<「一人負け」ドコモ値下げ|スマホ通信料、今秋から>苦戦の原因はiPhone人気、ではドコモはなぜiPhoneを売れないのか?

12年3月期決算で、8期ぶりとなる増収増益を達成したNTTドコモ。 総契約者数は6000万件の大台を突破し、スマートフォンの販売台数も期初計画の600万台を大幅に上回る882万台を記録した。

しかし…足元では、番号持ち運び制(MNP)によるKDDI(au)やソフトバンクモバイルへの契約流出が、過去最悪に迫るペースで進んでいる。 劣勢を跳ね返すべく、窮余の策として打ち出しているのが、なりふり構わない2つの値下げ戦術である――スマートフォンの端末価格と、月々のパケット通信料金の大幅な値下げだ。

苦戦の原因はiPhone人気にある。 では、ドコモはなぜiPhoneを売れないのか?

ご存じのようにアップルの条件は厳しい―「iPhoneへの忠誠」、「iPhoneは他の商品と一緒に発表してはいけない」などなど、さまざまな制約がある。 さらに、ドコモは「旧電電ファミリー」と呼ばれる国内の携帯電話メーカーとの関係というジレンマも抱えている。 そのへんのところをかき集め、以下の記事を掲載――

■ 「一人負け」ドコモ値下げ スマホ通信料、今秋から (朝日朝刊9面 2012-6-15 紙面版クリップ)
■ ドコモ、固定から携帯への通話料下げ (日経 2012/6/13)
■ 携帯純増数、ソフトバンク連続首位 ドコモ苦戦 ― iPhone人気鮮明 (日経 2012/6/7)
■ “iPhoneなき”ドコモ、優良顧客引き留めへ2つの値下げ (日経「ニュースの深層」2012/5/28)
■ ドコモはなぜiPhoneを売れないのか (日経 2012/5/21)

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■ ドコモ契約5年ぶり純減 iPhone導入検討も (日経 2012/12/7)

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「一人負け」ドコモ値下げ スマホ通信料、今秋から
(朝日朝刊9面 2012-6-15 紙面版クリップ)

利用者の流出止まらず

携帯電話最大手のNTTドコモは秋から、スマートフォン(多機能携帯電話)のデータ通信料の値下げに初めて踏み切る。特定のスマホでは4割安くする。ソフトバンクモバイルとKDDI(au)がiPhone(アイフォーン)向けに安い料金を設定した結果、利用者の流出が止まらず、巻き返しを図るためだ。

値下げするのは、現在主流のFOMA(フォーマ)の次の世代にあたる高速通信サービス「Xi(クロッシィ)」を使うスマホのデータ通信料。毎月の通信量が7ギガバイトまでは一律5985円としていたが、3ギガバイトまでの利用者向けに1千円程度安い料金プランを導入する。FOMAでも、主に高齢者向けに7~8月に売り出す「らくらくスマートフォン」(富士通製)に限り、データ通信料を月5460円から2980円とし、携帯各社で最も安い水準とする。

携帯各社は「家族間通話無料」などのサービス合戦で落ち込んだ通話料収入を補うため、利便性を前面に出してデータ通信料が割高なスマホへの切り替えを利用者に勧めている。ドコモの場合、データ通信料は料金収入の54%を占める収益の柱。それを下げざるを得ないのは、電話番号を変えずに携帯会社を乗り換える「番号持ち運び制度(MNP)」で一人負けが続いているからだ。

2006年のMNP導入以来、もともとドコモは転出の方が多い傾向が続いていたが、auがiPhoneを売り出した昨年10月からは毎月の転出数がそれまでの2倍近くに拡大。今年5月までの8ヵ月間で約80万人の利用者を奪われた。ドコモは「他社に移った人の多くが『斜金の安さ』を理由に挙げた」と説明する。

ソフトバンクとauはアップルとの契約で大量のiPhoneを売りさばかなければならないとされ、割安な料金プランを導入。iPhoneのデータ通信料はソフトバンクが4410円、auは固定通信とのセット契約なら3980円で、ドコモより1千円以上安い。ドコモは春から端末の実質価格も値下げしており、山田隆持社長は「値下げ合戦の泥沼にははまりたくないが、利用者が一番重視するのは価格だ」と説明する。

携帯電話に詳しい武蔵野学院大学の木暮祐一准教授は「価格競争がついにデータ通信料にも及んできた。利用者にとっては歓迎すべきことだ」とみる。
(長崎潤一郎、大宮司聡)

ドコモ、固定から携帯への通話料下げ
9年ぶり 3分63円に
(日経 2012/6/13)

NTTドコモは12日、固定電話からドコモの携帯電話に電話をかけた際の通話料を9月1日に引き下げると発表した。通話地域や時間帯に応じて異なっていた料金を最大33%下げる。値下げは2003年6月以来約9年ぶり。

値下げ後は地域や時間帯に関係なく、固定から携帯への通話料は3分あたり63円に統一する。従来は通話先や時間帯に応じて4種類に分かれており、最も高い料金は3分94.5円だった。

固定電話の対象はNTT東西と関西電力系のケイ・オプティコム、九州電力系の九州通信ネットワークの4社。この4社の「固定から携帯」の通話料金の設定に限って、固定事業者側でなく携帯事業者が料金を決める仕組みになっている。通話料は固定事業者が回収し、接続料や代金回収手数料などを差し引いてドコモに支払う。今回はドコモが値下げ分を負担するという。

ドコモなど携帯電話各社は4月に総務省から、固定から携帯への通話料が高いなどとして料金体系を見直すよう要請を受けていた。KDDIが固定から携帯に通話を受ける場合、現行通話料は3分94.5円、ソフトバンクは同126円。

http://www.nikkei.com/article/DGXDASDD120LA_S2A610C1TJ1000/

携帯純増数、ソフトバンク連続首位 ドコモ苦戦
5月、iPhone人気鮮明
(日経 2012/6/7)

携帯電話会社3社が7日発表した5月の携帯電話契約件数によると、新規契約から解約を差し引いた純増数はソフトバンク傘下のソフトバンクモバイルが25万8100件で5カ月連続の首位だった。2位はKDDIの19万9000件で、米アップルのスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)「iPhone(アイフォーン)4S」の人気が支えとなった。3位はNTTドコモで、純増数は12万6600件だった。

NTTドコモの苦戦は同じ電話番号を使いながら携帯会社を変更できる「番号持ち運び制度(MNP)」でも目立つ。各社によると、5月はKDDIで約5万6000件の転入超過で、2011年9月から転入が転出を上回っている。ソフトバンクモバイルも約3万5000件の転入超過。NTTドコモは9万件強の転出超過で、他社への顧客流出が09年2月から続いている。

NTTドコモは高速携帯電話サービス「Xi(クロッシィ)」の普及に力を入れ、5月から2台目購入でXiのタブレット端末かデータ端末を選ぶ場合、割り引くサービスの対象範囲を広げた。5月の純増数はXiを使ったデータプランの利用者の寄与が大きく、「タブレット端末の需要を取り込めている」とみている。携帯購入から約2年が経過した人を対象にXiの機種に変える場合の特別割引サービスを5月から始め、10年以上の利用者のXiへの変更でも割り引きを開始するなど他社への流出抑止策も打ち出している。

それでも他の2社の勢いに追いつかないのはiPhone4Sのような人気機種を持つかどうかの違いにある。ソフトバンクモバイルの場合、アップルの新型「iPad(アイパッド)」も寄与したほか、プラチナバンドと呼ばれる新周波数帯に対応した「PANTONE4」も売れているという。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFL070D9_X00C12A6000000/

“iPhoneなき”ドコモ、優良顧客引き留めへ2つの値下げ スマホ「マイナス4万5000円」も
(日経「ニュースの深層」 2012/5/28)

12年3月期の決算で、8期ぶりとなる増収増益を達成したNTTドコモ。総契約者数は6000万件の大台を突破し、スマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)の販売台数も期初計画の600万台を大幅に上回る882万台を記録した。

しかし足元では、番号持ち運び制(MNP)によるKDDI(au)やソフトバンクモバイルへの契約流出が、過去最悪に迫るペースで進んでいる。劣勢を跳ね返すべく、窮余の策として打ち出しているのが、なりふり構わない2つの値下げ戦術である。スマートフォンの端末価格と、月々のパケット通信料金の大幅な値下げだ。

スマホ価格、実質0円どころか「マイナス4万5000円」

5月下旬のある週末。「ドコモのスマホ、他社から乗り換えで全機種実質0円!」という刺激的な店頭販促(POP)が、東京近郊の家電量販店やドコモショップの店頭を飾っている。かつて「0円端末」が全盛期だったころと比較しても、全機種というのは異例のこと。しかも実際には、0円どころか「実質マイナス」なのだ。

例えば、11年12月に発売され年末商戦の主力モデルであった韓国サムスン電子製の「GALAXY S II LTE」。東京都内の複数のカメラ系量販店では、割引前の端末価格は5万7960円。新規契約やドコモ端末からの機種変更の場合、購入後24カ月にわたり月々の通信料金を割り引く「月々サポート」が、月額2205円×24カ月で5万2920円適用され、差し引きの5040円が実質価格となる。

一方、MNPの場合は月々サポートによる割引が月額4305円×24カ月、合計で10万3320円と大幅に増額されており、実質価格はマイナス4万5360円だ。

12年3月の発売から、まだ2カ月しか経過していない最新スマホのソニーモバイルコミュニケーションズ製「Xperia acro HD」も破格だ。割引前価格6万480円に対し、新規契約・機種変更の場合の月々サポートによる割引は4万5360円(月額1890円×24カ月)で、実質価格は1万5120円。一方、MNPで他社から転入する場合は、月々サポートが9万5760円(月額3990円×24カ月)付き、実質価格はマイナス3万5280円という勘定だ。まさしく“出血”大サービスである。

パケット料金、ライトユーザーに格安プラン

端末価格の引き下げだけでも十分に驚きだが、ドコモはさらに値下げのプランを練っていることを明らかにしている。今や通信料収入の中核である、パケット料金に手を付けるものだ。

「あまりパケット通信をお使いにならない方に向けて、月々3ギガバイトまで割安に使えるXi(クロッシィ)のパケット料金を検討している。準備ができ次第発表する」(NTTドコモの山田隆持社長)――。

高速さを売りとするドコモのLTE方式の通信サービス「Xi」では、12年10月からパケット料金体系が準定額制になる予定。1カ月当たりのパケット通信のデータ量が7ギガバイトに達するまでは、月額5985円の定額料金で下り最大75メガビット/秒の通信が可能。月7ギガバイトを超えると、通信速度が128キロビット/秒と大幅に制限される。速度制限を解除することも可能だが、それには2ギガバイト当たり2625円の追加料金が必要だ。現在Xiを利用しているユーザーは、基本的にこの仕組みが適用されることになる。

検討中の新パケット料金プランでは、定額制で使える上限を3ギガバイトに抑える代わりに、月額料金を5985円より低く設定する。スマホで動画の閲覧やパソコンと無線接続してのデータ通信(テザリング)を行わない、いわゆるライトユーザー層の獲得を狙うものだ。具体的な料金水準は明らかにしていないが、ソフトバンクモバイルがiPhone向けのパケット料金として提供している月額4410円に対し、どこまで競争力を発揮できるかが焦点となる。

このほか、7~8月に発売予定のシニア向け端末「らくらくスマートフォン」向けに、上限が月500メガバイトで月額2980円とさらに安いパケット料金プランを用意する予定だ。

業績は一見好調そうだが……

激烈な値下げの波状攻撃に、ドコモを駆り立てるものは何なのか。

足元のドコモの業績は悪くない。東日本大震災、11年夏から12年初頭にかけて相次いだ大規模な通信障害などのマイナス要因がありながらも、12年3月期決算は8期ぶりの増収増益。総契約者数は212万件増え、6000万件の大台を突破した。スマートフォンの販売台数は、期初計画の600万台を中間決算時に850万台へ上方修正し、最終的にそれも上回る882万台を記録した。13年3月期の業績見込みでも、売上高は対前年度比5%増、営業利益は同3%増と引き続き増収増益を見込む。

今やドコモの収益の柱となったパケット料金収入は、従来型携帯電話からスマホへの移行により急ピッチで増えている。12年3月期は対前年度比8.8%増、金額にして1490億円上積みし1兆8439億円となった。13年3月期はさらに2271億円、率にして12.3%増やし、パケット収入だけで2兆710億円と大台突破をもくろむ。

足元のスマホブームに乗り、好調に推移しているように見えるドコモの業績。しかし、ある指標だけは別の動きを示している。4月27日に開催された決算会見で山田社長はこんな発言をしている。

「12年3月期は、当社の契約者のうち80万件くらいが番号持ち運び制(MNP)で他社へ出て行ってしまった。何としても、その80万を半減くらいにしたい」――。

契約者は増えても、MNPでは減少

MNPによる転入数から転出数を差し引いた純増数(転入超)を四半期ベースでまとめたものが右のグラフだ。12年3月期の1年間で見ると、ソフトバンクモバイルは約53万件の純増、KDDIも約27万件の純増を記録したのに対し、ドコモは約80万件の純減と“一人負け”を喫している。

とりわけここ半年は一段と厳しい状況だ。11年9月まで、ドコモのMNPは単月で0~5万件の純減という水準を維持していたが、11年10月以降は下げ幅を拡大。12年3月は14万5900件の純減と、単月ではMNP制度が始まった直後の06年11月(16万3900件の純減)に次ぐ大幅な落ち込みとなった。

総契約数は212万件も増やしているのに、MNPでは80万件も流出。こんないびつな数字となるのは、携帯電話市場の質的変化が背景にある。

ドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの大手3社の携帯電話契約数を足し合わせると1億2400万件余りで、既に普及率はほぼ100%だ。そのため各社とも、現在の主な契約獲得の手段は、いわゆる2台目需要の掘り起こしだ。タブレット端末、モバイルルーター、デジタルフォトフレームなど多様な端末を用意するほか、複数台の契約を条件にしたセット割引で契約を促す。

一方、MNPは手続きに2100円の手数料がかかる。それだけの金額を負担してもなお同じ電話番号を使い続けたいというユーザーは、メーン回線として長くサービスを継続しており、音声通話も頻繁に使うことが多い。

こうしたメーン回線は月額の利用料(ARPU)が高い上、メーン回線の事業者に合わせて家族回線や2台目回線を選ぶユーザーも多い。MNPによるメーン回線の流出を放置すると、月々の安定した料金収入が減ってしまうため、放置すれば企業体力が徐々にそがれる心配もある。

iPhone 4S発売で明暗、ドコモとKDDIのMNP

MNPでドコモからの流出がこれほど増えている理由は何か。11年10月以降という時期から想起するのは、やはりiPhoneの影響だろう。同月にiPhone 4Sの取り扱いを始めたKDDIのMNP転出入をひもとくと、それが裏付けられる。

ドコモのMNP純減が急増したのと同じ11年10月、KDDIのMNPは6万8700件の純増を記録。KDDIのMNPは10年春から11年夏まで純減が続き苦戦していたが、一気に盛り返した。単月で純増5万件の大台を突破するのは、およそ3年半ぶりだ。

KDDIのiPhone 4Sは、月額料金がソフトバンクモバイルより高めだが、それでも11年10月から直近の12年4月までKDDIは、MNPの純増数でソフトバンクモバイルを上回り3事業者のトップを走っている。

iPhoneの販売をめぐっては、米アップルが各事業者に大量の販売ノルマを課すことで知られている。各事業者はそのノルマを販売店に割り当て、未達の場合は以後の販売ができなくなるなど厳しい条件を課しているといわれる。11年10月を境に国内のiPhoneの販売が1社から2社に増え競争原理が生まれたことに加え、こうした販売ノルマの事情もありiPhone販売が加速。ユーザーがiPhoneに切り替えたことで、大手3社で唯一iPhoneを扱っていないドコモが割を食う形でMNPの大幅流出を招いた――。そんな背景が浮かび上がる。

「MNP流出の原因は、iPhoneよりおカネ」

しかし、ドコモの見立てはやや違う。「当社がMNPの転出者に調査したところ『iPhoneが欲しい』という人は全体の2割弱程度。残りの8割強は『価格が安い』『キャッシュバックがある』といった理由を挙げている」(山田社長)。

ソフトバンクモバイルは2009年2月から「iPhone for everybody」キャンペーンを継続的に展開しており、iPhone 4Sの16ギガバイト版を実質0円で販売。KDDIも11年10月のiPhone参入時からこれに追随している。さらに一部店舗では独自のキャンペーンを展開している。例えば「MNPで他社から乗り換え契約すれば3万5000円引き」「他社の中途解約金を負担します」といった内容だ。ほかにも、割引前価格を引き下げたり、32ギガバイト版・64ギガバイト版も実質0円で販売するなど多彩である。

これに対し、ドコモのスマホは11年の年末商戦ころまで、実質価格で2万~2万5000円程度。発売から1年程度経過した旧機種でも1万円程度で販売していた。12年に入り一部機種で月々サポートを上積みし実質価格を引き下げたが、それでも価格差を十分に埋め切れなかったようだ。

ここ半年でスマホを新規に購入したライトユーザーの多くは、「是が非でもiPhoneが欲しいと思った」というより、「安いスマホを買おうと検討したら、たまたまiPhoneが一番安かったのでそれにした」という方が多いとみられる。

月額の通信料金も、ドコモの競争力は十分といえない。スマホの利用で必須となる月々のパケット定額料をまとめたものが右の表だ。ドコモの第3世代携帯電話(3G)回線では5460円。LTEサービス「Xi」の回線は、9月末までのキャンペーンで4935円で、それ以降は5985円としている。

一方、ソフトバンクモバイルはiPhone向けに4410円と格安のパケット定額料を打ち出している。またKDDIは、同社の固定回線と携帯回線をセットで契約すると、2年間にわたり月額1480円割り引く「auスマートバリュー」を3月に始めている。

「値下げ競争の泥沼に陥りたくはないが……」

「基本的に値下げ競争の泥沼に陥りたくはない。とはいえ、端末価格はユーザーが注目する重要なポイントだと考えている」(山田社長)――。

端末価格と月額の利用料金の両面で他社の猛攻を受け、MNP流出が止まらないドコモ。価格競争には消極的だったが、年末商戦から春商戦にかけての惨憺(さんたん)たる状況を見て背に腹は代えられないと覚悟を決め、安値での対抗に乗り出したようだ。

山田社長は、4月以降の月々サポートの大幅増額がMNPの実績に効き始めていると明かす。「月々サポート増額がユーザーに浸透するまで時間がかかり、4月はそれほど効果は出なかったが、5月前半はMNPの転出ペースが4月より25%くらい減ってきている。確実に効果は出てきている」

しかし山田社長が懸念する通り、価格競争の泥沼は、ひとたび入り込むと抜け出すのは容易ではない。

ドコモは、6月から順次発売されるスマホの新機種では、月々サポートの割引額を圧縮して実質1万~1万5000円とし、冒頭のような極端な値下げを行わない方針だ。とはいえ消費者は価格に敏感だ。iPhoneの実質0円は今後も続くと予想され、価格を引き上げた結果MNPの流出が再び増えれば、結局ドコモも実質0円にせざるを得なくなる可能性がある。

パケット料金も同様だ。ドコモをはじめとする各社は、従来型携帯電話では月額390~4410円の2段階定額制だったパケット料金を、スマホへの移行で完全定額制へ移行させ、その定額料金も従来の上限額より引き上げることに成功した。ドコモは、そうして引き上げたパケット収入の一部を還元する形で月3ギガバイトまでの格安パケット料金を新設するが、KDDIやソフトバンクモバイルへのMNPの流出を止められるほどインパクトのある新料金を打ち出せるかどうかは未知数。競争激化を覚悟で思い切った値下げに踏み切れば、パケット料金の増収基調が打ち消され、頭打ちになる可能性も懸念される。

もちろんドコモは、料金施策以外にもさまざまな取り組みを進めている。12年冬にはXiを最大112.5メガビット/秒に高速化するほか、「しゃべってコンシェル」や翻訳電話など音声認識を応用した新サービス、動画や音楽、電子書籍などを統合的に扱うコンテンツ配信サービスの拡充などを13年3月期に予定している。

それでも、技術力だけでKDDIやソフトバンクモバイルの攻勢に対抗するのは困難だ。ドコモ版iPhoneの発売も「様々な条件があって我々の考えているものと合わない。現段階ではなかなか難しい」(NTTドコモの加藤薫次期社長)という状況で、他社の動向をにらみつつ微妙なかじ取りを求められそうだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK2700O_X20C12A5000000/

ドコモはなぜiPhoneを売れないのか
(日経 2012/5/21)

NTTドコモが米アップルの「iPhone(アイフォーン)」を売る日は来るのか、来ないのか――。さまざまな臆測が乱れ飛ぶが、現時点での答えは明確に「ノー」だ。アップルが求める契約条件が厳しいからというばかりではない。むしろ実現を阻む壁はNTTグループの内部にある。

交渉はいつも「片思い」

騒動の発端となったのは2011年12月1日の一部メディアの報道。

「11月中旬にドコモの山田隆持社長と辻村清行副社長らが訪米し、アップル本社でティム・クック最高経営責任者(CEO)らと会談。iPhoneを販売することでアップルと基本合意した」という内容だった。

激しく反応したのは国内の携帯電話端末メーカーだ。世界的に人気の高いスマートフォン(高機能携帯電話=スマホ)のiPhoneをドコモが取り扱うようになれば、事業規模で劣る国内勢には死活問題となる。「われわれには共存共栄で行きましょうと言っていたのに、二枚舌だったのか」。ドコモにはメーカーから怒りの電話が殺到したという。

真相はどうなのか。確認したところ、山田、辻村両氏を含めてドコモの幹部がアップルと会談したという事実はないようだ。幹部からは「(クック氏の)顔すら見たことがない」「(訪米していない証拠として)パスポートを見せてもいい」との声すら上がった。

確かに11年11月ごろ、「ドコモがついにiPhoneを売り出すようだ」とのうわさが通信業界を駆け巡っていた。ドコモが普及をめざす高速携帯電話サービスの「LTE」に新型iPhoneが対応するとの観測が浮上し、一部の証券アナリストが投資家向け説明会などで販売の可能性を指摘した。複数のドコモ社員が「今回こそは交渉がうまく行くらしい」とささやいた。

ドコモは半年から1年後の技術進化をにらみながらメーカーと端末を共同開発してきたが、11年の端末ラインアップを示す工程表にiPhoneが含まれていた時期もある。

「3GS」や「4」など現行モデル以前のiPhoneの販売についても、ドコモはアップルと何度も交渉の場を持ってきたが、結局、そのたびに物別れに終わってきた。「うちの交渉は毎回こんなもの。大体が片思い」。端末調達部門に近いドコモ社員が話す。

シェア争いを続ける国内のライバルは、ソフトバンクモバイルに続いてKDDIもiPhoneの販売を開始し、新規顧客やデータ通信収入を増やす原動力にしている。対抗上、ドコモも販売に踏み切っても不思議はないように思える。それでもドコモが決断できないのは、いったいなぜなのか。

契約をためらわせる数々の制約

まず、理由として挙げられるのは、アップルが通信会社に求める「iPhoneへの忠誠」だ。

「販売台数の半分以上をiPhoneにと言われると、ドコモの基本戦略には合致しない。現状ではドコモがiPhoneを取り扱うのはなかなか厳しい状況だ」。4月27日、記者団に囲まれた山田社長は語った。

iPhoneを最優先して売り、一定以上の販売台数を約束するコミットメントはドコモにとって重い負担だ。最近アップルは販売台数コミットメントの水準を世界各国で引き下げているとも言われるが、それでもハードルは依然、高いという。

料金問題もある。ドコモは米グーグルの基本ソフト(OS)「アンドロイド」を搭載したスマホ向けに月5460円の定額でデータ通信サービスを提供するが、iPhoneについてアップルは、アンドロイドを下回る料金設定を要求するとされる。だが「端末によって料金を区別するのは難しい」というのがドコモの立場だ。

そのほかにも「iPhoneはほかの商品と一緒に発表してはいけない」といったさまざまな制約がある。

11年10月にiPhone販売を始めたKDDIが販売代理店に配った社外秘の内部資料。そこには「iPhoneに関する広告やキャンペーンはアップルへの事前承認が必要です。上記ルールが守られていない販売店が発覚した場合は、即時取り扱いが停止されます」と記されている。4半期ごとにiPhoneの販売台数をチェックする「判定期間」もある。「販売台数目標を達成できない場合は今後2度とiPhoneを販売することができません」。資料にはそんな過激な表現が並ぶ。

そもそも08年にiPhoneが日本に上陸する際、ドコモはぎりぎりまでソフトバンクモバイルとiPhoneの販売契約を争った。ソフトバンクが競り勝つ格好となったが、この時はアップルからの法外な要求を突きつけられ、交渉から手を引いた経緯がある。

NTTグループの元幹部が言う。「アップルはドコモにiPhoneの販売を認める見返りに、NTTの研究所が持つすべての特許を開放するよう求めてきた。そんなことできるわけがない」。NTTの研究所といえば日本最大級の研究機関。そこに蓄えられた技術の取り扱いは、国の競争力さえ左右しかねない。世界的な注目製品とはいえ、iPhoneと引き換えにオープンにできるようなものではなかった。

しかし、ドコモがiPhone販売に踏み切れない理由をアップルのタフネゴシエーターぶりだけでは説明できない。最大の障害はむしろドコモ自身にある。

「中計」に組み込まれた障壁

ドコモが11年11月に発表した15年度までの中期経営計画は「総合サービス企業」への転身を目標に掲げている。15年度までに新規事業の売上高を2.5倍の1兆円に拡大する計画だ。M&A(合併・買収)を軸に、メディア、医療、環境、金融、電子商取引(Eコマース)など8分野を育成する。

「あの中期経営計画の大半はアンドロイドでしか実現できない」。NTT幹部が打ち明ける。搭載するソフトやサービスをアップルが細かく規定し、通信事業者の自由度が低いiPhoneを導入すると、中期経営計画で描くシナリオが崩れるというのだ。

4月に始めたばかりのスマホ向け新放送「NOTTV(ノッティービー)」、音声認識サービス「しゃべってコンシェル」、情報配信サービス「iコンシェル」……。ドコモが打ち出した独自サービスの大半はiPhoneの仕組みと競合する。iPhoneを品ぞろえに加えれば、せっかく自社で開発した成果が無駄になってしまう。

「通信事業者はネットワークに付加価値をつけることが重要。ドコモの回線を使ってもらうためのサービスをどんどん作っていきたい」と山田社長は話す。世界の通信各社はインフラを提供するだけの「ダムパイプ化」が顕著。iPhoneを扱わない主要な通信会社はチャイナモバイルやドコモなど数えるほどになったが、iPhoneを売るようになれば、ドコモの存在意義を問われかねないとの危機感が山田社長の言葉ににじむ。

ドコモがiPhoneを扱えば「旧電電ファミリー」と呼ばれる国内の携帯電話メーカーが一段と苦境に追い込まれ、端末調達の足場がぐらつくリスクもある。「アップルに頼らないビジネスモデルをつくるべきだ」――。iPhone販売に関するアップルとの交渉を断続的に続ける一方、NTTやNTTドコモの幹部の会議ではこうした発言が繰り返されてきた。幹部のなかでも辻村副社長や永田清人執行役員など「プロダクト部」と呼ばれる端末部門に近い幹部がとくにiPhone導入に懐疑的と言われる。

吉か凶か…新体制に引き継がれる懸案

6月、NTTグループの経営は新体制に移行する。それを機にアップルとの交渉が新たな局面を迎えるとの読みもできるが、双方が急接近するとは考えにくい。

NTT持ち株社長に就任する鵜浦博夫副社長はアップルに頼らないビジネスモデルをつくるべきだというのが持論。ドコモ社長に内定した加藤薫常務執行役員は中期経営計画の策定で中心的な役割を果たした人物。「自らつくった中計をひっくり返す戦略を取りづらい」との見方が大勢を占める。

もちろんドコモはアップルとの交渉の窓口は持ち続ける見通しだ。山田社長も「あきらめたわけではない」と言い続けている。もっともわざわざ「iPhoneは売らない」と明言し、ライバルをけん制するカードをみすみす手放す必要はない。

現状では、ドコモがiPhoneを販売するのは無理と言わざるを得ない。仮に転機があるとすれば、アップルが契約の条件で大幅に譲歩してきた時だろう。ただ、その場合はドコモも中期経営計画の大幅な修正を覚悟しなければならない。

かつてNTTは米ヤフーと組み、日本にポータルサイトサービスを持ち込む計画を立てたが、ポータルにNTTブランドを使うかどうかといった社内の議論に時間をとられ、ソフトバンクにヤフーとの提携をさらわれた苦い経験がある。世界的なヒット製品であるiPhoneと距離を置くというドコモの判断は果たして吉と出るのか、凶と出るのか。懸案は新経営体制にそのまま引き継がれる。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFK18023_Y2A510C1000000/

[更新・追加情報]

NTTドコモの11月末の携帯電話の総契約数が5年3カ月ぶりに減少に転じた。 減少幅は過去最大の約4万件。 米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」で攻勢をかけるKDDI(au)とソフトバンクに顧客が流出した。 「来年以降のiPhone導入を考えざるを得ない」(ドコモ幹部)との声が上がっている――

ドコモ契約5年ぶり純減 iPhone導入検討も
(日経 2012/12/7)

NTTドコモの11月末の携帯電話の総契約数が5年3カ月ぶりに減少に転じたことが6日、明らかになった。減少幅は過去最大の約4万件。米アップルのスマートフォン(スマホ)「iPhone(アイフォーン)5」で攻勢をかけるKDDI(au)とソフトバンクに顧客が流出した。「来年以降のiPhone導入を考えざるを得ない」(ドコモ幹部)との声が上がっている。

電気通信事業者協会(TCA、東京・港)が7日、携帯電話大手3社の11月末の総契約数を発表する。この中で新規契約から解約を差し引いた純増数はKDDIが20万件強、ソフトバンクは30万件強となったもよう。

ドコモの純減はTCAが調査を開始した1996年1月以降3度目。減少幅は2007年8月の2万2900件を上回る見通しで、総契約数は6070万件程度となる。

契約数が減った最大の原因はiPhone人気だ。ドコモは巻き返しに向けて、10月以降に約500億円の追加の販促費を計上。高速携帯電話サービス「LTE」を新規契約した場合に基本使用料を1年間無料にするなどのキャンペーンも実施している。

しかし10月の純増数は7200件。11月は過去最大の純減で、効果が出ていない。業績にも影響しており、13年3月期の連結税引き前利益(米国会計基準)見通しを前期比7%減の8140億円に下方修正した。

総務省によると国内の携帯電話・PHSの総契約数は3月末で1億3276万件と日本の人口を上回っている。成熟化した市場の中で成長を遂げるには同業他社から顧客を奪うしかない。

国内では06年10月、利用者が電話番号を変えずに通信会社を乗り換えられるMNP(番号持ち運び制)が始まった。11月のドコモのMNPによる流出は過去最大の20万件にのぼる見通し。顧客獲得に向けて動画配信や通信販売などサービス事業を強化する方針を掲げてきたが、端末の競争力が契約数の増減を左右しているのが実態だ。

「アップルが端末上のサービスを管理するiPhoneは相いれない」というのがドコモのこれまでの立場。しかし「戦略転換を本格的に考えなければならない」との声が社内では強まりつつある。実際、ドコモの加藤薫社長は10月の冬モデル発表会で「(iPhoneと)共存共栄できるかを模索している」と発言。これまでの慎重姿勢を微妙に修正した。

ただアップルはiPhoneの取り扱いで通信会社に一定量の販売義務を課しているとされる。国内最後発となるドコモがiPhoneを取り扱う場合、ソフトバンクなどに比べ条件が厳しくなる可能性がある。「高いハードルがある」とドコモ幹部も認める。今後、販売条件や自社サービスの付加ができるかなどを見極めた上で導入を本格的に検討する見通しだ。

http://www.nikkei.com/article/DGXDASDC0600A_W2A201C1EA1000/

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<「一人負け」ドコモ値下げ|スマホ通信料、今秋から>苦戦の原因はiPhone人気、ではドコモはなぜiPhoneを売れないのか?」への2件のフィードバック

  1. 既存の通信設備を持ち、公社であったという傲慢な企業姿勢が
    docomoの衰退を招いている。日本のドメスティックな経営は
    国内においては成立しても、海外では成り立たないという結果。

    話は飛ぶけれど、日本の音楽著作権協会も同じ狭小な体質。
    インターネットに国境はなく、YouTubeを阻止することは不可能。

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