<東電値上げ|申請前の4月に経産省がシナリオ>「出来レース」か、と朝日新聞6月1日の朝刊は一面トップで報じている。紙面版記事をクリップしてみた。

東電福島第1原発事故後に次々と暴露されており、「経産省のシナリオ」は広く知られるところとなっている。 今回の東電値上げでも、経産省が東電申請前の4月に事前にシナリオを書きその通りに事は進んでいるようだ…朝日新聞のスクープ記事を読んでみよう――

経産省が値上げシナリオ
東電申請前の4月に
(朝日新聞朝刊2012年6月1日、1面)

 経済産業省が、東京電力から家庭向け電気料金の値上げ申請を受ける前の4月に、あらかじめ「9月1日までに値上げ」という日程案をつくっていたことがわかった。東電は7月1日からの値上げを申請したが、経産省は審査に時間がかかることまで計算し、申請から認可、値上げまでのシナリオを描いていた。

朝日新聞は、経産省資源エネルギー庁が庁内の関係者向けに4月につくった「規制電気料金認可に係るスケジュール等について(案)」という文書を入手した。値上げが妥当かどうかを審査する経産省が、東電の申請前から、値上げを延期したうえで認可するという「出来レース」を組み立てていた可能性があり、審査体制が適正かどうかが問われる。

 経産省は5月11日に東電の値上げ申請を受け、有識者による電気料金審査専門委員会で審査している。これを踏まえ、経産相が値上げを認可するかどうかを判断し、関係閣僚会議を開いて正式に認可する。実際の審査は少しずれているが、文書の日程案通り、値上げは8月以降の見通しになっている。

文書では、7月1日に値上げをする日程と、8月1日か9月1日に値上げをする日程の2案が示されている。しかし、申請から認可までの期間が過去の値上げでは平均2カ月かかっているため、「6月初日認可、7月1日改定(値上げ)は非現実的」として、最初から8月以降の値上げを想定している。

そのうえで、申請から約2カ月の7月上旬を認可の「デッドライン」(期限)、9月1日を値上げを始める期限に設定している。

7月上旬を認可の期限にする理由は「資金繰り」と書いている。東電は燃斜費がかさむなどして政府の出資や銀行の融資を受けるが、融資は値上げの認可を条件にしているため、認可が遅れれば、支払いなどのためのお金が不足するおそれがあるからだ。

値上げの期限を9月1日にする理由は「3期連続経常赤字回避」などと記している。

経産相の振り付けも書いている。「6月上旬の公聴会の後、『いただいた意見等も含め、徹底的に審査を行う必要があることから、7月1日の改定実施予定日は遅らせる』と大臣から表明いただくのが一案」という。7月上旬に認可した際の公表文案もつくり、「十分に時間をかけて審査を行った。夏季の需要期の値上げを回避し国民の負担を軽滅するため、実施日は8月1日(または9月1日)とする」としている。

複数の経産省幹部は、文書を省内のどの部署が書いたかや作成のねらいについての朝日新聞の取材に「だれが書いた文書かわからず、答えようがない」と話している。 (松浦新)

Diamond Online のコラム「岸博幸のクリエイティブ国富論」の6月1日の記事―「東電の電気料金値上げが絶対に許されないこれだけの理由」も合わせて掲載したい。 岸博幸さんはよく「TVタックル」に出てくるあのの人だ、元経産省官僚で現慶應義塾大学大学院教授。

岸博幸のクリエイティブ国富論 【第187回】>

東電の電気料金値上げが
絶対に許されないこれだけの理由
(Diamond Online 2012年6月1日)

東京電力が家庭向け電気料金を10%値上げしようとしており、経産省に設置された有識者会議がその妥当性を審査しています。その様子は会議が開催される度に大きく報道されますが、それを見ていて違和感を抱かざるを得ません。経産省の目指す路線にメディアも乗ってしまっているのではないでしょうか。今回の値上げは絶対に認可すべきではありません。

■ なぜ人件費ばかり報道される?

この有識者会議では値上げの妥当性について検討することになっていますが、委員会での議論とメディアの報道の双方で、どうも東電の人件費にばかり焦点が当たり過ぎているようにも感じます。

今週開催された委員会を受けた報道でも、東電が冬のボーナスを含めていた、2014年度に500人規模の新規採用を考えていたなど、人件費に関する指摘ばかりが目立っていました。

公的資金という輸血によって債務超過と法的整理を免れていることを考えると、社員にボーナスを払おうというのは論外です。また、JALは法的整理で社員の1/3を削減したことを考えると、実質的に債務超過の東電が、リストラについて国民が納得するレベルに達していない中で大量の新規採用を行うというのも論外です。

こうした身勝手な人件費増を原価に入れて国民にツケ回しすることが許されないのは当然です。ただ、同時に、人件費ばかりに注目し過ぎてもいけないのではないでしょうか。これらの人件費を削っても大きな金額の節約とならない一方、もっと大きな無駄と不合理が原価に含まれているからです。

その典型例は電源開発促進税(電促税)です。電源立地の促進に必要な政策のために電力会社が政府に納める税金であり、それが電力料金に転嫁されて国民負担となっているのですが、今回の値上げ申請では1000億円も原価に算入されています。

この電促税の大半が、特別会計を通じて原発の立地促進のために使われてきました。しかし、そもそも政府の方針は“脱原発依存”のはずです。それならば政府は電促税を廃止すべきではないでしょうか。そうすれば東電の値上げの原価は1000億円下がります。

こう言うと、電促税は法律に定められているから無理と思われる方も多いと思いますが、電促税を廃止する程度の法律改正は大変ではありません。その気になれば、条文の準備→法制局審査→閣議決定→国会審議というプロセスは1週間程度で終えられます。

次におかしいと思うのは、東電の利益(事業者報酬)として2815億円も原価に算入されていることです。公的資金という輸血で法的整理を免れている企業が、原発事故の翌年からこれだけ大きな利益を得るというのは、常識的にはあり得ないのではないでしょうか。少なくとも数年は利益を最小限に抑えるべきです。そうすれば原価は更に2000億円近く下がります。

こう言うと、原子力損害賠償支援機構(機構)から借りた賠償資金の返済のためには東電が一定の利益を上げることが機構法上必要、といった反論があると思いますが、法律改正すればいいだけの話です。国民からすれば税金も電力料金も同じ負担です。将来の税負担よりも今の電力料金値上げによる負担を優先しなければいけない理由はありません。

 経産省の姑息な戦略か?

その他にも、東電の経営の失敗(原発事故)によって生じた廃炉費用や賠償費用などを原価に入れるのもおかしいなど、様々な問題点を指摘できます。

そして、東電と機構が策定した総合特別事業計画に添付された資料を見ると、電力供給全体としての収支不足額は6763億円ですが、そのうち規制部門(家庭向け)の収支不足は2535億円です。

つまり、電促税と事業者報酬を大幅に削減するだけでも、10%の値上げは不要となるのです。しかし、この2つの項目は、逆に経産省からすれば絶対に確保しておきたい部分のはずです。

そう考えると、有識者会議での議論やその報道で、東電の人件費という金額的に少ないところばかりに焦点が当たるというのは、経産省の姑息な戦略なのかもしれません。

敢えて東電の人件費に焦点を当てて世論の敵である東電を叩いている図を演出し、国民の溜飲を下げつつ最終的には10%から1~2%程度落として値上げを認可しようとしている、とも考えられるのです。この手の会議の筋書きは事務局を務める官僚が作っていることを忘れてはいけません。

 10%値上げは絶対に認可すべきではない

それに加え、今回の電気料金10%値上げを絶対に認可すべきではない理由がもう2つあります。

1つは、今回の値上げ申請の根拠となっている原価に廃炉費用が含まれていることです。一方、廃炉費用の総額が今後どこまで膨張するか、まだ誰も分からないということです。

かつ、廃炉費用が含まれたら、今は政府が立て替えている除染費用もいずれ原価に入ってくるでしょう。しかし、廃炉費用と同様に、除染費用もどこまで膨張するか、誰も分かりません。

このような状況で廃炉費用が原価に含まれた値上げを今回認可したら、今後は廃炉費用や除染費用が膨張する度に電気料金が値上げされるという、無限地獄に突入しかねません。

もう1つは、電気料金の値上げを審査するに当たっては、本来は景気や国民生活の現状を踏まえた判断も必要ということです。

経産省の設置法上、経産省は電力を含むエネルギーの安定供給という責務を負っていますが、この“安定”には低廉な価格での供給も入るはずです。かつ、電気事業法上も“電気の使用者の利益を保護”することが目的と明示されています。

即ち、有識者会議では値上げ申請の根拠となっている原価の中身ばかりを議論していますが、本来は電気の使用者である家計の側がどれ位大変な状況になっているかも考慮しないといけないはずです。

そして、家計の状況は悲惨です。長引くデフレなどで給料も下がり続けています。かつ、昨年3月11日の原発事故からの一年で既に家庭向け電気料金は10%程度上がっています。更に10%上げるのが今の経済状況から本当に適切かと考えると、明らかに違うと言わざるを得ません。

これらの点も兼ね合わせて考えると、経産省は今回の電気料金10%引き上げを絶対に認可すべきではありません。ただ、経産省の官僚は、総合特別事業計画に基づく値上げに向け、確信犯的に有識者会議の議論を誘導している可能性が高いと考えざるを得ません。

それならば、有識者会議のメンバーの有識者の方々にはぜひ良識を発揮してもらいたいですし、そこでの議論を報道するメディアも、官僚の筋書きをそのまま報道するのではなく、もっと厳しく監視すべきではないでしょうか。

http://diamond.jp/articles/-/19390

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岸 博幸 [慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科教授]
1986年通商産業省(現経済産業省)入省。1992年コロンビア大学ビジネススクールでMBAを取得後、通産省に復職。内閣官房IT担当室などを経て竹中平蔵大臣の秘書官に就任。不良債権処理、郵政民営化、通信・放送改革など構造改革の立案・実行に関わる。2004年から慶応大学助教授を兼任。2006年、経産省退職。2007年から現職。現在はエイベックス非常勤取締役を兼任。

「岸博幸のクリエイティブ国富論」――メディアや文化などソフトパワーを総称する「クリエイティブ産業」なる新概念が注目を集めている。その正しい捉え方と実践法を経済政策の論客が説く。
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