<東京スカイツリーの話(天声人語より)> 一読、オススメ…

「天声人語」 (朝日デジタル 2012年5月23日(水)付)

幸田露伴の「五重塔」は、名人気質の頑固な大工が五重塔を独力で建てる物語。心魂を傾けた塔は落成式を前に大暴風雨に見舞われるが、嵐が去ると「一寸一分(いちぶ)歪(ゆが)みもせず」に見事に立っていた。工事中に東日本大震災に耐えた東京スカイツリーと、どこか重なり合う▼地震の1週間後には高さが634メートルに届いた。日本中が騒然、暗然となるなかで、ともしびのような話題だった。聞けば耐震性を高める設計は、伝統建築の五重塔の知恵を生かしているのだという▼「心柱(しんばしら)」と呼ばれる柱が、五重塔の中心を貫いている。似た構造をツリーも持つ。地震だけでなく、瞬間風速が毎秒110メートルという超暴風も想定しているそうだ。ツリーの地元で長く暮らした露伴翁は、天上でご満悦なことだろう▼着工から完成へ、淡々かつ黙々と空へ伸びていった。爪の垢(あか)を煎じて政治家に飲ませたくなるようなプロの仕事師ぶりだ。基礎工事をはじめ照明や塗装、アンテナなどまで、総身が日本の最新技術の結晶という。ものづくりの底力を思うと、じんとくる▼設計に際しては「威圧感を持たせないようにした」そうだ。巨大建築は往々に国威や権勢を誇り、象徴する。それをすらりと脱ぎ捨てた「雅(みやび)」と「粋(いき)」は江戸の下町によく似合う▼きのうの開業初日。前の日の天体ショーに晴れ間を譲ったのか、東京は雨になった。だが樹下から仰ぐと、上半分を雲が流れてなかなか幻想的だった。雨のち晴れの日本の明日を、ツリーとともに歩みたい。

<http://www.asahi.com/paper/column.html>

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