の影山正氏は「中国企業が絡んだ機密情報の漏洩などに関する相談はこの1―2年で2倍近くに増え、今後も増えるだろう」と話す。「欧米企業に比べて情報管理が甘い日本企業からの相談も増えている」という。中国共産党で法律を担当する委員会の機関紙「法制日報」によると、中国の裁判所が受理した知的財産権を巡る争いは急増。10年は05年の3倍以上に増えたとみられる。

企業として産業スパイへの対策はあるのか。

■ 中国との連携打ち切れず

クロールの調査によれば、産業スパイの相談案件の分野はEVなどを含めた新エネルギーやハイテク、バイオなどの分野で増加。手口も複雑になっており、情報を入手するルートが目的対象企業の下請け企業などに広がっている。

中国では企業幹部や社員がライバル企業などに転職するケースも多く、終身雇用文化を持つ日本企業はノウハウ流出を食い止めることが難しい。欧米企業では機密情報を分散化することでリスクを低くしているが、ルノーのケースでは幹部社員3人が情報漏洩に加担したといわれるなど、漏洩防止の決め手は見つけにくい。

個人情報の取得なども含めれば産業スパイは世界の至る所にいるが、中国の場合は中国共産党が独裁、情報を統制し、裁判制度も十分に機能しているとは言い難い。ITセキュリティー分野で外資系企業に設計情報などの開示を求め、パソコンに検閲ソフト搭載を義務付けようとするなどの試みも止まらず、先進国よりも企業のリスクは高い。

82年、日立製作所と三菱電機の社員が米IBMの企業機密を盗み出そうとした疑いでFBIに逮捕された。コンピューターの勃興期。日本は焦っていた。中国は10年に国内総生産(GDP)で日本を抜いて世界2位の経済大国となることが確実になったが、巨大な規模と成長スピードを支える「技術」は日米欧に劣る。少子化や資源問題などを考えれば、かつての日本以上の焦りが中国にはあるだろう。

欧米企業の中国法人幹部は「情報漏洩リスクは高まるが、企業を成長させるために中国企業との連携は欠かせない」と頭を悩ませる。日本企業の中国法人幹部は「先端技術は守りきれるかどうか分からない。とにかく開発力を高め、一歩先を走り続けるしかない」と力を込める。

企業の苦悩は続くが、今や世界経済をけん引する巨大市場からは足抜けできない。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2602R_Y1A120C1000000/

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